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中華スマホのXiaomiが量産するスマートEV「SU7」の破壊的コスパとは?日本車メーカー危機感あらわ

中国のスマートフォン大手シャオミ(Xiaomi)が12月28日、同社初のEV(電気自動車)となる「SU(Speed Ultra)7」を発表。いわゆる“中華スマホ”メーカーのイメージが強い同社ですが、創業からわずか13年でクルマメーカーに大進化。このスピード感に、日本メーカーはタジタジのようです。メルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ より、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが解説します。

中国シャオミが電気自動車に参入「後発の我々は有利」

中国のスマートフォン新興大手 シャオミ(小米、Xiaomi)は、昨年末の12月28日、北京の中国国家会議センターで技術発表会を開き、共同創業者で最高経営責任者(CEO)の雷軍(レイ・ジュン)氏が、EV市場への参入を正式に発表しました。本年中には販売を開始するそうです。

雷氏は、「世界最速の回転数を誇るモーターを搭載し、自動運転システムやバッテリー管理システムなどのインテリジェンスにおいてはテスラのモデルS、ドライバビリティなどの機械的品質ではポルシェのタイカン・ターボ(Taycan Turbo)を凌駕し、最先端の科学技術とエコロジーを実現する」と豪語しています。

また、「自動運転技術は非常に速く変化しており、後発メーカーはより高い出発点から取り組み、そこから発展させていくことができるので有利だ」と自信を示しています。

「SU(Speed Ultra)7」と名づけられたこのEVの発売日や価格は明らかにされていませんが、同社は以前、EVを2024年前半に発売する計画であると述べていました。

雷氏は、「自動車を作り始めてから3年が経ち、私はこの事業がいかに大変であるかを思い知りました」としつつも、「今後15年から20年の努力を継続することで、シャオミを世界で5本の指に入るEV企業にすることを目指し、中国の自動車産業全体の底上げに努める」と述べています。

コンサルに元BMWチーフデザイナーなど実績ある人材を登用

一回の満充電で走行可能な距離(航続距離)については具体的な数字を明らかにしていませんが、約800kmと推定され、バッテリーは中国BYD、同CATLと共同開発したと説明しています。

独自開発したとされるモーターは、バージョンによってシングルまたはデュアル構成が選択でき、ハイエンドモデルのAWDバージョンでは、出力475kW、0~100km/h加速2.78秒、最高速度265km/hを実現するとのことです。

また、通常BEVは暖房使用で多くの電力を消費するため寒冷地に向かないとされますが、寒冷地でも航続距離を維持するとしています。その他、車載システムには、クアルコムのSnapdragon 8295と、同社のスマートフォンで使っているHyperOSを採用しているそうです。

車体のデザインや設計については、コンサルタントに元BMWチーフデザイナーのクリス・バングル氏を起用し、BMW iXシリーズに携わった人物やメルセデスのVision EQXXに携わった人物など、欧州車で実績ある人材を登用しているそうです。

「中華EV」のスピード感に圧倒される日本勢

シャオミは、2021年に自動車市場への参入を表明していましたが、その後、中国政府が自動車製造業への新規参入に対する制限を強化したため、今回発表したEVの量産では北京汽車(BAW)と提携することになったと伝えられています。

また、中国でのEV購入補助金制度は2022年に終了していて、すでにBYDを始めとしたEVメーカーが数十社乱立する中で出遅れ感はありますが、世界第4位のスマホメーカーが発表したBEVにはやはり注目が集まっています。

中国乗用車協会の推計では、中国の新エネルギー車(NEV、New Energy Vehicle:BEVの他、PHVやFCVも含む)市場は、2024年に約20%成長し、1,100万台に達すると予想されています。

これは、中国で販売される新車のおよそ1/3がNEVになる計算です。しかし既に、2023年10月、中国の新車販売台数に占めるNEVのシェアは37%まで拡大しており、マツダ社長兼最高経営責任者(CEO)の毛籠(もろ)勝弘氏は、昨年11月の決算発表で「この流れは止まらない」と危機感を露わにしています。

昨年特集した 「日本経済凋落の真因を探る」シリーズの「自動車産業編」 でもさんざん警鐘を鳴らしましたが、米国企業や中国企業のスピード感に日本メーカーは圧倒されるばかりです。

シャオミは2010年に設立された新興企業ですが、瞬く間にモバイル市場を席巻し、雷氏は時代の寵児としてもてはやされました。次は宣言通りにEV市場も席捲することになるのか、引き続き注目していきたいと思います。

※本記事は有料メルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』2024年1月5日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はこの機会にぜひご登録ください。

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image by: Xiaomi公式サイト

辻野晃一郎この著者の記事一覧

辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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