経営者のほとんどは知らないけれど、銀行が最も重視している「経営指標」、一体何かご存じでしょうか。今回の無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』では著者で現役税理士の今村仁さんが「とある比率」について解説。融資を受けている経営者の皆さんは気にしておいて損はないようですよ。
銀行が必ず確認する『経常収支比率』『経常損益比率』とは?
■銀行員で知らなければモグリ
ほとんどの経営者の方が知らず、もしかしたら会計事務所の方でもそれほど多くの方が知らない代表的な経営指標が、「経常収支比率」です。
計算式は下記です。
経常収支比率=経常収入÷経常支出
※経常収入=売上高+営業外収益△債権増加額+前受金増加額
※経常支出=売上原価+販売費及び一般管理費+営業外費用-減価償却費+棚卸資産増加額△債務増加額+前払金増加額
とてもややこしそうに見えますが、実際計算してみるとそれほど難しくありません。キャッシュフロー計算書に馴染みがある方は、よりイージーでしょう。
経常収支比率の意味は、「キャッシュベースでの会社の経常的な儲け」です。
借入金の返済や投資による減価償却費などは計算式に影響させませんので、あくまでも「企業活動による経常的な収支がプラスかマイナスか」を判断するものになります。
銀行が最も重視する経営指標の1つです。
■経常収支比率2期連続100%未満は要注意
経常収支比率が100%以上であれば、キャッシュベースで会社が儲かっていることになり、100%未満であればキャッシュベースで赤字となります。
では、プラスであればそれでいいのかというと、そのプラスの儲けから、「借入返済」や「今後の設備投資」をしていかないといけないので、プラスはどちらかというと当然と考えるべきです。
銀行目線では、売上高が増加していないのに「経常収支比率が2期連続で100%未満」となると、要注意アラームが鳴るようになっているようですので、経営者の方は覚えておいてください。
■経常「損益」比率とは?
経常損益比率とは、上記の計算式を損益ベースで表したものとなり、「損益ベースでの会社の経常的な儲け」となります。
計算式は下記です。
経常損益比率=経常収益÷経常費用
※経常収益=売上高+営業外収益
※経常費用=売上原価+販売費及び一般管理費+営業外費用-減価償却費
■粉飾決算見破り法
銀行では、キャッシュベースでの会社の経常的な儲けである「経常収支比率」と損益ベースでの会社の経常的な儲けである「経常損益比率」の「差」をみてます。
例えば、
経常収支比率=90÷100×100%=90%
経常損益比率=110÷100×100%=110%
上記は、企業の経営活動による経常的な現金収支はマイナスですが、損益ベースでは黒字という状態です。
この場合の差は、110%-90%=20%です。
一時的なものであれば問題ないでしょうが、売上が一定で、この差が「2期連続で10%以上」ある場合、銀行では要注意アラームが鳴るようです。
売上が横ばいなのに、その差が10%以上あり2期続いているようであれば、架空在庫や架空売上が計上されているのではないかと、粉飾決算が疑われるからです。
銀行は必ずこの指標をみています、経営者の皆さん、覚えておきましょう。
Ps.銀行員が経営者にこの事を伝えてくれると会社が立ち直れる可能性が出てくるのですが、粉飾決算を疑っても銀行員は沈黙を守り、無言で貸付対象先から回収対象先へ社内処理を変更します。電話や訪問回数が急減すれば、そういうことです。もちろん次回融資は下りません、怖いですね。
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