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関東・首都圏大雪とも無縁ではない“世界の気候変動”。改めて考えたい「日本の家屋が寒すぎる」問題

5日から6日にかけ、警報級の大雪が降るとされる関東甲信地方。世界各地では異常気象が相次いでおり、アメリカも先月「生命を脅かすほどの寒さ」に襲われたと伝えられましたが、いったい何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、地球温暖化と寒波の関係性を考察。さらに日本の住宅が厳しい寒さに対応できない理由を明らかにしています。

アメリカを厳しい寒さが襲う 「生命を脅かすほどの寒さ」 地球温暖化が寒波をもたらす

1月半ば、北米を厳しい寒波が襲った。気温がマイナス40度を下回ったところもあり、米メディアによると22日までに凍死や交通事故など、寒波による死者が少なくとも95人に達したとのこと。

米国立気象局(NWS)は、

「生命を脅かすほどの寒さ」(*1)

が予想されるとの注意報を出す。

北極気団が南下したために、寒波が発生。寒気は、カナダ国境からメキシコ湾岸に沿った各州にまで広がった。

アメリカ国立気象局(NWS)は14日に、約1億1,000万人が住む地域、つまり全米人口の約3分の1にあたるエリアに寒冷警報を出す。

寒波の影響で、各地の交通網が凍結や積雪により大混乱に。航空情報サイト「フライトアウェア」によると、12日から21日までの10日間で、アメリカ発着の便の約3割にあたる7万4,000便が遅延し、1万4,900便が欠航となる。

寒波による事故も発生。たとえば、ニューヨーク州東部の国際空港では18日、アメリカン航空の飛行機が着陸時に滑走路を滑り落ちる事故が。幸いにも乗っていた53人の乗客は全員無事。

さらに、シカゴ市の郊外にある電気自動車(EV)の充電ステーションでは、厳しい寒さのためにバッテリーの充電ができず、多くの車が立ち往生する事態となる(*2)。

なぜ地球温暖化が各地に寒波をもたらすのか

寒波は世界中で発生。昨年のこの時期、日本にも「10年に一度の最強寒波」が襲来。

大雪のため、JR西日本の京都線など18本の列車が駅の間で一時立ち往生。乗客を乗せたまま、朝方まで停車した列車もあり、体調不良により16人が搬送された。

中国の黒竜江省・漠河市では、昨年1月22日の朝に市の記録として史上最低のマイナス53度を記録。

このような寒波は、普段、北極上空に存在する寒気が南下したことが原因だろう。通常、北極上空では偏西風が北極を取り巻くように周り、寒気は極地に留まっている。

ところが、この偏西風が蛇行。偏西風の蛇行には、ラニーニャ現象など複数の要因が組み合わさって起こると考えられており、それに加えて「地球温暖化」により北極域の海氷が解けて大気の流れが変わった可能性も。

このことが偏西風の蛇行を促進し、寒気をもたらしたという(*3)。

九州大学応用力学研究所の森正人助教(気候変動)は、TBSの取材に対し、

「温暖化が今後より進行すると、より極端な気象が発生しやすくなる。極端な寒波は温暖化が進んだ将来には、頻度が減少すると予測されています。ところが温暖化の過渡期である現在のような気候では、温暖化が、逆にその寒波の発生を助ける場合もあるという見方もある」(*4)

と述べた。

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深刻化する雪不足で廃業に追い込まれるスキー場も

一方で、長期的な地球温暖化の影響により、雪不足が深刻化。たとえば、世界中でスキー場の運営に支障が出ている(*5)。

気温の上昇によって雪が減り、ウィンタースポーツができなくなることは、世界的な懸念だ。

カナダ・ウォータールー大は2022年、温室効果ガスの排出を大幅に減らさない限り、過去に冬季五輪を開いた計21都市のうち、今世紀末でも開ける寒さが見込める都市は札幌市だけになるという予測を発表した。

いまのところ、各地のスキー場は降雪の減少に対し、人工雪を大量に作ることで対処している。

しかしスイスのバーゼル大学の研究によると、標高1,800~2,000メートル以下に位置するスキー場は、人工雪への依存度が今後も増加していくという。そして、低地にあるスキー場は廃業に追い込まれると予想。

また、大量の人工雪を作ることによる悪影響も大きい。造雪には大量の電力と水が必要となるが、使用電力が増えれば二酸化炭素の排出量も増える(*6)。

冬の厳しい寒さに対応できない、日本の住宅

世界各地で、気象が「極端」に向かいつつある。そしてこの極端な気象をもたらしている大きな要因と考えられているのが地球温暖化だ。

今後も、たびたび厳しい寒さが襲うだろう。しかしながら、日本の住宅は先進各国と比べて断熱性能が極めて低い。

ノンフィクションライターの高橋真樹さんは、

「たとえば冬が寒い先進国でアルミサッシが主流なのは日本だけ。日本の建築基準は断熱性能が低く、国際基準を大きく下回っている。こうした寒い家は、光熱費を高め、健康被害ももたらしている」(*7)

とする。

高橋さんによると日本の住宅では、必要な部屋だけを冷暖房することが一般的。しかし空調している部屋としていない部屋との温度差が大きく、健康被害が起きている状態とのこと。

一方、欧米や韓国などでは、住宅の断熱性能の最低基準を法律で定め、義務化している。

日本ではおなじみのアルミサッシではあるが、実はこのアルミサッシが主に使われてきた国は、先進国で冬に寒くなる地域では日本だけという(*8)。

引用・参考文献

(*1)Nancy Cook、Hadriana Lowenkron「『生命脅かすほどの寒さ』、米大統領選の共和党候補指名争いに影響も」Bloomberg 2024年1月15日

(*2)「米寒波の死者90人超える 航空便7万便に影響」日本経済新聞 2024年1月24日

(*3)「寒波と温暖化 10年に一度の最強寒波に温暖化が関係?【風をよむ】【サンデーモーニング】」TBS NEWS DIG 2023年1月29日

(*4)TBS NEWS DIG 2023年1月29日

(*5)藤野隆晃・稲垣康介「雪減るスキー場、日本でも北欧でも 企業や町が『ためる』解決策」朝日新聞 2023年5月19日

(*6)COURRiER Japon「いつか来る、『世界からスキー場がなくなる日』─産業の維持自体がさらなる雪の減少を招く?」BBC NEWSほか 2023年2月1日

(*7)高橋真樹「冬が寒い先進国で『アルミサッシ』を使う国は日本だけ…国際基準以下の『寒い家』を許してきた住宅政策の大問題」PRESIDENT Online 2024年1月29日

(*8)高橋真樹 2024年1月29日

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image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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