有力な対抗馬は、あらかじめ排除する
プーチンは、メディアを支配しているおかげで、高い支持率を保っています。それでも時々、有力な対抗馬が出てくることがあります。いえ、「ごくまれに」というのが正確な表現でしょう。
プーチンの権力闘争。ほとんどは、彼が大統領になってから3年間で終わりました。2000年から2003年にかけて、プーチンは、90年代ロシアの政治経済を支配してきた3人のユダヤ系新興財閥を打倒したのです。
「3人のユダヤ系新興財閥」とは、
- 「クレムリンのゴッドファーザー」と呼ばれたベレゾフスキー
- 「ロシアのメディア王」と呼ばれ、「世界ユダヤ人会議」の副議長を務めたグシンスキー
- 「ロシアの石油王」と呼ばれた元ユコスCEOホドルコフスキー
です。この3人を倒した後、プーチンの権力基盤は盤石となり、ほとんど無風できました。
しかし、細かく見ていくと、後2回危機があったことがわかります。
1回目は、2008年から2012年まで大統領を務めたメドベージェフが、プーチンを裏切って再選を目指したことです。しかし、メドはプーチンとの権力闘争に敗れて、再選を断念しました。メドはその後プーチンに冷遇され、アル中になり過激な発言を繰り返していると言われています。
2回目は、ロシア1の政治系ユーチューバー、「反汚職基金」(FBK)の創設者ナワリヌイの台頭です。ナワリヌイは、ロシア政府高官の汚職を次々と暴露して大人気になりました。
二つ代表作があります。一つは、メドベージェフ前大統領が複数の超巨大別荘を所有していることを暴露した動画。
この動画によって2017年、ロシア全土で大規模デモが起こりました。クレムリンは、デモを武力で鎮圧しましたが。プーチンは、「ネットってそんなにパワーがあるのか!?」と驚き、規制を加速させたのです。それで私の仕事にも支障がではじめ、「完全帰国を決めた」という流れです。だからナワリヌイは、私の人生にも「大きな影響を与えた」
といえるでしょう。
ナワリヌイ、二つ目の代表作は、「プーチンのための宮殿」です。
● Дворец для Путина. История самой большой взятки
すでに1億2,900万以上再生されています。ロシア語の動画なので、見たのはほとんどロシア人でしょう。そして、ロシアの人口は、約1億4,600万人。この動画の影響力の大きさがわかるでしょう。
この動画で、「プーチンは、民によりそって質素な暮らしをしている」という神話は完全に破壊されました。正直言うと、プーチンがウクライナに侵攻する遠因になった気もします。プーチンは、第2次チェチェン戦争、ロシアーグルジア戦争、シリア内戦介入、クリミア併合、ウクライナ内戦介入などなど、戦争によって高支持率を維持してきたからです。
ナワリヌイは、プーチンにとって「ほんまもんの脅威」なので2021年1月に逮捕され、今も牢屋にいます。ちなみにナワリヌイは2018年の大統領選挙に立候補する予定でした。しかし、中央選挙管理委員会に出馬を拒否されています。