「いつまでも若手気分」な高齢者は嫌われる。周囲に“扱いづらさ”を感じさせるシニア社員の幼稚な振る舞い

Asian,Senior,Man,Worry,Lost,Expression,Close,Up,Shot
 

先日掲載のこちらの記事をはじめ、これまでたびたび我が国の高齢者をめぐる問題の考察を重ねてきた、健康社会学者の河合薫さん。「老害」なる言葉についても「シニアvs.若者という対立を鮮明にするために使われているようにしか思えない」とするなど、鋭い分析を展開してきました。そんな河合さんは今回、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、世界的に注目されているという「エイジズム」の概念とその問題点を紹介するとともに、「シニア社員は扱いにくい」と苦言を呈する人があとを絶たない理由を推測しています。

【関連】年間6万8千人が孤独死。今の日本は高齢者が誰にも看取られずに亡くなり放置される“尊厳”なき国
【関連】「老害」の何が問題なのか。シニアvs.若者という対立を煽るために使われる“嫌な言葉”

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:超高齢社会の稼ぎ方

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

超高齢社会の稼ぎ方

「年齢は単なる数字」という人たちがいます。しかしながら、若々しさを保っていることと、成熟してない大人でいることは別。いつまでも「若手気分」でいるシニアは嫌われます。

そんな中、最近世界的に関心を集めているのが「エイジズム」です。

エイジズムは1969年に、アメリカの老年医学者ロバート・バトラーが提唱した概念で、「高齢であることを理由とした体系的なステレオタイプ化と差別のプロセス」と定義されています。当時のアメリカ社会は公民権運動が最高潮に達し、フェミニズム(女性解放運動)の第2波が始まった時期でもありました。エイジズムもその流れで生まれ、その他の差別同様「ステレオタイプ」として社会に定着し、生きづらさへとつながっていくのです。

ステレオタイプの最大の問題は、「ステレオタイプ脅威=ステレオタイプの内面化」として、社会の損失に発展すること。

例えば、「高齢者は能力が低い」「高齢者は物覚えが悪い」「高齢者は考え方が古い」「高齢者はITに弱い」といったステレオタイプが、「やっぱり高齢者に質の高い仕事を任せるのはリスクが高いよね~」という機会の喪失につながり、高齢者自身も「どうせ年だから」「どうせ誰も期待してないから」とやる気を失ったり、「どうせ高齢者をバカにしてんだろう!」と乱暴に振る舞ったりと、孤立していく。これらはすべて「人」という社会のリソースの欠損を意味します。

「ステレオタイプ脅威」にさらされると不安感が過剰に高まるため、自尊心が著しく低下し、心身の健康が脅かされるケースも少なくありません。超高齢社会の日本では医療費の増加が懸念されていますが、エイジズムが医療費増額の要因の一つにもなっているのです。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「いつまでも若手気分」な高齢者は嫌われる。周囲に“扱いづらさ”を感じさせるシニア社員の幼稚な振る舞い
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け