中国は大崩壊へ。世界から孤立し輸出産業が打撃を受けた世界第2位の経済大国はどこで道を誤ったのか?

 

2.崩壊する太陽光発電とEVという「SDGsビジネス」

国連が定めたSDGsは、持続可能な社会をつくるための具体的な目標である。その中でも、温室効果ガスであるCO2の削減が重視されている。

具体的には、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの転換、ガソリン車からEVへの転換が目標となっている。

SDGsの周辺には、様々なビシネスが存在している。その中でも、日本で注目されているのは、太陽光発電とEVだ。

太陽光発電は既にピークを越している。中国では、補助金目当ての数多くの業者が参入し、大量の太陽光パネルを販売したが、補助金を受けとると会社を畳んで逃げ出した。その結果、中国では太陽光パネル発電は下火になった。太陽光パネルは大量在庫となり、それが日本に輸出された。

日本でもメガソーラー発電は供給過剰となった。既に電力会社が買い取れる発電量を越え、電力の買い取り料金が下落している。更に、杜撰な造成や設置工事が原因で、土砂崩れが発生している。太陽光パネルには毒性の強い物質が含まれており、耐用年数を過ぎたパネルの廃棄処理も課題となっている。中国の事例を見る限り、適切な廃棄処理が行われるかは怪しいだろう。

また、太陽光パネルの原料となる多結晶シリコンは中国の新疆ウイグル地域が最大の生産地である。ウイグル人の人権侵害問題で米国は中国製太陽光パネルを輸入禁止にしている。日本政府はどのように判断するのだろうか。

以上のように、現状では太陽光発電事業に持続可能性は見いだせない。

EV(電気自動車)は走行中にCO2を排出しない環境に優しい車として欧米各国で積極的に導入された。また、中国はEV生産を国家プロジェクトと位置づけ、テスラの工場を特別待遇で誘致した。そして、多くの中国企業がEV製造に参入した。中国製の安価なEVは、国内外で販売を伸ばした。

欧米市場へのEV輸出が激増し、中国政府は「自動車輸出で日本を抜いた」と喜んでいる。

しかし、問題も山積している。エネルギー危機により電気代が高騰し、ガソリン車よりもコストが高くなってしまった。また、気温が低いとバッテリー性能が低下するため、冬場には立ち往生するEVも増えている。購入して3年を過ぎるとバッテリー性能が著しく落ちるため、保険に入れないという問題も発生している。バッテリー交換の費用は非常に高額であり、バッテリーのリサイクルへの見通しも立っていない。

環境に良いはずのEVも、製造工程まで含めるとガソリン車以上にCO2を排出していることも分かってきた。また、バッテリー廃棄により環境汚染を招く危険性も指摘されている。

2023年末になると、EV人気は下がり、プラグインハイブリッド車の人気が高くなっている。

こうした現実を見る限り、EVはまだ発展途上の技術であり、実用段階には達していなかったことがわかる。ユーザーに多くの選択肢を与えるというトヨタの全方位戦略は正しかったと言えそうだ。

SDGsそのものには価値があるが、周辺ビジネスについては、再構築が必要になるだろう。

この記事の著者・坂口昌章さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 中国は大崩壊へ。世界から孤立し輸出産業が打撃を受けた世界第2位の経済大国はどこで道を誤ったのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け