かねてから沖縄に対する「野心」を持ち続けてきたと囁かれている中国。そんな隣国がついに沖縄“奪還”に向け動き出したとする見方もあるようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では今回、日本には沖縄の主権がないことをほのめかした中国政府要人のSNSへの投稿が、中国や台湾で話題になっている事実を紹介。その上で、今後中国が沖縄を巡る歴史戦や情報戦に拍車をかけてくるのは間違いないとして警戒を呼びかけています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】事なかれ主義の日本に対し、沖縄を本気で取りに来はじめた中国
世論操作や選挙介入にも要警戒。沖縄を本気で取りに来はじめた習近平政権
● 不只覬覦台灣?中國女戰狼影射日本1地主權未定 幾天後升官!
5月21日、中国の「女戦狼外交官」と称される華春瑩(かしゅんえい)外務次官補が、公式SNSで「1945年のポツダム宣言によれば、カイロ宣言の条件は履行されるべきであり、日本の主権は北海道、本州、四国、九州に限られる!この4島は、われわれが決定したとおりである」と投稿したことで、「琉球の主権はまだ定まっていない」ことをほのめかしたと、中国・台湾では話題になっています。
しかも、この投稿を行った数日後、華春瑩氏は外務次官補から外務次官へと昇進しました。彼女が唯一の女性次官に昇進したことで、中国サイドが今後、沖縄の帰属問題を本格的に主張するつもりだという憶測が飛び交っており、とりわけ中国国内では「台湾と琉球、どちらが先に返還されるか」「人民解放軍を派遣して琉球に駐留させるべきだ」「日本人よ、琉球を返せ」といった意見が、数多く投稿されているようです。
この件は、日本のメディアではほとんど報じられていません。沖縄タイムスも、華春瑩氏が外務次官に就任したことを簡単に伝えただけで、沖縄の「中国奪還」が話題になっていることについては触れませんでした。
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華春瑩氏は1945年7月26日のポツダム会談で、トルーマン米大統領、チャーチル英首相、蒋介石中華民国国民政府主席が共同で発表した「ポツダム宣言」を引用しながら、沖縄が日本の主権の範囲に含まれていないことを触れたわけです。
ただし、そのポツダム宣言で守るべきであるとされた「カイロ宣言」が行われたカイロ会談では、トルーマンから何度も沖縄帰属を勧められたものの、これを断っています。ただ、後で後悔したようではありますが、いずれにせよ当時は中国共産党との覇権争いもあり、日本との余計な摩擦は避けたかったと言われています。
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加えて、1951年のサンフランシスコ平和条約によって、沖縄は米国の施政下におかれ、その後、1971年に調印された沖縄返還協定により、1972年に日本に返還されましたが、このように、沖縄の施政権のやり取りはあくまで日本とアメリカのあいだで行われており、日本に主権があるのは明らかで、しかも中国はこうした一連のやりとりに、まったく異議を唱えることはありませんでした。
ちなみに、中国が明確に領有権を主張するようになった尖閣諸島も、沖縄返還により日本が施政権の返還を受けた区域として明示的に含まれています。加えて日本が中華民国とのあいだで締結した日華平和条約でも、尖閣諸島については一切議論されておらず、尖閣諸島が従来から日本の領土であることは、当然の前提とされていたのです。
沖縄に形成されつつある中国人コミュニティ
中国や台湾が尖閣の領有権を唱えるようになったのは、1968年秋に行われた国連機関による調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとの指摘を受けて尖閣諸島に注目が集まってからです。
そしてこの中国の主張に対して、日本はあまりに弱腰で、基本的に尖閣諸島への上陸や周辺地域での日本人漁師による漁業を実質的に禁止しました。海上保安庁は、尖閣に近づく日本漁船を追い払い、中国公船に対してはアリバイ作り的に退去を呼びかけるだけの状態が続いています。
加えて、尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が設置したブイも、昨年7月に発見されてから約11カ月が経過しようとしていますが、日本側は撤去も破壊もせずに放置したままにしています。
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こうした日本の危機感のなさ、事なかれ主義を見た中国が、さらに踏み込んで、いよいよ沖縄の日本帰属に疑義を表に出してこようとしていると見るべきでしょう。華春瑩氏はその尖兵として、中国政府から期待されているということでもあります。
実際、沖縄の帰属問題については、2013年に中国共産党の機関紙、人民日報が「未解決の問題」だ等とする論文を掲載、当時の菅官房長官が「論文が中国政府の立場であるなら断固として受け入れられない」と抗議したものの、華春瑩報道官は「抗議は受け入れられない」と反発、沖縄が日本に帰属すると述べることを拒んだことがあります。
近年、多くの中国人学者が「琉球主権未確定説」を唱えるようになっており、昨年6月の人民日報では、故宮を訪問した習近平国家主席が琉球王国と中国福建省との歴史的関係に言及したことを一面トップで報じています。
このときは、沖縄県の玉城デニー知事が訪中する直前であり、わざわざそのタイミングを狙って発言したわけで、沖縄を日本から分断させ、中国に引き寄せようという意図があったと言われています。
今後、中国が沖縄を巡る歴史戦、情報戦に拍車をかけてくるのは間違いないでしょう。世論操作、選挙介入などにも警戒する必要があります。とりわけ、中国経済が停滞していることもあり、「沖縄は日本に盗まれた」と中国人の憎しみを煽り、国内の不満を外に向けさせてくる可能性もあります。
現在、中国から脱出し、他国へ移住する中国人が増えています。一方では習近平政権の国内統制に嫌気が指した富裕層が続々と海外脱出しているとされていますが、その一方で、他国住民との摩擦が増大するのみならず、そうした脱出組に紛れたスパイによる他国の政治への浸透工作も懸念されています。沖縄でも糸満市には中国人コミュニティが形成されつつあり、街の風景が変わりつつあると言われています。
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国の安全保障について、これまで日本はあまりにも甘すぎました。スパイ防止法も含めて、さらなる対策強化は不可欠です。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年5月29日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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