これまで人権重視の観点から不法移民に寛容な政策を取り続けてきたバイデン政権。しかしここに来てまさに「歴史的転換」とも言うべき大統領令を発令し、米国内で大きな論争を呼んでいます。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、共和党のみならずバイデン氏の「身内」である民主党からも批判が噴出しているこの大統領令を紹介。さらにかような重要なニュースに注目することのない日本メディアの報道姿勢を疑問視しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:歴史的転換を示すバイデンの大統領令
歴史的転換を示すバイデンの大統領令
またまた米国大統領選に関連した不法移民関連の話題です。
バイデン大統領が「民主党の歴史的な政策転換」とまで言われる大統領令を出して米国内で大論争が起こっているのに、日本のマスコミが注目していないからです。
バイデン米大統領は6月4日、メキシコ経由の難民希望者の受け入れを制限する大統領令を発令しました。
しかしながら、この大統領令、共和党はおろか民主党内からも集中砲火を浴びています。
以下、先週のニューヨーク・タイムズの記事の題(または副題)の一部です。
- 6月4日 バイデン大統領、南部国境での亡命申請を実質的に阻止する大統領令を発令
- 6月4日 移民を制限するため、バイデンはトランプのお気に入りの移民法に頼る
- 6月5日 バイデンはトランプの看板政策である移民問題を逆手に取れるか?
- 6月5日 移民問題で勝利するために、バイデンは国境を越えて議論を進めるべき
- 6月6日 バイデン大統領の移民に関する大統領令について知っておくべきこと
- 6月7日 バイデンの移民令を左右のメディアはどう報じたか
- 6月8日 なぜバイデンは移民を抑制するのが正しいのか
このメルマガで何度も指摘したとおり、今までは、不法入国で捕まった人も難民申請をすれば米国内に釈放されていました。
釈放は後日に米国内の指定された裁判所に出頭する事を条件としています。しかしながら、ほとんどの不法移民はそのまま米国に隠れて出頭していませんでした(キャッチ・アンド・リリース問題)。
【関連】米国、そりゃ分断されるわ…トランプ大統領を再選させる怒りのマグマ、不法移民とマヨルカスを報じぬ報道の罪
今回のバイデンの大統領令は、不法入国者数が1日平均2,500人を超えた場合に、難民申請の受け付けを一時停止し以降は国外退去とする内容です。
当然ながら共和党は「遅すぎる、中途半端な政策」と非難しています。
民主党内に支持する人もいますが、急進左派からは「亡命・難民申請を制限するなんで、とんでもない非人道的な行為だ」とこれまた強烈な非難です。
上記のニューヨーク・タイムズの記事を一つみて見ましょう。
2024年6月4日「移民を制限するため、バイデンはトランプのお気に入りの移民法に頼る」からの抜粋です。
バイデン大統領は演説で語った。
「単純な真実は、世界的な移民の危機があるということだ。もし米国が国境を安全なものにしなければ、ここに来ようとする人々の数は青天井になる」
今回のバイデン氏の発表は、アメリカは移民の国であると長年主張してきた大統領と政党にとって驚くべき反転である。
バイデン氏のような民主党議員やその支持者たちは、国境閉鎖に執着するトランプ氏を長年にわたって非難してきた。
カマラ・ハリス氏は2017年、「何百万人もの難民に背を向けることはできない」とトランプ氏を非難した。2018年、民主党の議員たちは、トランプ氏が亡命の廃止を求めて「偏見の火種」を煽っていると非難した。
しかし、記録的な数の移民が国境を越え、はるか彼方の都市にまで広がるにつれ、移民をめぐる政治は変化してきた。バイデン氏はそれに合わせて調整した。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
解説
この重大な方針転換である大統領令に注目する日本メディアはありません。
不法移民問題は、2015年からトランプ支持者のもっとも強力な支持理由でした。
しかしトランプが主張していたキャッチ・アンド・リリース問題などの解説を日本の大手メディアがしているのを見たことがありません。
解説すれば、「トランプの主張していることは常識だ」と分かるはずです。
ごく一部の米国人しか信じていないQアノンや陰謀論などを絶え間なく喧伝する必要などないのです。
実際、米国の少なくとも有力新聞ではそのような話題の報道はほとんどありません。
私、たまたま前日にTBS系の衛星放送番組でCNNの特集番組を見ました。
CNNが集めてきた極端なトランプ支持者らの映像を、さらに編集抜粋しているので、「トランプ支持者は狂信的で排他的な人ばかり。それに対して民主党支持者は冷静な人権派」という印象を強烈に与えていました。
今回、取り上げた、バイデンの大統領令は歴史的な転換です。そしてニューヨーク・タイムズは反トランプで有名な新聞です。
日本の報道のどうなっているのだ?と疑問が止まりません。
(『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』2024年6月9日号より。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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