習近平政権が「独立派」とみなす頼清徳氏の総統就任以来、台湾に対してさまざまな威嚇を仕掛ける中国。ついに先日、独立勢力に勝手に死刑を宣告する法律を制定する暴挙に出たことが国内外のメディアで大きく報じられています。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、このニュースを詳しく取り上げるとともに、台湾サイドの反応を紹介。中国に対して一歩も引くことなく、かつスマートに牽制する新総統への大きな期待を記しています。
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※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【台湾】期待される頼清徳総統の活躍
焦る中国。期待される台湾・頼清徳新総統の活躍
● 中国 「台湾独立派」の国家分裂行為 処罰指針発表 死刑も
中国は一体なぜこれほど焦っているのでしょうか。頼総統が就任してからの中国は、恥も外聞もなく台湾をあの手この手で脅し続けています。軍事的な威嚇はいつものことですが、今度は「台湾独立勢力には死刑を言い渡すことができることを、中国の最高裁判所にあたる最高人民法院や検察など5つの司法部門が発表したというニュースです。まずは、その内容を以下、報道を引用して確認しましょう。
中国政府は21日、「台湾独立派」の国家の分裂行為などを処罰する指針を発表しました。この指針は、国家と国民に著しい危害を及ぼした場合、死刑を言い渡すことができると定めていて「1つの中国」の原則を認めない台湾の頼清徳政権への圧力をさらに強めようとしています。
この指針は先月26日付けで、中国の最高裁判所にあたる「最高人民法院」や検察など、5つの司法部門が21日発表しました。
この中では、極めて少数のかたくなな「台湾独立」勢力を司法部門が総力をあげて処罰し、「国家主権と領土の一体性を断固守っていく」としています。
そして、台湾を中国から分裂させる目的で組織を立ち上げたり、組織を指導して国家の統一活動を破壊したりする行為を処罰するとしています。
さらに、台湾に関する規定の改正や住民投票などを通して、「台湾は中国の一部だ」という地位を変えようとした場合や、主権国家に限られる国際機関への台湾の加入を推進したり、他国と公式に往来したりして「2つの中国」をつくり出そうとした場合も処罰するとしています。
そのうえで、こうした活動を主導し国家と国民に著しい危害を及ぼした場合は死刑を言い渡すことができると定めています。
また被告が国外にいる場合でも、条件がそろえば、裁判を開くことができるとしています。
今回の指針が処罰の対象とした行為は、その多くが「1つの中国」の原則を認めない台湾の頼清徳政権が進める政策と一致しており、中国当局は、先月の頼総統の就任後に行った大規模な軍事演習に続いて、さらに圧力を強めようとしています。
● 中国 「台湾独立派」の国家分裂行為 処罰指針発表 死刑も
これに対して、頼総統は早々にコメントしました。
台湾の民主は犯罪ではなく、独裁こそが罪悪なのだ」と非難し、「中国に台湾の人々を裁く権利はない。中国にとっては、統一に応じないことが『台湾独立』なのだ」などと反論しました。
その上で、「中国政府は台湾の存在を尊重し、人々が選んだ台湾の政府と対話すべきだ」と呼びかけています。
● 頼総統「台湾の人々裁く権利ない」 中国の新指針“独立進める行為”に死刑も
「独裁こそが罪悪」という言葉には歴史的な重みがあります。人類は、長い歴史の中で、この言葉にあるような過ちを何度も繰り返してきました。
台湾で対中政策を主管する大陸委員会は「極めて非文明的で乱暴な挑発」とする談話を発表し、台湾市民に対して「中国の措置は拘束力を持っておらず、動揺する必要はない」と呼びかけた。
● 中国“台湾独立派”に「死刑」も 大陸委員会「動揺の必要ない」
台湾側は、中国の挑発や脅しに恐れおののく必要はないと、台湾の人々に呼びかけています。頼総統は、さらに一歩踏み込んで、米議会の諮問委員会、米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の訪問団と総統府で面会した際に、「中国が任意にレッドラインを設定するのを許すべきではない」と国際社会に対して望む考えを示すと同時に、以下のような発言をしました。
中国が理由をつけて台湾海峡周辺や南シナ海での軍事行動を引き続き増加させ、外交圧力や経済的脅迫、認知戦、法律戦などの手段を組み合わせてグレーゾーンでの干渉を絶えず強め、地域の安定を破壊していると指摘。台湾は今後も責任を持って両岸(台湾と中国)関係を処理し、台湾海峡とインド太平洋の地域の現状維持に尽力すると述べた。その上で、国際社会は中国が任意にレッドラインを設定するのを許すべきではないとし、米政府や国会議員団が訪台によって、米国と台湾は共にあるとのメッセージを発信していることに感謝した。
● 「中国に任意のレッドライン設定許すな」 頼総統、国際社会に呼びかけ/台湾
台湾にはアメリカがついていることを強調し、中国には一歩も譲らない、そんな意気込みが伝わってくる発言ですが、もちろん中国が望んでいるような、台湾独立分子的な発言は決してしません。総統に就任以来、中国からの嫌がらせがエスカレートしていますが、それに対して焦ることなく、とてもスマートに中国を牽制する頼総統の姿勢は、頼もしい限りです。頼総統のこれからの活躍が楽しみです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年6月26日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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