いまや知らない人はいないほどに成長したドン・キホーテ。その創業者の著書を今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』著者である土井英司さんが紹介しています。運についての考え方や、どんぞこからの経営、マネジメントへの考え方は一見の価値ありです。
【印税辞退で驚安価格(笑)】⇒『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』
安田隆夫・著 文藝春秋
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、「89年末以降に株価が大きく上昇した主な銘柄」ランキングで5位にランクインした、ドン・キホーテ(パン・パシフィック・インターナショナルHD)の創業者、安田隆夫さんによる「最強の遺言」。
オビに「印税辞退で驚安価格!」と書かれているのが笑えますね。(今どき720円+税です)
内容は、創業者にありがちな成功譚と精神論が中心ですが、ここぞという場面での勝負勘や不運に見舞われた時の心構え、経営・マネジメントにおける考え方は、大いに参考になります。
不振に終わったコンビニ新業態「情熱空間」を損切りし、社内の反対を押して「長崎屋」を買収、生鮮部門のノウハウを獲得したことで「MEGAドン・キホーテ」に繋がったという話は、なるほどと思いました。(地方に住んでいると、この業態がいかに有望かがわかります)
著者の行動のベースとなっている「打率と打点の交差主義比率」、「果敢な挑戦」と「迅速な撤退」は、常にセットであるべきだという主張、付き合ってはいけない人間のタイプなどは、全ビジネスパーソンの参考になると思います。
そして、マネジメントに携わる人が参考にしたいのが、後半で語られる「集団運」の高め方。
人の上に立つ人の多くは、最初、何らかのハングリー精神から物事を起こすと思いますが、そのままでは「個運」は高まっても「集団運」は高まらないということが書かれています。
では、集団運を高めるにはどうしたらいいか。
本書には、その秘訣と、同社がそれをどう現場のマネジメントに落とし込んだかが書かれています。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
運のいい人とは「運を使い切れる人」であり、運の悪い人は「運を使い切れない人」あるいは「使いこなせない人」だと言える
とりわけ会社(組織)には「集団運」というものがあって、これが成長と発展の決め手になる
不可避なものに対する諦めの良さも、強運の基礎になる
「挑戦者」であることが、運を引き寄せる上での前提条件
人生においては常にチャレンジを続け、サンプル数を多くしていくことが重要
経験した不運が大きければ大きいほど、訪れる幸運は不運に“反比例”して大きなものとなる可能性が高い。そういう時は、まさに「得手に帆を揚げる(得意なわざを発揮できる好機が到来し、調子に乗って事を行うこと)」ようにして、エンジン全開で思い切りレバレッジ(てこ)をかけ、その幸運を一気呵成に増幅させなければならない。「運を使い切る」ことに全力を注ぐのだ
何回失敗しても、圧倒的な“大勝ち”があればいい
「情熱空間」を“損切り”し、「長崎屋」を買収。後述する新たな業態に資金と人材を投入したのだが、これが大いなる“吉”と出た。「長崎屋」の買収により、それまで当社が弱かった食品部門(とりわけ生鮮部門)のノウハウを獲得することに繋がり、〇八年六月には、後にドン・キホーテに次ぐ主力となる「MEGAドン・キホーテ」の一号店を開業
「打率と打点の交差主義比率」
「交差主義比率」は、在庫の商品がどれくらい利益を上げているのかを確認するための計算式であり、「在庫回転率×粗利益率」を計算し、この比率が高いほど、効率よく儲かっている商品だ。ということは、その商品に力を入れていくのが、もっとも合理的なビジネスの勝ちパターンだと言える
「果敢な挑戦」と「迅速な撤退」は、常にセットであるべきだ
戦略や戦術を語る前に、まずは戦闘モードを全開にせよ
他罰的な人は避けた方がいい
「人は人のことなど分からない」。だから「時間のテスト」が必要になる
原因を解決しようとする側ではなく、原因になっている側から発想してみる
ビジネスは二者択一ではなく、常に「こちらも立て、あちらも立てる」という「AND」の発想をしないと成功しない
経営者の一歩より社員の半歩
巻末には、著者が『ビジョナリー・カンパニー』に触発されて作ったという、『源流』の抜粋が掲載されており、経営理念や行動規範を作ろうと思っている経営者は、必読の内容です。
「マネジメントの鉄則九箇条」
「次世代リーダーの心得 十二箇条」
あたりは、壁に貼っておくといいと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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