8月5日から6日にかけ、まさに「乱高下」という表現がふさわしい大荒れの展開を見せた東京株式市場。その裏では一体どのような事態が進行していたのでしょうか。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では京都大学大学院教授の藤井さんが、この騒動の全貌を詳細に解説。さらに国民に対して無責任に投資を煽った岸田首相を強く批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【株価暴落と岸田氏の大罪】総理は国民のオカネの株式市場投入を大誘導.結果,多くの国民はカモにされて「大損」し,外国人含むプロ投資家達は「ボロ儲け」した.
涼しい顔で「自己責任」と言い放つか。国民の財産を「株式市場投入」大誘導で溶かした売国総理
国民に巨大被害を与えた岸田総理の凄まじく深い罪
株価が暴落しました。ご覧の様に、7月31日は3万9,000円超だったのに、その僅か5日後の8月5日には約3万1,500円にまで、実に7,500円以上も下落。8月5日には一日の下落幅が約4,500円という、過去最高の下落幅を記録しています。
この背景には、アメリカの景気後退予測が広がり、米国の株価が大幅に下落したという動きがあります。
しかも、アメリカのFRBによる利下げ予測も広がり、これが「円高」圧力をかけ、株価をさらに引き下げました。「円高」が進めば日本の輸出企業の業績悪化が進むと予期される事になるからです(しかも、外国人からすれば、円高が進めば円安の時に安く買った株を高く売れる事になりますから、外国人による日本株売り圧力もかかります)。
さらに最悪なことに、このタイミングで植田日銀総裁が(不条理としか言いようのない)「利上げ」を決定し、これが「円高」圧力をさらにかける事になったのでした。そしてこの円高圧力によって、円高による株価下落圧力がさらに加速する事になったのです。米国の景気後退や利上げは我々にはなんともできない話ですが、日銀利上げは日本人が勝手にやったこと。誠に遺憾という他有りません。
もちろん、こうした株価暴落には複合的な要因があるにはあるのですが、日銀利上げさえなければ、ここまで激しく株価が暴落することもなかったに違い無い、というのは間違いありません。この点だけを鑑みても、この度の日銀の利上げ判断は国益を毀損する不適切な判断だったと総括することができるでしょう(が勿論、利上げの最大の問題は、投資、消費を縮小させ日本経済そのものに停滞圧力をかけるという点にあることを忘れてはなりません)。
いずれにせよ、岸田総理はこれまでやれNISAだとかやれ「貯蓄から投資へ」だとかやれ「金融所得倍増」だとかと声高に叫び、国民一人一人が一生懸命働いて貯めた貴重なオカネを株式市場に大量に誘導してきたわけですが。その結果として、今回の「株価暴落」によって大損してしまった国民は超膨大な数に上ることになったのです。岸田氏は実に罪深い、と言う他ありません…。
そもそも、岸田氏が総理になって一生懸命進めた「株式を国民に買わせる」なんていう取り組みは、金融業界は喜ぶでしょうが一般の国民にはさして利益のないもの。だから本来、消費減税なり補助金や公共投資の拡充なりの当たり前の経済政策をやっていれば、誰も本気で進めようとは思わない「邪道の経済政策」に過ぎないものなのです。
したがって繰り返しますが、やるべきことをやらず、やってはいけないことをやり続け、その挙げ句に日本国民に巨大被害を被らせた岸田総理の罪はやはり、凄まじく深いと言わざるを得ないのです。
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プロの手玉に取られた国民。株価暴落から反発急騰の顛末
ちなみに、株価が暴落した8月5日の翌日の6日の朝には、それまでと打って変わって、株価が高騰。一時前日比で3,000円を超える程の上げ幅を記録しました。
この揺り戻しは、ほぼほぼプロの投資家達によって仕組まれたといって差し支えないものです。なぜならこの動きは、プロ投資家達が昨日、膨大に「空売り」したことが原因だからです。
まず、プロ投資家達はここ数日、株価が急落している様子を見て、(以前、もっと安い値段で買っておいた)手元の株をまずは大量に売りさばき、「利益」を確定させていきました(これぞ売り抜けた、という奴ですね)。
しかし、それだけでは、利益は限定的。彼らはもっともっと利益を上げるために、手持ちの株がないにも拘わらず「株を借りる」事を通してさらなる利益を狙う方法としての「空売り」を行ったのです。
すなわち、彼らはまず昨日の時点で大量の株を「借り」てきて、そこで売りさばます。これが「空売り」です。で、こうして「空売り」すれば、手元にオカネが大量に入ってくるのですが、この時に「明日の朝一番で、今売りさばいた株を全て買い戻す」という事を同時に決定しておくのです。
そして一日経って朝一番になった途端、今手元にある大量のオカネを使って、昨日売りさばいた株を全て実際に買い戻すわけです。そうすると、昨日の時点の方が株価が高く、今朝一番の時点の方が株価が安くなっているので、手元にはその大量の差額分のオカネが残る、という次第です。
すなわち大量のプロ投資家達は、株価が暴落した8月5日の時点で大量の株を「空売り」した一方、その翌日の8月6日の朝一番の時点で空売りした大量の株を再び「買い戻した」のです。その結果、株価が一時、3,000円も高騰したのです。
しかし、無知な多くの素人投資家はこういう空売りがあるということを十分に理解していません。ただただ、8月5日までの時点では、株価がどんどん下がっていくので、恐ろしくなって、株を売りさばいた、という素人国民は夥しい数に上るでしょう。
というか、そういう方が大量に居たから、株価は大幅に下落していったのです。株価が大幅に下落したという事実が、多くの国民が株を売りさばいたという事を意味しているわけです。
ちなみにその中には、高い値段で買ってしまったものの、暴落した事に驚いて、損害を最小化するために早く売ってしまおう…と考えて売った方もたくさんおられるでしょう。結果彼らは大損してしまったのです。
「売国行為」と揶揄されても致し方ない岸田首相の所業
いずれにしても、こうして多くの人々が株を売った結果、プロ達の「空売り」による利益はさらに拡大することになります。なぜなら、たくさんの人が株を売れば売るほど、株価は激しく急落するからです。そして、急落する幅が大きければ大きいほど、(先のメカニズムからして)空売りの「利益」が拡大するわけです。
つまり、プロの投資家達は、素人達が株価が上がってる局面ではどんどん株を買って株価が上がり、価格が暴落している局面では素人達がどんどん株を売って株価が下がる…というその株の乱高下を「利用」して、(通常の)「売り」や「空売り」による利益を拡大させているわけです。
そして、プロ達は、素人達の売り買いによって生ずる株価の乱高下を上手に賢く利用して着実に利益を上げていく一方、素人達は、(株価高騰局面で儲けたくて株を買いたくなるという心理に踊らされて)高い株を買わされ、(株価暴落局面では恐ろしくて株を売りたくなるという恐怖心に支配されて)安い株を売らされるということを通して、着実に損を拡大していく事になるのです。
つまり、プロは何も知らない素人をカモにしてぼろ儲けした、というのが、5日から6日にかけても株価乱高下の実態なのです。
だ・か・ら…
一国の総理大臣ともあろう者が、株に詳しくない一般の素人国民にNISAだ何だと言いながら「株は儲かる」幻想を振りまき、「貯蓄から投資へ」「金融所得倍増」等の政府スローガンまで掲げつつ大量の株を買わせるような真似をしちゃイカンわけです。
岸田総理がやったのは結局は、(主として外国人の)プロ投資家のカモを増やすだけの「売国行為」だったのだと揶揄されても致し方ない所業なのです。
*
はたして岸田氏は、こうして大損させた国民達に対して、どのように申し開きをするのでしょうか…?おそらくは、涼しい顔をして「そんなのは全て、自己責任です」と言うのでしょうが──それを許すか許さないかは、我々国民の判断です。
今岸田氏以上に、国民の理性と胆力が試されているのです。
(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論』2024年8月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ)
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