避難遅れの原因にもなる過去の経験が役立たない大雨や暴風
一方、10℃もの「海水温の上昇」で勢いづくのが、台風です。海水温が上昇すると大気中の水蒸気量が増え、台風は発達するエネルギーを得やすくなります。勢力は増大し、発達のピークに達する地点も北上しより強く、より遠くまで生き延びるようになっていくのです。
これは世界的な傾向で、北西太平洋でも熱帯低気圧が発達のピークに達する地点が北上していると報告されています。最近の別の研究では、24時間以内に風速が時速104キロ以上に達する「非常に急速に発達する嵐」の数が世界的に増えていることもわかっています。
怖いのは、予想された発達速度をはるかに上回るケースが多いってこと。それは結果的に、上陸が予測されている沿岸部が暴風雨に備えたり、住民が避難する時間を短くし、危機にさらされるリスクを高めてしまうのです。
問題はそれだけではありません。
台風は水蒸気をエネルギー源に「勝手に自分で熱くなる!」のですが、自分の力で動くのが苦手です。逆に「大きな流れに身を任せる」のはとてもうまく、偏西風に乗れば一気に速度をあげ、日本から離れていきます。その偏西風が、温暖化の影響で南北の蛇行が大きくなったり、蛇行の位置が変化したりしていますので、台風はなかなか偏西風に乗れません。
すると日本近海で迷走したり、日本接近・上陸後も動きが遅かったりで、長い時間雨が降るようになる。「こんなの初めて」というような過去の経験が役立たないような大雨や暴風は、避難が遅れる原因にもなります。
もちろん気象庁のスーパーコンピューターの精度も上がっていますが、どんな正確に予測されようとも、「人」が意識的に動かないと減災はできません。
「天災は忘れた頃にやってくる」とは科学者で随筆家の寺田寅彦の戒めですが、「天災ははるかに想像を超える」と思って、災害対策をしてください。
みなさんのご意見、お聞かせください。お待ちしています。
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