石破茂新内閣が発足してはや10日が経過しました。目下の政治は、今月27日投開票の衆議院選挙に向けて動いていますが、その結果しだいでは、ライバルの高市早苗氏が復権する可能性も残されています。そこで本記事では、元読売テレビアナウンサーでジャーナリストの辛坊治郎さんが「高市氏、石破氏、それぞれがトップになった場合、日本経済はどうなるのか?」を考察。自民総裁選を「高市氏の勝率は6%」と予想した理由から、2人の政策とアメリカの関係、庶民の生活に与える影響まで、本音で語り尽くします。(『辛坊治郎メールマガジン』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:辛坊治郎メールマガジン 第707号 10月4日発行「石破政権で日本は変わる?」
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「高市総理・総裁」誕生を、日本の“宗主国”は歓迎しない
岸田政権の次の政権を率いるのが石破茂さんになりました。
この総裁選、いわゆる議員を中心とした「決選投票」が行われたのが、午後三時に株式市場が閉まった後で、「高市さん当選」と見た投資家が買いに入って株価が終値にかけて爆上げして(同時に為替がぐっと円安に振れて)、あ、「こいつらアホだな」と思っていたら、案の定、石破さんが当選しました。
実はこの総裁選の前の週の金曜日、東京品川で中田ひろし参議院議員のパーティがあって、同席した某記者から「高市さんの当選確率をどのくらいにみてます?」と聞かれたので、「6%」と答えておきました。
その日、その記者は大阪で「そこまで言って委員会」の出演を終えてパーティに駆け付けたそうで、彼曰く「スタジオ出演者は『高市で決まり』と皆さん仰ってました」とのことでした。
高市さんの当選確率を私がそこまで低く見たのは、第二次大戦後の日本の政治構造がアメリカ政府の強い意思の下で組み立てられてきたのを嫌と言うほど見てきたからです。
高市さんは、アメリカの中枢から見て「危険な極右」です。
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米国から見ると高市氏も石破氏も「面倒」な政治家だが
アメリカは中国を最大のライバルと見て様々な対中の「仕掛け」をしていますが、ウクライナ戦争やパレスチナ問題、欧州の極右の台頭などで忙殺される中、東アジア情勢が緊迫するのを極力避けたいと考えています。
何かのはずみで中国が台湾に武力攻撃なんか仕掛けたら、アメリカ軍を派遣しなくちゃいけない訳で、そんな事態は絶対に避けたいところです。
日本に極右政権が誕生して中国と緊張状態になり、それが切っ掛けで台湾問題がこじれる事態には何としてもしたくないのです。
ですからアメリカは水面下で「毒にも薬にもならない小泉か石破」という選択肢を望んだのですが、今回高市陣営の様々な仕掛け(ネットを使った世論誘導等)が功を奏して、決選投票に高市と石破が残る事態になり、アメリカとしては石破しか最終的な選択肢がなくなった訳です。
石破氏も「地位協定の見直し」なんて、アメリカから見て面倒なことを言ってますが、これについては「どうせ出来っこない」と読み切っています。
むしろ、日本も武力を使ってアメリカ等を守る双方向の安全保障に石破さんは前向きですから、これはアメリカにとっても好都合です。これもまた「出来っこない」話ですけどね。
高市氏の「アベノミクス継続」は日本をボロボロにする
さて、高市さん、石破さん、それぞれがトップになった場合、日本経済がどうなるのかを考えてみましょう。
小泉さんはこの点曖昧ですが、両者の中間よりもやや石破さん寄りくらいに見ておくと間違いありません。
まず高市さんですが、「アベノミクス継続」を強く打ち出しています。アベノミクスの本質は、低金利と財政出動です。簡単に言うと、金利を抑えてお札をどんどん刷ることで、景気を良くしようという訳です。
この政策は「100年に一度のリーマンショック」等のような緊急時には有効かつ必須な手法ですが、恒常的に行うと貨幣価値が落ちて酷いインフレを引き起こします。
日本だけでなく、リーマンショック後、世界中の政府と中央銀行がこれを行った結果、世界中で酷いインフレが起きて、各国の中央銀行は高金利政策に舵を切りました。
ところが日本では政府のデータ上は他国ほど酷いインフレを示さなかったこともあって、緊急事態の対応を続けてしまいました。
例えて言うなら「あんまり効かないね」と言いながら、カンフル剤を打ち続けるようなものです。その結果、「体がボロボロになってしまった」というのが日本の現状です。
低金利とバラマキに慣れた日本の企業はゾンビの様に生き残り、ゾンビが健康な人を食うように、次世代を担う企業の成長が妨げられてしまったのです。
「サナエノミクス」の本質は「インフレ税」による庶民いじめ
都心のマンションが70平方メートルしかない小さなもので一億円を超え、ブランド品の値段が軒並み倍になり、「うまい棒」は10円から15円になりました。「物価が上がる」ことと「貨幣価値が落ちる」ことは同じです。
株などに投資していた人は、貨幣価値が下がった分以上の円を手にしましたが、貨幣価値が落ちた分ほど給料も年金も上がっていませんから、株や不動産投資をしていない人の生活はどんどん貧しくなっていきました。
一方、物価が上がれば、例えば物価×10%の税金はガンガン増えます。消費税が3%上がると発狂したように批判する人が、物価が10%上がっても平気な顔でいるのが信じられません。
庶民の生活は後者の方が間違いなく厳しくなるにも関わらず、です。
こうして「インフレ税」という形で国民の資産がズンズン役所に吸い上げられている、というのが現状起きていることなのです。
高市さんはこの政策を受け継ごうとしている訳ですから、高市さんが総理になったら、円安、株高は間違いありません。
しかしインフレは確実に加速します。株は上がりますが、物価高騰はさらに続き、庶民の生活が破壊されるのは、今起きていることを冷静に見たら誰でも分かる話です。
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では、石破氏の経済政策で日本円の価値はどうなるか?
逆に石破さんが総理ならどうでしょうか?
石破さんは、政治的な恨みもあってアベノミクスに批判的です。
アベノミクスの本質は低金利とバラマキですから、これを否定するということは、金利が上がって円高に振れる可能性が強まったということです。
安倍政権で日銀は政府の下に組み込まれましたが、本来中央銀行はバラマキに走る政府から独立して通貨防衛のために必要な策をとるべきで、これを「中央銀行の独立」と呼びます。
石破さんの過去の発言を詳細に分析すると、「中央銀行は政府の思惑から離れて、必要な施策をすべき」と、少なくとも政権をとるまでは考えていたようです。
実際に政権を取った今は考えが変わっている可能性がありますが、少なくとも安倍・高市体制よりは日銀は利上げがしやすいはずです。
ちなみに岸田政権は単なるポピュリズム政権ですから考察に値しません。
そんなわけで、石破さんが政権を取ると決まった瞬間に利上げ=円高予想となって、為替が円高に振れ、同時に株価が下がったのです。完全に予想通りのマーケットの動きです。
「石破総理」のほうが一般庶民はマシな生活になる
これからどうなるか?
実は、リーマンショック以降の各国の対策でインフレが起き、結果中央銀行がインフレ抑制のために利上げせざるをえなかったように、高市さんの施策(当面の低金利、円安)の方が、将来の利上げリスクは確実に高まります。アメリカのインフレと高金利が、実はトランプ政権下のバラマキの結果なのは火を見るよりも明らかです。
ただ、石破さんの政策で将来の利上げが抑えられるかと言うと、これはかなり難しいです。
すでに日本の物価は火が付き始めていますから、日銀は利上げを継続しない訳にいかない状況です。そうしなければ、株式や不動産投資をしていない人の生活はどんどん苦しくなってしまいますからね。
石破政権は結局、過去の政策の誤りに翻弄されることになるでしょう。来るべき嵐の中で石破船長は日本丸をどう操縦するのか?
私は本音でそんなに石破さんに期待していません。しかし、高市さんが総理になるより、一般庶民はマシな生活になると思います。
でも、それは程度問題で、今のアホな官僚群が幅を利かす日本に、よりマシな未来は見えてきません。残念です。
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(メルマガ『辛坊治郎メールマガジン』2024年10月4日号より一部抜粋。この号の全文および今月配信分バックナンバーはご登録のうえ楽しみください。最新10月11日号「日本最大の問題は何か?」も含めて、初月無料ですぐに届きます)
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