国政の場に身を置く者とは思えぬ差別的発言を繰り返し、裏金問題では党役職停止6カ月の処分を受けた杉田水脈氏。これまで「アンチ」に対しても強気の姿勢を崩してこなかった杉田氏ですが、国会議員生命は風前の灯火状態のようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、杉田氏が現在どのような「窮地」に立たされているかを解説。彼女が鞍替えを宣言した来夏の参院選にも「比例では出馬できない」という厳しい現実を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:さよなら杉田水脈!
さらば杉田水脈。参院に鞍替えでも比例出馬不可能で消える裏金議員
自民党の石破茂首相は今回の衆院選に向けて、自民党の裏金議員のうち重たい処分を受けていた上位6人を非公認としたと発表しました。そして「たった6人?」という国民の顔色をうかがってなのか、追加でさらに6人を非公認にしたと発表しました。しかし、この追加した6人のうちの1人、越智隆雄氏は、すでに「今回は出馬しない」と宣言していた議員なのです。自分が非公認にした人数を少しでも多く盛るために、出馬を辞退した議員まで非公認にするなんて、どうせ森山裕幹事長の差し金だと思いますが、あまりにもセコ過ぎます。
また、自民党が自民党なら、連立を組む公明党も公明党です。新代表に就任した石井啓一氏は10月6日の時点で、党の公式見解として「公明党は自民党が非公認にした候補者は支援しない」と明言しました。それなのに、わずか3日後には非公認となった西村康稔氏と三ッ林裕巳氏を「公明党は推薦して支援する」と発表したのです。どうせこれも森山幹事長の差し金だと思いますが、石井啓一氏には必ず特大の仏罰が下るでしょう。
そして、そんな森山幹事長は14日、自民党が非公認にした議員でも、今回の衆院選で当選すれば党の役職に起用する可能性があると述べたのです。その上、こともあろうに「当選した議員は選挙を経て国民の信任を受けたということだから、いつまでも差別が続いてはいけない」と述べたのです。つまり、自民党の裏金議員や脱税議員たちを国民が批判している現状を「差別」だと抜かしたのです。
そもそもの話、今回の解散総選挙の日程を決めたのは森山幹事長ですし、新総裁に就任した石破茂氏に早期の解散総選挙をゴリ押ししたのも森山幹事長なのです。そして、総裁選の時には「すぐには選挙はしない」と言っていた石破茂氏が手のひら返しをして早期の解散総選挙に打って出たことが批判されると、森山幹事長は「総裁選の時は一議員、現在は総裁であり首相なのだから、立ち場がまったく違う。発言が変わるのは当然だ」と言い放ったのです。もう支離滅裂です。
これで、今回の衆院選のドタバタ劇の元凶が分かったと思いますが、これらの事実を前提として、もう1つのドタバタ劇である「杉田水脈問題」を、今回は考察してみましょう。
今回、石破茂首相は、裏金議員のうち12人を非公認とし、その他43人は公認した上で比例重複を認めないという処分を決めました。つまり、これまでのように「小選挙区で落選したのに比例でゾンビ復活」という甘利明氏のような保険がなくなったのです。多くの国民は裏金議員全員を非公認にしないと納得できなかったと思いますが、これが石破首相にできる精一杯だったのでしょう。
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Xでアンチに喧嘩を売りつつ参院への鞍替えに言及した杉田氏
それでも「比例復活」がなくなれば有権者の民意がダイレクトに反映されますから、石破首相の「退路を断って有権者の審判に当落を委ねる」との説明には一定の説得力がありました。しかし、これに当てはまらない議員が3人いたのです。杉田水脈、上杉謙太郎、尾身朝子の3氏です。この3人は小選挙区と比例の重複ではなく、比例だけに出馬する予定だった「比例単独」の候補でした。
石破首相は「比例重複を認めない」としましたが、この3人は重複はしていません。しかし、このまま比例での出馬を認めてしまうと、有権者の意思に関係なく、自民党が得た政党としての得票で自動的に当選してしまい、この3人だけが何のペナルティーも受けていないことになってしまうのです。
しかし石破首相は、この3人の対応だけを先送りしたのです。この3人は「比例単独」の候補として、それぞの地元の自民党県連から公認申請が出されていました。ですから、本来であれば公認か非公認かを判断し、他の裏金議員と同日に発表しなくてはなりませんでした。しかし、他の裏金議員のように公認してしまうと、その瞬間に当選が決まってしまうという特殊な例だったため、判断を3日間ほど先送りしたのです。
すると3日後、これまた森山幹事長が驚くべき発表をしたのです。それは「3名とも自ら出馬を辞退した」というもの。自分から率先して県連に公認申請を依頼していた3人が3人とも、自分から出馬を辞退することなどありえません。それなのに、森山幹事長は11日、次のように述べたのです。
「3名とも自らご辞退をされて、反省の態度を示されました。今後も政治活動を続けていただきたいと思いますし、1日も早く国民の皆さんの信頼を取り戻せるように頑張っていただきたい」
これが3人の自発的な意思ではなく、森山幹事長の命令に従ったということは一目瞭然でしょう。その証拠に、出馬を辞退したとされる上杉謙太郎氏は、この2日後の13日、公示日の2日前というギリギリのタイミングで、福島3区に無所属で立候補すると表明したのです。
ザックリ説明すると、上杉謙太郎氏は「10増10減」による区割り変更で旧選挙区が分割されたため、今回は比例東北ブロックに単独で立候補する予定でした。それが森山幹事長の判断で潰されたため、無所属での出馬に切り替えたのです。これのどこが「反省して自ら辞退した」なのでしようか?その上、自民党福島県連は無所属でも上杉謙太郎氏を全面支援すると表明しましたので、当選の確率は公認候補とさほど変わらないと思います。
一方、杉田水脈氏は、ツイッター(現・X)でアンチに向かって「あなた方がいくら騒ごうが私にはなんの影響もありません!」などと喧嘩を売りつつ「参院への鞍替え」に言及しました。これもどうせ森山幹事長の差し金だと思いますが、今回の衆院選を引かせるために代替案として来年7月の参院選での「比例単独」を提案したのでしょう。杉田水脈氏は12日、地元の山口で記者会見し、「来夏の参院選比例代表に挑戦し、信を問う」と述べました。
自民党が私を公認しようがしまいが、あなた方とあなた方を支援する人達は、与党には絶対投票しませんよね?ということは,あなた方がいくら騒ごうが、私にはなんの影響もありません!ということです。
お疲れ様ですっ(笑)
ところで、その会議室、予約したのはどなたですかー? https://t.co/ZdChJGFobH— 杉田 水脈 (@miosugita) October 10, 2024
衆院選の比例は「自民党」というように、有権者は政党名を記入するだけで、各党は得票数に応じて名簿の順位の上位から当選が決まって行きますが、参院選の比例は政党名でも候補者名でも良いのです。そして、候補者名の票はすべてその候補者に入ります。杉田水脈氏が「信を問う」と言っているのは、参院選の比例で「杉田水脈」と記入された得票で当選するという予告なのです。
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首相が明言。来年の参院選にも比例では出馬できない杉田氏
しかし、そうは問屋が卸しません。自民党には「比例単独は2回まで」という党内のルールがありますが、杉田氏はすでに2017年と2021年の衆院選で中国ブロックの「比例単独」で当選しているので、そもそも今回は小選挙区から出馬するしかありませんでした。ですから、出馬の辞退は森山幹事長から命令されるまでもなく既定路線だったのです。そのため、隙あらば「参院への鞍替え」を狙っていたのです。
たぶん杉田氏は「比例単独は2回まで」と言っても衆院から参院へ鞍替えすれば過去2回はリセットされるとでも思っているのでしょう。しかし、世の中そんなに甘くはありません。
10月9日に開催された衆議院の「国家基本政策委員会合同審査会」では、立憲民主党の野田佳彦代表、日本維新の会の馬場伸幸代表、日本共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表の4人と、石破茂首相との党首討論が行なわれました。この中で日本維新の会の馬場伸幸代表は、次のような質疑を行ないました。
馬場伸幸代表 「いわゆる裏金問題について、先ほど野田(佳彦)代表の方から衆院選における候補者の公認・非公認という話がありました。もうこれ以上は触れませんが、いわゆる裏金議員というのは衆議院だけではありません。参議院にもたくさんいらっしゃいます。これ、衆院選が終われば即、来年の参院選に向けて対策を考えて行かなくてはなりません。そういう中で、いわゆる裏金参議院議員の方々は、今回と同じ物差しで、公認・非公認をお決めになるんでしょうか?お答えください」
石破茂首相 「(前略)私どもは独裁政党ではございません。総裁や代表がこうだからと、そのまま政策になるわけではございません。これから先、わが党の中で丁寧に議論をしながら、わが党の在り方を確立して行く。その上でお答え申し上げますが、参議院議員についてどうなのか、ということでございますが、同じ国会議員でございますので、衆議院と参議院とで違う対応をするということはございません」
馬場代表 「今、石破総理からはっきりと、来年の参議院選挙に向けた御党の公認に対する考え方、お聞かせをいただきましたので、国民の皆様方と、そこはしっかり注視をさせていただきたいと思います。(後略)」
…というわけで、来年7月の参院選でも、出馬を予定している裏金議員については、今回の衆院選と同じ対応を取ると石破首相が国会で断言したのです。これは公式の議事録にも記録されています。つまり杉田水脈氏は、党内ルールの「比例単独は2回まで」うんぬん以前に、今回の衆院選と同じく来年の参院選にも「比例では出馬できない」のです。
手を染めた悪事の大きさは同じなのに「衆院選には出馬できなかった者が参院選には出馬できる」ということにでもなれば、石破首相の「衆議院と参議院とで違う対応をするということはございません」という言葉が根底からひっくり返ってしまいます。
すべての元凶である森山幹事長は「いざとなれば石破など俺のひと言で黙らせられる」などと思っているのかもしれませんが、こんなイカサマは絶対に許されません。来年の夏には皆で声をそろえて気持ち良く「さよなら杉田水脈!」と言えるように、今後も自民党のイカサマを厳しく監視して行きたいと思います。
(『きっこのメルマガ』2024年10月16日号より一部抜粋・文中敬称略)
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- 第282号 石破茂はアンパンマンになれるか?/童話から寓話へ/秋の七草/静岡と六ペンス(10/9)
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