日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』。今回ご紹介しているのは、中国の自動車メーカーが「海外進出」を相次いで発表している件について。なぜ、泡沫メーカーが中国から脱出しているのか? その理由を詳しく紹介しています。
自国の市場では戦えない、中国泡沫メーカーの中国脱出が相次ぐ
中国の自動車メーカーが相次いで海外進出を発表している。
一つは吉祥(JOYFUL)でタイやシンガポールへ、もう一つは睿藍(Livan)でスペインへ。
中国の自動車業界に詳しい人でも知らないであろうこれらメーカーの海外展開は、中国ではどうにもならないため、という要素が強いと思われる。
今もすでに起きているが、こうした泡沫メーカーの中国脱出、海外展開が今後も加速していきそう。
そして、普通に考えれば成功するはずもなく、日系のシェアにはあまり影響ないと思われるが、間接的な影響、現地自動車市場に混乱だけもたらしそう。
LCCの吉祥航空
JOYFULは自動車メーカーとしてではなく、格安航空会社(LCC)の吉祥航空で有名。
吉祥航空の親会社である均瑶(JY)集団は以前までに、破綻しかけていた中国新興の雲度(YUDU)を買収、自動車業界に参入していた。
現在も雲度、あるいは吉祥雲度のブランドで展開しているはずだと思っていたのに今回、JOYFULという単独名称で登場してきた。
調べてみると、確かに雲度とは別に、吉祥でも展開し始めているようだ。
コンパクトセダンBEV?
今回タイやシンガポールで発表したのは、そのJOYFULブランドとしては初弾となる「JY AIR」。
「JY AIR」は今回のリリースでも、中国のサイト上でも、詳細の情報は出ていない。
コンパクトサイズではあるようで、セダンに見え、寧徳時代(CATL)バッテリーを採用している、ということであるし、YUDUの経緯から考えてもBEVなのだろう。
プレスリリースでは、タイやシンガポールでの発表は大盛況、を謳っているが、実際にはどうなるか。
また、YUDUとしてはすでに欧州などへの輸出を開始している、ともしている。
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GeelyのMapleとLifan
Livanは、吉利(Geely)系の自動車メーカー。
もともとGeelyが楓葉(Maple)という新ブランドを展開していたところ、経営危機に陥っていた重慶の力帆(Lifan)の再建を託されたようで、MapleとLifanを統合してできたのがLivan。
MapleはGeelyのバッテリー交換BEVを担い、実際にタクシー/配車車両として供給を始めていたが、Livanもそれを引き継ぎ、現在も「Maple」を冠する車種をラインナップしている。
また、Livanをスタートさせてから、Livanを冠する車種もリリースし始めている。
ガソリン車の小型SUV
今回、スペインで展開を開始したのもLivan X3 PROというもの。
どんな車なのか確認すると、何とガソリン車であり、全長4000mm程度の小さなSUV。
スペイン展開開始のCheryもそうだが、中国勢だからと言ってすべてが新エネルギー車(NEV)とは限らない、という新たな事例になった。
Livan X3 PROは中国において、最高グレードでも9万元(約180万円)を越えない格安ガソリン車であり、これをスペインに投入する。
スペインにすでに11店舗を構え、今後も15店舗を新規にオープンしていく、「欧州の消費者に全く新たなモビリティ体験を提供する」とはしているが。
日系シェアに影響はないが
日本でも、中国勢の海外進出によって、特に東南アジアで日系のシェアが侵食されている、と話題になっている。
確かにBYDのタイにおける展開など、脅威になっている面もあるが、中国市場ではもはや勝負にならない、という泡沫メーカーの中国脱出という側面が大きいことには留意が必要。
いくら自動運転技術が進もうとも、自動車は人の命を預かるもの、という位置付けに変化はない中で、よく分からないメーカーがどんどん各国市場に進出。
現地の消費者に簡単には受け入れられないとは思われるものの、各国市場・業界の混乱はある程度予想され、リスク要因ではありそう。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/Wi9ZClsHo3VsU6G__vcqlg
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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