努力義務しか課されない極めて甘いいじめ防止対策推進法
少し話は変わるが、私の本業は探偵である。この探偵は「探偵の業務の適正化に関する法律」という法令がある。各業にある業法の1つで、消費者被害が未だに多い探偵業を規制し監督庁が業務や業者の実態を把握するための規制法であり、罰則も業務停止などの処分もある厳しい法で、「探偵業法」と呼ばれている。私は、この議員立法である探偵業法を作った面々から、どういう経緯で作ったのか?など詳しい話を直接聞いているが、とても印象に残ったのは、最大の業界団体理事らと彼らが面談したときの話だ。
団体理事らは業法ができることで、業種としての方の裏付けが欲しかったと同時に資格試験を作って、天下りを引き受けて自分たちはなり上がる心づもりがあったそうだ。一方で、立法側と警察サイドは、業法がない段階では業者の数も不明瞭で、年間1,000件以上の消費者被害が起きて、やりたい放題になっている現状打破のために、業界団体としてどう対策をしようと思っているのかなど問題解決のために面談を設けた。
しかし、探偵業の団体理事らは、警察幹部らとの面談の際に、コーヒーカップとソーサーの間にお札を挟んで出してきたという。
議員立法の中心ともなった現在国会議員、当時は確か警察官僚だった方は、その体験を私にこう語った。
「こいつらダメだ。根っこから腐ってやがる。と思ったね」
実際、平成19年から始まった探偵業法によって、それ以前は5万社あると言われていた探偵業者は、5,000事業所程度であるとわかり、暴力団関係者なども複数いたことがわかっている。まあ、私はそうした事業者に監禁されたりしたから、よくわかっているし、当時の団体の偉い人たちが、私が業界改善のために必死で駆け回っていた時、慰安旅行にコンパニオンを何人呼ぶかで喧嘩をしていたことも知っているから、生き証人としてだいたい起きていたことは知っている。
さて、これは探偵業界の一例だ。
何が言いたいのかいえば、民間事業における業法ならば、懲役刑付きの罰則や事業廃止などの処分と言った厳しい規制がありきであって、努力義務しかないいじめ防止対策推進法はそうした面では、極めて甘いということだ。
さすがに、教育関係の人らが、馬鹿丸出しで、コーヒーカップとソーサーの間にお札を入れてくるとは思えないが、政治に関しては一種の票田となっていたり、出身の立法側の議員も多く、世間ではよく知られていない任意の団体が多数存在し、資金源ともなっているような環境がすでにできていることから、立法側、官庁側に働きかけることは、テクニカルにできるだろう。が、やっていることは馬鹿丸出しの、コーヒーカップとソーサーの間にお札を挟むと同じである。
世間一般は知らないだろうとタカをくくっているかもしれないが、世間一般は馬鹿ではない。オールドメディアが衰退し、多くの発信の機会がある現代においては、想像より早くメッキがはがれているのだ。
そうした中で、いじめ問題の被害当事者になったり、被害者となった、その支援をしたことがあるなど良識ある経験者は皆前述の立法議員と同様の感想もっている。
神奈川県の再調査をやった調査会も同様だろう。
「こいつらダメだ。根っこから腐ってやがる」
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ