毎年14億6165万円が予算計上される「内閣官房機密費」。外交交渉や情報収集、要人接待など日本の国益をはかるために使われるはずのこの金を、歴代政権が「ポケットマネー」として飲み食いや選挙対策などに流用してきたことはいまや公然の秘密となっている。なぜこのような不正が見逃され続けるのか?元全国紙社会部記者の新 恭氏が解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:商品券問題で露呈。首相のポケットマネー化した官房機密費
ドケチで有名な石破さん、近ごろ気前がいいようで
年間14億円もが国庫から支出される内閣官房機密費は本来、国益をはかるための外交交渉や情報収集、要人接待のために領収書なしで使える現ナマだ。
それを受け取る官房長官は、官邸内の金庫で管理し、必要に応じて使ったり配ったりする。総理大臣には月に1000万円渡していたと証言した元官房長官もいる。
会計検査院の調査がなく、使途の説明を求められない。私的に流用しても、外部にはわからない。実際には首相や官房長官が好き勝手に使ってきたというのが、いわば世間の定説といえる。
石破首相が首相公邸での食事会に国会議員15人を招き、それぞれ10万円の商品券を配ったという一件について、首相は「会食のお土産代わりに、ご家族へのねぎらいなどの観点から、ポケットマネーで用意した」と語った。「長年、人付き合いが悪い、ケチだねとずっと言われてきた。それを気にする部分が相当あった」。哀感を漂わせ、思い切って自腹を切ったかのように説明を加えた。
国民の税金を「ポケットマネー」にするカラクリ
だが、吝嗇家で知られる石破氏がそんなことしないだろう、資金は官房機密費から出ているのではないかという疑念の声がかまびすしい。
むろん、そう考えるほうに道理がある。おカネに色はつけられない。いったん首相が受け取った機密費という名の現金は、首相のフトコロで混然一体となる。
食事会での商品券配布は慣例化していたというから、その費用負担のあり方もいつも通りだったはずで、歴代の首相にならって官房機密費でまかなったと考えるのが自然だ。
国民の税金を原資とする官房機密費を政治活動に利用することが不適切なのは言うまでもない。
3月28日の参院予算委員会で、立憲民主党の杉尾秀哉議員が「官房機密費だってポケットマネーになる。総理の言うポケットマネーはこれではないか」と質した時、石破首相は「官房機密費はポケットマネーではない。決めつけられてもそうですとは言えない」と答えたが、いかにも歯切れが悪い。
石破政権が、これまでの政権と同じく、月に1億円近い官房機密費を使っているのは「しんぶん赤旗」が情報公開請求した「政策推進費受払簿」の開示資料によって明らかになっている。それによると、総選挙が公示された昨年10月15日から投票日の27日までの期間を含めた24日間で9200万円を使い切っていた。(次ページに続く)