元お天気お姉さんも失笑。猛暑の2024年夏に「熱中症特別警戒アラート」を一度も発令しなかった環境省の“新たな発見”

Tokyo,,Japan-,July,13,,2023,:,People,Walking,On,Crosswalk
 

「100年に一度の猛暑」と言われ、事実、観測史上最も暑い夏を記録した2024年。しかしながら環境省は、国民の命を守る「熱中症特別警戒アラート」を一度も発令することはありませんでした。この事態を疑問視するのは、気象予報士として『ニュースステーション』のお天気キャスターを務めていた健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、熱中症特別警戒アラートが出されなかった背景を解説するとともに、その運用基準の早急な見直しを訴えています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:発令されない警報

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

システムの問題にあらず。猛暑の2024年夏に一度も発令されなかった「警報」

笑うに笑えない事態が、またもや明らかになりました。

昨年から運用が始まった「熱中症特別警戒アラート」が、あれだけの猛暑に列島が襲われたにも関わらず、一度も発表されなかったというのです。

「熱中症特別警戒アラート」は、災害級の暑さに備え予防行動を促すことを目的に設置されました。都道府県内の全地点における翌日の「暑さ指数」が35以上と予想されれば発表されます。

暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)は「気温・湿度・輻射熱」の3つを取り入れた温度指標で、環境省では2006年から情報を提供してきました。

近年は災害級の暑さに見舞われることも多いので、熱中症特別警戒アラートの取り組みを始めたそうです。

ところが、運用がスタートした昨年の夏は、1898年の統計開始以降、観測史上最も暑い夏となったにも関わらず、一度も発令なし。

猛暑が長期間続き、全国で熱中症による救急搬送者数が過去最多を記録したのに、「災害級の暑さに備え予防行動を促す」呼びかけが、一回も行われなかったというのです。

「また、システムの問題か」と思いきや…、なんと高度と温度の関係、コンクリートと芝生の輻射熱の違い、地形による湿度の違い、といった「それ、中学校の理科で習いましたよね?」という知識を全く考慮してなかった。

アラートの発表基準は「暑さ指数」が都道府県内の全ての地点で35以上になると予想された場合のため、標高の差のある都道府県で「発令されにくい」ことくらい、気象専門家ならずとも、ある程度の知識があればわかるはずです。

さらに驚いたのは、環境省は24年4~10月の全国約840地点の特徴を分析し、「各地点と県庁所在地の暑さ指数は、ほとんどの場合で似た傾向を示したが、地点間で指数の開きが大きかったところもあった」などと、まるで新たな発見のように説明しています。…申し訳ないけど、失笑してしまいました。

標高が100メートル上がるごとに気温は0.6度下がります。一方で、山に風が吹きつけた場合、空気が山脈の反対側のふもと吹き降りる際100メートルに1度上がります。フェーン現象です。

風上側の気温が25℃だった場合、高さ2,000メートルの山の頂上では、風上側の平地より12℃すずしい13℃になります。山の頂上からしゃ面にそって山を下りていくときには、山の頂上で13℃だった空気が、100メートルに1度上がりますから20℃も暑くなる。風下側の平地では33℃にもなってしまうのです。

…この理屈、わかりますよね?

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