ある中小企業の部長さんが話してくれました。
入社3ヶ月目の新入社員は表情が曇りがちになり、ミスも増えてきた。
面談で理由を尋ねたところ、返ってきた言葉はこうでした。
「毎日“頑張れよ”って言われるたびに、自分はまだ足りないって言われてる気がして、どんどん苦しくなってきたんです」
こう聞いて、部長さんはハッとしたそうです。
そして、次の日からは「頑張れ」ではなく、「お、ここまで来たんだね」「今の進み方いい感じだね」と“認める言葉”に切り替えた。
すると社員の表情は明るくなり、結果的に離職も防げたとのこと。
落語家・古今亭志ん生の噺に、こんな一節があります。神輿がどうにも動かなくなったときに「頑張れ!」と言うんだそうで。
つまり、もうこれ以上、どうにもこうにもならないときに使う言葉なんですね。
言葉は習慣で出るものですが、慎重に、丁寧に、選びたい。
いつもそう思っているのに、咄嗟の場面では、それができなかった自分。
「頑張って」ではなく、
「よくやってるね」
「着実に進んでるね」
「任せて安心だったよ」
こうした“今”を認める言葉が、信頼を育て、成長を促し、風通しのいいコミュニケーションにつながるのでしょう。
自分の言葉選びのダメさにがっくりしながら、そんなことを思いました。
そして、もしかしたら、どんな言葉よりもにっこり笑って、ただボールを返してあげることが一番良かったのかもしれない、とも思いました。
キャッチボールの少年に気付かされた出来事でした。
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