プーチンの協力なしでは「崩壊」確実なトランプ米国。ウクライナ戦争終結を遠ざける大国の“優柔不断”という大問題

Tashkent,,Uzbekistan,,27,May,,2024.,Russian,President,Vladimir,Putin,During
 

5月28日にロシアのラブロフ外相が「6月2日のウクライナとの直接交渉」を提案したものの、依然として武力攻撃の手を緩めることがないプーチン政権。終わりの見えない状況が続くウクライナ戦争ですが、その大きな要因はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、背後に「プーチン大統領の政治的ゴール」と「トランプ政権の優柔不断」の2つがあるとして、各々について詳しく解説。さらに何が世界の紛争解決の道を閉ざしているのかについて考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:留まることを知らない野望と危険な遊び─デリケートな安定が守ってきた平和の終焉?!

エスカレートするプーチンの野望と世界の分断。とどまることを知らない危険な遊び

「一般市民の安寧と当たり前に保証されている安全と権利が、政治的な意図によって踏みにじられている」

これは3年以上続き解決の糸口が見えてこないロシア・ウクライナ戦争にも、イスラエルによる自国の安全保障確保のための戦いと暴走にも、インドとパキスタンの間で長年続くカシミール地方を巡る領有権争いにも、そしてミャンマー、スーダン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国などで続く内戦(もしくは地域戦争)を見ても、共通する特徴です。

これらの紛争で戦時下にいる一般市民にとって、報道や政治リーダーたちが掲げるような主義主張、プライドなどは恐らく大事ではなく、当たり前に安心して暮らせる毎日の確保が最優先なはずですが、複雑に渦巻く政治的な意図によって、その毎日は奪われ続けています。

(中略)

5月16日に3年ぶりにロシアとウクライナが、トルコ政府の仲介で、直接協議の場に臨みましたが、そこで私たちが見せつけられたのが、ロシアの停戦に対するモチベーションの低さと、ウクライナおよび欧米諸国の窮地に付け込んだ、超高めの条件提示による協議の破壊でした。

トランプ政権がロシアとウクライナの戦争の停戦にむけた仲介を行う際に提示した“超ロシア寄り“と散々非難された条件をさらに上回る一方的な交渉姿勢は、かつて旧ソ連時代の交渉戦術そのまま(すさまじく難しい条件を一方的に突きつけて、あとは黙り込み、協議には応じず、相手が自ら譲歩しだすのをいつまでも待ち続ける戦術)で、その内容はウクライナ東南部4州(ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポロージェ)の完全掌握とクリミアのロシア編入の国際法での保障、ウクライナの非武装化とNATO加盟交渉の永久凍結、反ナチス法を制定し、ゼレンスキー大統領の退陣を求めるという一方的な条件の押し付けになっています。

またそれに先立ってウクライナと欧米諸国が呼びかけていた5月12日からの30日間の完全停戦の求めは完全に無視し、バチカン市国のレオ14世の呼びかけによってバチカンで行う協議も拒絶し(ラブロフ外相が「ロシアは国教会の国であり、カトリックの総本山で協議を行うことはない」と発言)、直接協議が物別れに終わると、一気にウクライナに対する攻勢を強め、侵攻以来最大級の攻撃をウクライナ全土に対して実施し(弾道ミサイル70発ほどと、900基にわたる無人ドローンによる同時攻撃など)、さらなる破壊を重ねています。

その背後にあるのが、決して消えることがないプーチン大統領の政治的なゴールであり、政治的な意図ですが、それはウクライナの属国化を通じて、まずベラルーシと合わせて旧ソ連のコアを再構築し、その後は、ロシアを真っ先に裏切ったバルト三国を陥れようとしているように思われます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • プーチンの協力なしでは「崩壊」確実なトランプ米国。ウクライナ戦争終結を遠ざける大国の“優柔不断”という大問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け