ミック・ジャガーの元パートナーの悲痛な訴え
ここまでの一連の状況を見てみて分かるのは、今、世界は緊張の鎮静化に向かうのではなく、緊張が同時進行的に各地域で高まり、どこかの緊張がはじければ、すべてに飛び火するという状況が生まれていることです。
先述の多国間調停イニシアティブ(これまでの調停グループの活動を強化したもの)がすでに稼働し、調停・仲介はもちろん、予防調停・交渉も行っていますが、正直なところ、まだ解を見いだせずにいます。
この遅々として進まない状況が何を生み出しているかと言えば、残念ながら私たちが忌み嫌うジェノサイド(大量無差別殺戮)の進行であり、“当たり前の毎日”を望む一般市民の悲劇の拡大です。
今週、多国間調停イニシアティブに参加してくれたMs. Bianca Jaggerさん(長年の友人であり、ミック・ジャガー氏の元妻)が、アウシュビッツの強制収容所の様子の写真(1945年)と、2025年のガザの実情を映した写真を並べて、世界の惨状を嘆いた話を紹介して、今週号のコラムを閉じたいと思います。
皆さん、ジェノサイドの定義はご存じでしょうか?
これらの写真を並べてみた時、1945年までにユダヤ人を迫害し、多くの悲劇を生み出したナチスドイツのユダヤ人排斥運動の最たる例であるポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所の悲劇の様子と、ガザ地域という逃げ場のない非常に狭い土地に閉じ込められ(屋根のない監獄と呼ばれる)、イスラエルからの全方向からの攻撃と、パレスチナ人を飢えさせて絶望の中で抹殺しようとしている、ユダヤ人国家イスラエルが行っていることは、何一つ変わらず、どちらもジェノサイドであり、民族浄化の愚かで恐ろしい狂気に満ちた人の行いです。
ある民族、あるグループを根絶やしにし、物理的・精神的に追い込み、人間が考えうるあらゆる残酷な非人道的手段を用いて、イスラエルは今、パレスチナ人をこの地球上から抹殺しようとしています。
私たちがかつてのナチスドイツのユダヤ人に対する蛮行を挙って非難するように、今、国際社会は同じユダヤ人によって行われる民族浄化、ジェノサイドに対して非難を浴びせ、一刻も早くイスラエルにその蛮行を止めさせなくてはならないのですが、残念なことに、世界のリーダーたちは口先だけの非難に留まり、イスラエルの蛮行を食い止めるための策を何ら講じようとしていないのが現状です。
ジェノサイドを実行するイスラエルはもちろん人道に対する罪で裁かれなくてはなりませんが、この悲劇を見て見ぬふりをして何ら策を講じない世界の政治リーダーたちも、人道に対する罪を問われなくてはなりません。
Biancaと初めて出会ったのは、私が紛争調停官としてまだ駆け出しのころで、彼女はボスニア・ヘルツェゴビナにおけるジェノサイドの現状を目撃したのに続き、コソボでのセルビア人とアルバニア人の血で血を洗うような極限の蛮行を世界に訴えかけた頃でした。
それからいろいろな紛争案件の調停で協力してくれ、抜群の発信力と影響力を駆使し、時には多額の資金も惜しみなく提供して、戦後復興のためのプロセス、特にメンタルケアと社会復帰のプロセスを支援してくれました。
今回、久々に直接いろいろと話す機会を与えられ、意見交換と具体的な策を挙げあい、何とか早期の解決を実現できないかと動いているのですが、現実に蔓延するLack of Willingnessが根本的な解決を阻んでいるのが現状です。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ









