プーチンの協力なしでは「崩壊」確実なトランプ米国。ウクライナ戦争終結を遠ざける大国の“優柔不断”という大問題

 

プーチンを必要とするトランプ政権の優柔不断

戦況そのものは現時点ではロシア優位であることは、いろいろな観点から見ても確実で、ロシア国内も戦時経済が好調で、かつ国民の生活レベルも保たれているか改善しているという認識が定着し、かつ徴兵ではなく、プロの傭兵とprisonersを数十万人単位で投入しているという状況も、戦争を国民生活から遠ざけていますが、予定よりも長期化していることで、その正当化には何かしら目立った成果が必要なだけでなく、停戦すると、数十万人単位のprisonersの扱いをどうするのかという策がなく、それが戦後の社会的な不安の拡大に一気に発展しかねず、“停戦できない”という事情もあります。

そして決定的な要因が“ロシアを必要とするトランプ政権の優柔不断”です。

ロシア・ウクライナ戦争の仲介がうまくいかない理由として、トランプ政権・トランプ大統領が進めるイランとの核協議、中東諸国への口利き、そして中国や北朝鮮へのプレッシャーなど、プーチン大統領の協力を必要とする事態が数多くあり、今、ロシアを敵に回すことで、すでに行き詰まり感抜群のトランプ外交が崩壊する恐れが高まるため、基本的にはロシア・ウクライナ戦争に対しては、ロシアにフリーハンドを与えているように見えます。

ゆえに欧州各国とウクライナがロシアに対する制裁の強化を訴えても、トランプ大統領は「ロシアへの制裁が功を奏するとは思えないし、良案だとは考えない」と突き放し、かつ「そろそろ仲介から降りて、2国間の直接的な協議・交渉に解決を委ねないといけない」と一気に距離を取る発言に変わってきていて、よりロシアにとってはおいしい状況が生まれてきているように思われます。

嫌な表現になるかと思いますが、プーチン大統領は完全にトランプ大統領を手なずけ、かつ手玉にとって、自身の宿願成就のために利用しようとしているようにも見えます。

そのようなトランプ大統領の変心に焦っているのが欧州ですが、ついには「アメリカによる核の傘にはもう頼れず、フランス(と英国)の核の傘は欧州全域を防衛するのに足りるか?」という検討がなされ、独自の対ロ安全保障政策と戦略が、口先だけはなく実施に移そうとされていますし、ショルツ前首相の政権でNOを突き付けてきたドイツのタウルス巡航ミサイル(500キロメートル射程)を、メルツ首相がウクライナに供与し、かつロシア領内への攻撃に使用することを容認する旨、発言するに至っています。

一見すると欧州が一枚岩になり、ロシアの脅威に対峙する姿が描かれそうですが、そのタウルスもドイツ国内に600基ほどしかなく、ドイツの国民感情としてはドイツの国家安全保障・防衛のために用いられるべきであり、それをウクライナに渡すことに対して、政治的な支持は得られないと思われますし(この背景には、変わらないゼレンスキー大統領の“くれくれ”姿勢があり、また「~すべき」と頭ごなしに上から物言う姿勢、つまり欧米の代わりにロシアの脅威と戦っているという認識が、ドイツ国民に受け入れづらくなっている)、このタウルスにはアメリカ製の部品が多々使われていることから、トランプ政権のOKなしには勝手にNATO外の国に供与できないルールの存在が、その実現を阻むことが予想されます。

そのような中、欧州各国が出来ることと言えば、実情的には対ウクライナの直接支援よりは、ウクライナ後にロシアが刃を剥いてくると思われるバルト三国の防衛に貢献することと思われ、その一連の動きとして、戦後はじめてドイツ軍が国外(バルト三国のリトアニア)に駐留・常駐するという大きな転換が行われる見込みです。

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