中島聡が憂慮する「AI自給率」が低い日本の未来。先の大戦での石油資源に相似も「国産LLMでは国民の幸福を保証できない」理由とは?

 

「AI自給率」が低い日本の脆弱性、先の大戦前と共通点も

日本は、第二次世界大戦に突入する過程で、他の国からの経済制裁により石油の輸入ができなくなり、窮地に陥りました。海外の石油がなければ社会が成り立たない、という脆弱性を持っていたのです。

海外のAIインフラに頼った社会を作ってしまうと、それと同じ脆弱性ができてしまうのです。

米国は日本の同盟国だからそんな心配をする必要はない、と考える人も多いと思いますが、それはすなわち、戦後から続く、日本の米国に対する従属関係をさらに強固なものにしてしまう(つまり、米国に対する発言力がさらに弱まる)という問題点を持っているのです。

分かりやすく言えば「AI自給率」の問題です。

わが国の言語・文化が海外に支配される恐れ

AIインフラを海外に頼るもう1つの問題は、言語・文化まで海外に支配されてしまう点です。

これからの子供たちは、AIチューターからいろいろな物事を学ぶようになることは明らかですが、それを通して受ける文化的な影響がどれほど大きなものか、私たちはまだ知りません。

日本には、良いもの・悪いものも含めて、独自の価値観・常識がたくさんあります。「悪いことをすると、それはいつか自分に返ってくる」という倫理的なものから、「ご飯を炊く時の水加減はものすごく大切」のような食に関するものまで、千差万別です。

これからの子供たちは、そんな常識の多くを、AIとの会話から学ぶことになるのです。

それが米国のOpenAIが運営するChatGPTで果たして良いのか?そのプロセスを通じて、日本独自の常識や価値観が失われてしまって良いのか?そんな疑問に、私たち大人は答えを見つける責任があるのです。(次ページに続く)

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