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移民の大量受け入れ賛成派から見え隠れする「日本人の嫌がる仕事をさせよう」という差別意識が大問題である理由

我が国でも昨今、大きな争点の一つとなっている移民をめぐる課題。しかし国際関係アナリストの北野幸伯さんは2008年の時点でこの事態を予測しており、事実、彼が当時出版した書籍にもその「予言」が記されています。そんな北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、日本で移民問題が顕在化することが予見できた理由を紹介。さらにこれ以上の問題深刻化を防ぐための3つの案を提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:移民問題はなぜ起こる?

移民問題はなぜ起こる?

2008年にダイヤモンド社から出版された『隷属国家日本の岐路~今度は中国の天領になるのか?』は「予言の書」として知られています。

※ 新版として、『自立国家日本の創り方』という本が2020年に出されています

この本が出版されたのは2008年9月4日。「アメリカ没落後日本は…」という挑発的な一文から始まります。

この本が出版された11日後の9月15日、「リーマン・ショック」から「100年に1度の大不況」がはじまりました。そして、アメリカは没落。「アメリカ一極時代」は終焉し、「米中二極時代」がスタートしたのです。それで、「タイミングヤバすぎ!」と話題になりました。

この本には、「日本に親中反米政権が誕生する」ことが予測されていました。実際、出版からちょうど一年後の2008年9月、「親中反米」の民主党・鳩山政権が誕生しました。

ところがこの本には、「尖閣問題で日中の対立は激化する」との予測もあった。つまり、「親中政権が生まれても日中の蜜月は長つづきしない」と。そして、2010年尖閣中国漁船衝突事件、2012年尖閣国有化で、日中関係は最悪になったのです。

さらに、この本は長期的予測も的中させています。

たとえば「食糧危機が来る」との予測。2024年、一時米がお店から消えました。2025年、米の価格が2024年比で2倍以上になりました。

もう一つ、「移民が大問題になってくる」とも予測し、そうなってきました。現在、トランプさんを筆頭に、欧米では「移民反対」の政治家、政党が人気になっています。日本でも、「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進しています。なぜ私は、「移民が大問題になってくること」を予測できたのでしょうか?

なぜ移民が大問題になることを予測できたのか?

私が予測できた最大の理由は、モスクワで見てきた光景です。

モスクワは寒く、しばしば大雪が降ります。それで、雪かきするのが、とても重要です。雪の日、家を出ると、そこには雪かきをしているたくさんの男性の姿がありました。しかし、その中に白人はいませんでした。では、誰が雪かきをしているかというと、ウズベキスタン人、キルギス人、タジキスタン人など、中央アジアの人たちでした。

建設現場を見ると、ここにも白人はいませんでした。いえ、現場監督は白人(ロシア人)ですが、実際に肉体労働をしているのは、これも中央アジアの人たちでした。

ロシア人のほとんどは、中央アジアの移民たちと仲良く暮らしていました。しかし、一部のロシア人は、「中央アジアの連中が俺たちから仕事を奪っている!」と主張し始めました。

一時期モスクワでは、スキンヘッドの極右集団が大暴れし、外国人を無差別に襲撃、殺したりしていました。ちなみに2010年、私も襲われて死にかけたことがあります。

当時、テレビでロシア人のサッカーファンの言葉を聞いて愕然としました。彼は、「自分のひいきのチームが負けると、スタジアムの清掃をしている中央アジア人に暴力をふるって、気を紛らわせている!」と語ったのです。

差別を感じている中央アジア人やコーカサスの人たちは、身を守るために結束し、マフィア化していきます。さらに、「不当に安くこき使われている」と感じた人たちは、「麻薬取引」などに手を出していました。ちなみに、ロシアで流通している麻薬は、アフガニスタンから、中央アジア経由でロシアに入ってきます。

ある時、車の洗車場で陽気なタジキスタン人が、話しかけてきました。「俺たちは、朝から晩まで車を洗って、食うのがやっとのお金しか稼げない。でも、友達は麻薬のバイヤーをやってリッチに暮らしている。俺はアラーを信じているから、悪いことをしたくないが、そろそろ限界かもしれない。俺も麻薬の密輸をやって、楽して稼ぎたい」というのです。

私は移民問題が気になりはじめ、調べてみました。すると、欧州のとても多くの国で、ロシア同様の問題が起こっていることがわかりました。「日本でもそのうち大問題になるだろう」と思い、2008年に「隷属国家日本の岐路」の中で、そのことを書いたのです。

問題の根源は「差別的動機」の3K移民受け入れ

なぜ、日本や欧米で移民が大問題になるのでしょうか?私の答えは、「差別的動機で3K移民を大量に入れるから」です。どういうことでしょうか?

移民には、大きく二つの種類があります。一つは、高い専門性、知識、技能などをもった移民です。たとえば、ITスペシャリスト、外国語の先生、経営者、ビジネスマンなど。彼らが社会で大きな問題を起こすことは、ほとんどありません。彼らは、定職に就き、十分な給料をもらい、日本に溶け込んで生きています。

もう一つは、3K移民です。日本や欧米、ロシアは、「自国民がやりたがらない3K(きつい、きたない、危険)労働は、貧しい外国人にやらせればいい」という【差別的動機】で、3K労働移民を大量に受け入れています。雇い主は、最低賃金で、あるいは最低賃金以下で3K移民をこき使います。

そして、どこの国でも、高い技能を持つスペシャリストの移民より、3K移民の数が圧倒的に多いのです。欧米、ロシアの例を調べてみてわかったのは、【差別的動機の3K移民大量受け入れ】が軋轢の最大の原因だということです。

では、どうすべきか?

では、どうすればいいのでしょうか?

1つは、移民に頼らず、自動化、機械化、ロボット化を進めていくことです。

2020~2021年、新型コロナパンデミックで、移民の流れが止まりました。困った企業は、移民に頼らない解決策を考えつきました。

たとえば、セルフレジが急速に普及し始めた。近所のスーパーに行くと、それまでレジのスタッフが30人ぐらい並んでいた。その後セルフレジが普及。セルフレジのやり方を教え、同時に監視するスタッフ一人ですむようになりました。

ファミレスに行くと、注文はテーブルにおいてあるタブレットで行うようになりました。ネコ型ロボットウェイターが、食事を運んできてくれるようになりました。

新型コロナパンデミック前までは、「移民がいなければどうしようもない」と考えていた。ところが、パンデミックで選択がなくなった経営者たちは、「移民なしでもまわる方法」を考えたのです。

近い将来、宅急便は、ロボットが行うようになるでしょう。そして、タクシーも運転手なしの自動運転になっていくでしょう。これは、移民に頼らず、国の技術力が上がっていく、正しい方向性です。

方策の2つ目は、3K移民差別をやめることです。

それでも、自動化、機械化、ロボット化が追いつかない分野もあるでしょう。たとえば、介護や建設現場です。

移民の皆さんが、犯罪に走らないようにするためには、「日本人と同じ条件で働いてもらうこと」が不可欠です。移民の人たちが、「私たちは、日本人と同じ労働条件で同じ賃金をもらっている」と考えていれば、「差別されている」と考えないでしょう。

移民の人たちが、最低賃金以上を受け取り、なおかつ労働時間が守られていること。これが、日本人と移民の軋轢を起こしづらくします。

3つ目。

不法移民や犯罪を起こした移民には、出て行ってもらうことです。

不法移民にもいろいろあります。たとえば、在留許可書の更新を「うっかり忘れてしまった」など。こういう場合は、速やかに更新してもらえばいいでしょう。しかし、正規の手続きを経ず、不法に入ってくる外国人もいます。彼らは即、国外退去させるべきでしょう。

そして、ニュースを見ると、毎日のように外国人犯罪のニュースが報じられています。犯罪を犯した移民は、その内容にもよりますが、基本「出て行ってもらう」のがいいでしょう。

日本の移民比率は、2.2%だそうです。一方アメリカは、15.3%だそうです。こう見ると、日本の移民問題は、「まだはじまったばかり」といえます。日本が欧米の失敗を「反面教師」にしていかなければ、欧米のような「分断された、殺伐とした国」になってしまいます。

私の提案は、

です。

そして、とても大事なことですが、私は「移民をどんどん入れよう!」と主張している人の方が「差別している」と思います。なぜでしょうか?

「移民をどんどん入れよう!」と主張している人たちは、事実上「3K移民をどんどん入れよう!」と主張しているのと変わらないからです。別の言葉でいえば、「たくさん外国人を入れて、日本人が嫌がる仕事をさせましょう!」と主張しているのと変わりません。

もちろん、主張している人たちは、「その通りです!」とはいわないでしょう。ですが、「事実はそういうこと」です。

皆さんは、どう思いますか?

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2025年9月4日号より一部抜粋)

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image by: allnewalbert / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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