生徒を自殺させた教師が、パンを盗んだ教師よりも処罰が軽い現実

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教員への懲戒規定が盛り込まれることを期待されていたいじめ防止対策推進法の改正ですが、素案にあったその規定が不可解な理由で削除され、大きな批判が沸き起こっています。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、様々な例を上げ懲戒規定の必要性を強く訴えています。

それでも教師への懲戒規定は不要というのか

6月26日、国会が閉会となりました。今国会では、いじめ防止対策推進法(いじめ防止法)を改正し、教員への処罰規定を盛り込むことが期待されていたのですが、残念ながら、改正に至りませんでした

昨年末の改正素案には、懲戒規定が盛り込まれていたのですが、4月に公表された、「座長試案」(超党派の国会議員の勉強会の馳浩座長作成の改正案で削除されていました。削除に対し、私たちいじめから子供を守ろうネットワークも反対を表明しておりましたし、いじめで自殺されたお子さんのご遺族等を中心に次々と反対の声がわき起こりました。

昨年末の改正素案には、教職員への懲戒に関して、

  • いじめ防止法に違反した教職員への、懲戒等の基準と手続きを、各地方自治体は定めること(改正素案第24条の2)
  • いじめ防止法に違反した公立学校の教職員を、地方公務員法に基づいて適切に懲戒処にすること(第24条の2の2)

の2つが定められていました。(注)

削除理由を、座長の馳氏は、「屋上屋を架すことになる威圧するような表現は控える」と説明し、教育現場からは、「地方公務員法で懲戒できるのだからいじめ防止法での明文化は不要だ」とか、「現場の萎縮を招く」との反対があったとのことです。さらには、ネット上では、「いじめを放置したと言われたくないのでいじめを隠蔽する教師が増える」という意見も見受けられました。

確かに、今でも、教職員の違法行為は、地方公務員法に基づいて懲戒処分にできます。改正素案「第24条の2の2」の条文は、その当然のことを注意的に記述したものにすぎません。しかし、既にあるのにも関わらず、いじめで自殺するような事案であっても懲戒されないケースも多いのです。「いじめ防止法に盛り込むからこそ教師に対しての抑止力があるのです。

現時点でも、各地の教育委員会は、「体罰」や「セクハラ」、さらには「窃盗」や「飲酒運転」、「無断欠勤」等した場合の懲戒の基準を決めています。「いじめ隠蔽」、「いじめ放置」、「いじめ加担」、「いじめ助長」等での基準を盛り込んでいる自治体は少ないのが現実です。

東京都教育委員会神奈川県教育員会は、「いじめに関しての懲戒の基準を定めています。東京都は、教師から生徒へのいじめや、子供同士のいじめへの教師の加担、助長は、「免職」、「停職」、「減給」、「戒告」のいずれかの処分になるとしています(東京都教育委員会「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」)。神奈川県では、「いじめ」の放置、助長等の不適切な言動等は、「免職」、「停職」または「減給」になると定めています(神奈川県教育委員会「懲戒処分の指針」)。

懲戒について明文化すると、学校現場が「萎縮する」とか、「いじめの隠蔽に走る」との反対意見もあるようですが、現在でも数多くの隠蔽事件が起きており、明文化しようとしまいと、「私たちは隠蔽すると言っているのと同じです。実際に、懲戒処分規定のある自治体の先生方からお話をうかがう機会も多いのですが、現場が「委縮」しているという話題は全く出てきません。

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