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東電株は超長期で大暴騰へ。「脱炭素」は原発再稼働の呪文、経産省の狙いは売却益=山崎和邦

バイデン政権の米国は、トランプが離脱した「パリ協定」に再び戻り、協調主導を狙ってくるだろう。世界が注力する「脱炭素」に関していえば、原発の再稼働は外せない。最終的には超・長期で東電株高に行き着く。

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脱炭素には「原発の再稼働」が必要

4月22日~23日、気候変動に関する首脳会談がオンラインで開催された。主要排出国を集めて温暖化ガスの削減について話し合った。

温暖化対策の国際的枠組みの「パリ協定」からトランプは脱退したが、バイデンはこれに復帰した。脱炭素で国際協調を主導する狙いである。今回のサミット開催こそ「脱炭素と国際協調」に米国が回帰する政権交代の象徴と言って良いであろう。

ここからが考えるところだ。

排出源の3割にのぼるのが発電部門だ。さらにその3割にのぼるのは火力発電だ。そのうち40%が天然ガス、19%が石炭といったCO2排出物だ。それを再生可能エネルギーと原子力発電の拡大で補うことを、2035年「実質ゼロ」の青写真として描いている。

今、最大の排出部門である運輸部門は電気自動車が前面に押し出されて、EV(電気自動車)のブームとなって、それでNYではテスラ株が台風の目になっていた。

しかし、再生可能エネルギーには限界があり、特に海上風力発電は非常に不安定で良質な電源とは言えないようだ。核廃棄物の捨て場所さえ解決すれば、原子力発電に勝るものはない(原発反対を核兵器反対と一緒にするのは、思考停止状態であることは当メルマガで何度も述べた。経済的価値と社会的価値をトレードオフにする思考停止状態の象徴である)。

原発処理排水を海に流している国は多い

東京電力の新潟県にある7基のうちの6号基と7号基は、原子力委員会の検査もパスしている。

廃棄物は、国際基準にクリアした上で海に流すことを決めた。経産省はもちろんその主導権をとった。国際的にも認められている。IAEAは「国際的な基準さえクリアしていれば、それは大変結構なことである」とまで言っている。

そして国際基準をクリアした上で海に流している国は世界中にたくさんある。例えば、フィンランドのオンカロ(地中深く掘った穴に埋める)の廃棄物も、10万年後まで毒は消えないという。10万年後に考古学者が学問的好奇心からこれを掘り起こしたとすれば、毒が拡散されると心配する人もいる。

では訊くが、10万年前のネアンデルタール人が今日のことを考えたかと筆者は言いたい。

Next: 人類の知恵があれば原発に勝てる。投資家が目を付けるべきは



「自然に優しく」という言葉の嘘

人類の知恵は進歩する。筆者に言わせれば、文明とは人類と自然との闘いであった。そして常に人類が勝ってきた。今回のコロナ禍もそうである。攻撃の意思は持っていないが、コロナは生物である。この生物との闘いである。必ず人類が勝つ。700年前の欧州のペストとの闘いも3割の国民が死亡しても、結局は生き残ったのはペスト菌ではなくて人類だった。ニュートンが外出禁止になって紙と鉛筆しかなかったので、万有引力や微積分や宇宙の法則を発見した1665年という年も、ペスト禍で外出禁止だった年だ。結局は人類が勝った。

「自然に優しく」などと平気で言う人がいるが、これは大変な「上から目線」で傲慢な考えだ。本当は自然の方が人類より強い。津波や台風を見ていれば判る。「自然に優しく」などと、したり顔で言うのは、動物園の檻の中の猛獣や管理された自然林を見て、これが野獣だ、これがジャングルだと錯覚している人々の言い分である。自然の中に入ったら人類ほど無能なものはない。

筆者は、長野県下伊那郡で猟銃を持って1シーズンに2~4頭の鹿や猪を撃ってきた。ゴルフとともに長年続けた狩猟の趣味だった。猟銃を持って山野を跋渉すれば判るが、人間ほど無能なものはない。頭脳・聴力・視力・嗅覚・身体能力において猪や鹿にはかなわない。銃を持ってこそ平等になるのだ。銃を持って獣を殺すのは良くないなどと言うのは本当の自然を知らない人だ。

そして、自然の方が人類より強いことは事実であるが、人類には自然現象や野獣に勝る知能を持っているし、知能を分け合って工夫するし、そういう力を持っている。結局は人類が勝ってきた。核廃棄物との闘いも、結局は人類が勝つ。

どういう形で勝つかは判らない。宇宙のゴミとして飛ばしてしまえ、などと筆者は無知だったからそういうことを言ったこともある。ところが、1キロのものを宇宙に飛ばすのに何億円もかかるのだという。最初に宇宙に出たソ連のガガーリン少佐は、スラブ民族に人には珍しく体重50キロの小男だったという。そのぐらい宇宙にものを飛ばしてしまうことは費用がかかるらしい。

だが、これもやがて人類が勝つ。宇宙のゴミとして飛ばすとか、あるいは月世界に各国ごとに借地権を設定して、月面に放棄するとか、そのようなことができる日が来る。月面に人類が着陸して歩いた時から、既に52年を経た。結局は人類が勝つ。

文明は人類と自然との闘いであったが、結局は人類が勝ってきたことを思えば、経産省は東京電力の筆頭株主である。柏崎市長も原発推進派が昨年当選した。村長も原発推進派が当選した。県知事だけが反対している。来年は県知事選挙がある。

経産省が狙っているのは東電株の売却益

経産省は原発賛成派を当選させたい。経産省が東京電力の筆頭株主であるが(49%の筆頭株主の名義は原子力損害賠償支援機構)この取得価格は平均300円だという。これは確かな筋からの話だ。半ば公表済みだ。

経産相では株価1,500円で売却すれば、核廃棄物の処理の全部を東電株売却益で出るという計算をしている。これも確かな筋の話である。柏崎にある7基の原発装置のうちの6号基と7号基が作動しただけで、東京電力の経常利益は2000億円上乗せになる。つまり、東電は約2倍の経常利益となる。そして原子力委員会は既に6号基・7号基は稼働に合格だと言っている。問題は世論だけである。世論もやがては目覚める。

「脱炭素で協調主導を狙う米国」であるが、この脱炭素の中で排出源の3割弱に上るのは発電部門だ。今はこれに焦点が当たらない。今それを言い出すと世論にまずいと思っているからだ。やがて言い出す時期が来る。これが人類と自然の闘いである。大変な大所高所からものを説く口調で述べたが、本音を述べたまでである。

本稿では1月4日の270円時代の東京電力のことを述べ、1月29日に444円まで行って2,100社ある第一市場の中で上昇率は5番目だった。これは行き過ぎだ。

1ヶ月以内で270円のものが174円幅を上昇するというのは、64%の上昇である。ちょうど黄金分割比を少し超えたところだ。いいところで天井を突いた。黄金分割比だと、発会の270円から言えば62%高は437円のはずだった(270円×1.62≒437円)。だから444円で止まったことは、誠に理屈通りだったのだ。

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そこで長大陰線を引いた時に、本稿では「第1ラウンドは終わった、ひとまずは東電の相場は終わった」と述べたのだが、今から先はメディアが東電のことを悪く言えば言う程、改めて東電を買い直す絶好の機会が近づいてくると見たい。

ちなみに東電は1株当たり純利益は81円。したがって、今の株価収益率は約4倍。一株当たり純資産は1,262円。したがって、PBRは約0.3倍である。PERは約4倍でPBRは約0.3倍。しかも国家が筆頭株主だから潰すはずはない。

経産省は原発部門だけを抽出して別法人をつくり出す案も省内にはある。そのためには、東京電力の時価総額が○兆円であることが望ましいという意見が2018年前半に在った。それを発行株数で割れば一株当たりが900円~1,400円になる。これは2018年に筆者がやった計算であり、東京電力株を当時400円割れと400円近辺を一生懸命に真剣に買った。

そしてその1年内に760円ぐらいが来たから、650円から上は全部売ってしまった。不思議に東京電力の株価は筆者と相性が合う。その頃、読者の一人がセミナーに見えて東電の4万株保有株をいつ・いくらで売ろうかと迷っておられた。「今、ご貴殿が考えるべきことは東電の社内の事ではなく、自分の心を決めることです」と筆者は生意気なことを言ったが、その方から「700円を超えてところで全部売り抜けた」とメールをもらった。肝心なことは自分の心だ。利益も損も自分の胸の中にある。

Next: パリ協定に原発は組み込まれているはずだ



原発の再稼働はパリ協定に組み込まれている

福井県も原発3基が再稼働を決めた。これは関西電力という個別銘柄別の話ではなく、日本国全体の自然環境問題に直接影響する

福井県の3基が再稼働すれば、温暖化ガスの排出抑制は0.7%抑制する効果があるという。故に特定電力会社の収益に関するだけの話ではない。日本国の環境問題に関する話だ。原発を稼働させるには当該市町村・当該県議会・当該県知事の同意が必要である。福井県は28日にその必須条件をすべてクリアしたと発表した。

国内に60基あった原発のうち、再稼働したのは9基しかない。33基が現存する。24基は廃炉となっている。健全な世論(何が健全かは立場によって異なるが、社会的価値と経済的価値をトレードオフさせるような思考停止状態から抜けることだ)を旺盛にして、脱炭素を推進させることは「パリ協定」の延長線上にある問題である。

そして33基が全部稼働すれば、大風呂敷を広げた温暖化抑制の希望的請願は可能性に近づく。

東電新社長が背負う重い責任

折しも東京電力の次期会長に小林喜光氏の就任を東電が決めた(正式には株主総会の承認が要る)。東電は企業ガバナンスが緩み、危機感が欠けた今の状態では「茹でガエルの状態」だ(日経新聞4月29日版)。地球温暖化などの社会問題では「今さえよければ」という危機感の欠如した状態に小林氏は警鐘を鳴らし、「茹でガエルにはヘビが必要だ」と繰り返していたという。

小林氏は2007年、三菱ケミカルの社長就任直後に、事故や不祥事が相次ぎ、発生する状況に強い危機感を抱き、事業撤退と企業買収を進めた。そして成功し、2015年~19年には経済同友会の代表幹事を務めた。

このままでは会社がつぶれるという危機感を当時抱いた。小林新社長は脱炭素の実現に向けて技術革新を進める。小林体制が背負う責任は重い。既述したが、経産省のある官僚は「小林新社長は火中の栗を拾うどころか、拾い切れないほどの栗があるはずだ」と言ったという。

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(2)商品市況の高騰を追い風にしたオールドエコノミー株が何年ぶりかの新高値
(3)NYでハイテク株が売られる理由と物色の矛先について
(4)NY、「カラバコ」上場にSECが強烈な規制──バブル期の最たる現象
(5)当面の市況
(6)決算発表が本格化すると市場の顔は変わる
(7)ワクチン接種の最後進国たる日本の株
(8)日経平均の「下値限界2万8000円」という説
(9)中長期の見方:“Sell in May.”
(10)バフェット氏、米経済回復の継続を見込む

■ 第2部:中長期の見方
(1)「オリンピック・パラリンピックはやるか?」筆者はやると思う
(2)五輪は決行される。そして失敗する。首相はバッハ会長が決めると言い、バッハは日本国民が決めるという。止められるのは小池百合子の目立ちたがり屋の行動あるのみ
(3)「世界の実験国(被実験国?)たる日本」
(4)習近平にとってトランプより遥かに怖いバイデン 
(5)対中包囲網づくり
(6)バイデン政権は売買益に厚く課税する方針、レーガン以降初めてのことに着手
(7)「相場の強さを証明したアルケゴス事件」
(8)FRBの使命に重大な、かつ余計なものが一つ加わった。そこで「FRBを悩ますトリレンマ」というものが生じた
(9)「今はバブルか?」

■ 第3部:株価は景気循環に先行し、経済の実相に先行する。
その株価を見て景気・経済を読み、先回りして成功した著名な10の事例
(1)代表銘柄の天井圏を見て売り抜けて成功した田中貴金属創業者の事例 
(2)投機家の株式投機の利益が日本の電力会社を生んだ福澤桃介の好事例 
(3)NY株株価の異常高騰を見て、世界恐慌を事前に避け得た4人の著名人の事例 
(4)世界恐慌を事前に避け得た4人の著名人-事例その2 
(5)世界恐慌を事前に避け得た4人の著名人-事例その3 
(6)世界恐慌を事前に避け得た4人の著名人-事例その4 
(7)ベンチャーキャピタルの先進国のアメリカの株価を見て学んだ故今原禎治元ジャフコ社長の事例
(8)「含意」を重視して成功した企業創業者の事例 
(9)極東証券創業社長の事例 
(10)合同証券創業社長の事例 

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image by:Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

山崎和邦 週報『投機の流儀』』より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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