ビットコインを中心に仮想通貨の相場が荒れに荒れています。通貨に必須の「信用」という概念が欠落していることが原因と言えそうです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2021年5月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
30%下落からの30%上昇、ビットコインは大荒れ
ビットコイン価格が大荒れです。一時30%下落、その後再び30%上昇と、わけのわからない値動きでした。
2020年初めに7,000ドル近辺にいたビットコイン、今年4月には64,829ドルの高値を付けます。高値を付けた後は不安定な動きが続き、5月19日は38,390ドル。安値は30,202ドルでした。
上値追いのゲームが続いたのち、テスラCEOイーロン・マスク氏の不規則発言に振り回されます。また今週に入って、中国からビットコイン取引を制限する旨の発言が流れ地合いは悪化。
5月19日に至っては、暗号資産(仮想通貨)の大手取引業者のシステムが一時停止に陥り、パニック的な下げに繋がりました。
仮想通貨に欠落した「信用」という概念
新しい商品に付き物とは言いながら、適正な水準を見出すことが難しい中で、思惑だけが支配します。そこに秩序はありません。
おカネ・通貨は、「信用」があって初めて役に立ちます。その辺にある葉っぱだって、「葉っぱ1枚100円分」と複数の人が認めれば、葉っぱに100円の価値が生まれます。
ビットコインも基本一緒です。買い上げ競争が成立してきたのも、今の葉っぱの理屈と同じ。「1ビットコインなら4万ドル」と売り手と買い手が納得すれば、ビットコインに4万ドルの価値が生まれます。
問題の1つは、昨日のように売り手が「3.5万ドルでも良いんだけど」と買い手を求めた時、誰も応じてくれないどころか、取引所の役割を果たす業者自体が活動停止へと簡単に陥ってしまうところにあります。
スーパーで1,000円札を出しても、レジ担当の人にいきなり「何これ?」と拒否されてしまうようなものです。
マスク氏の存在はビットコインの「信用」を高める役割を果たしました。だからこその価格高騰です。不規則発言をして「信用」が下がり、価格が下落したのも、「信用」度を考えるとしっくり来ます。
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円は安定。日本政府の信用度も捨てたものじゃない
改めて、おカネの「信用」を高めるには権威が不可欠だと痛感させられます。
日本円なら、日本政府や財務省・日本銀行。米ドルなら、米国政府やFed(米連銀)の存在感です。
長年使われれば、それだけで通貨の「信用」は上がるので、すべて国の権威に「信用」を結び付けるのは難しいのですけれど。
それでも、権威を求めるビットコインの姿をみれば、権威としての日本政府の存在も捨てたもんじゃないと再考するところです。
まとめ
・ビットコイン、一時30%下落、その後30%戻すなど乱高下
・おカネが持つべき「信用」の弱さをビットコインは露呈した形
・円が安定ということは、「日本政府も捨てたもんじゃない」と言えたり言えなかったり
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- ビットコイン乱高下に学ぶ、おカネの「信用」(5/20)
- 「価格上昇により生産減」が増えて来ました(5/19)
- GACKTもイーロン・マスクも少しくらい…(5/18)
- 気が付けば、動かず米国2年債(5/17)
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『高梨彰『しん・古今東西』』(2021年5月20日)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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