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なぜ趣味の世界だったトレーディングカードやコインが投資対象に?金融商品化が進む実物資産=田中徹郎

趣味として一部の好事家が集めていたコイン、ウイスキー、腕時計まで、最近は投資の対象になっています。なぜこのような変化が生まれたのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

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プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

趣味の対象だったコイン、ウイスキー、腕時計などが投資対象に

1961年生まれの僕がまだ小さかったころ、実物資産の中でも金や不動産は、すでに一般的な投資の対象だった記憶があります。

でも、例えば同じ実物資産でも、宝石や美術品、ましてやコインやウイスキー、腕時計などは、投資という概念からかけ離れた、一部の好事家による趣味の対象だったように思います。

もちろん僕がまだ子どもで無知だったせいもありますが、やはり当時。このような実物資産が投資対象になる環境は、まだ整っていなかったのではないでしょうか。

ここ数年このような状況に変化が生まれ、コイン、ワイン、ウイスキー、腕時計などが、マスコミで投資の対象として取り上げられる機会が徐々に増えてきたように思います。

以前は趣味の対象と考えられてきたこれらの資産が、投資対象になりうるとの理解が徐々に進んできたといえるでしょう。

では、なぜこのような変化が生まれたのでしょう。今回はこの点について、少し考えてみたいと思います。

「マネーの過剰供給」で投資対象が次々と拡大

まず、外部環境の変化からです。

2008年に起きたリーマン・ショックと、今回のコロナ・ショック。震源地も違えば要因も違いますが、共通しているのは当局の対応です。2回とも先進国を中心に大量の紙幣が印刷され、世界的なマネーの過剰状態を招きました。

もはや紙幣の大量印刷は、危機対応の定番になってしまったかのようで、この状況は必然的に紙幣の対極にある実物資産への注目を高めました。

つまり紙幣の価値の希薄化によって、今まで趣味の対象だった実物資産を、私たちは投資の対象として意識し始めたといえるでしょう。

これが実物資産が注目される外部要因だとすれば、実物資産の内側で起きた変化もあります。

ある資産を多くの人が投資対象として売ったり買ったりするためには、以下の条件が必要だと僕は思います。

1. その資産の価値を多くの参加者が容易に判断できること
2. 資産を売買できる交換所があり、なおかつ一定の取引量があること

Next: なぜコインに投資家たちが熱視線?条件がそろったコイン市場



なぜコインに投資家たちが熱視線?

まず(1)の「その資産の価値を多くの参加者が容易に判断できること」についてです。

以前は、1枚ずつ実際に目で見て、コインの状態を判断せざるをえませんでした。それが今では、多くのコインがすでに鑑定会社のケースに入っています。真贋はもちろん、コインの状態を含めすでに鑑定済みですので、特に専門的な知識がなくても、コインの価値をある程度判断できるようになりました。

次に(2)の「資産を売買できる交換所があり、なおかつ一定の取引量があること」についてです。

以前はコインの売買は個人間や個人とコイン商の間というように、1対1で行われるのが常でした。それが今では、オークションが大きな役割を担うようになってきました。オークションは世界中で毎週のように開かれており、買い手も売り手も容易に売買ができるようになったのです。

もちろん株や債券のようにリアルタイムというわけにはいきませんが、それでも以前と比べると、格段に短い時間で売買が完了するようになりました。

コイン市場に残る課題

もちろん(1)にしても(2)にしても完全ではなく、今でもさまざまな問題はあります。

たとえば、鑑定会社の評価です。鑑定会社は一般に1から70までの数字でコインの状態を評価しますが、あくまでその数字は鑑定会社による主観に基づいて行われたものですし、鑑定人によってバラつきも生じます。

また、流動性についても問題がないわけではありません。週に1度オークションがあるといっても、1度に出品されるコインの点数は数千枚ほど、金額にしてせいぜい数億円どまりです。

一方で株や債券は世界中で24時間売買できますし、売買高という点では比較の対象にすらなりません。

このようにまだまだ発展途上にあるものの、少なくともこの20年という時間軸で見れば、上記の2点で、コインの金融商品化が進んできたといっていでしょう。

Next: コインだけじゃない実物資産の金融商品化。次に来る実物資産は?



コインだけじゃない実物資産の金融商品化

これはコインだけのお話ではありません。

僕は先に挙げた実物資産のなかでもコインは最も金融資産化が進んでいると思いますが、腕時計やウイスキー、ワインなどを対象にしたオークションも近年増えてきたように思います。

グレーディングという点ではコインに比べ出遅れてはいますが、ウイスキーや腕時計も、そのうち鑑定会社による鑑定/格付けが一般的になるに違いありません。

すでにトレーディング・カードやディズニーのヴィンテージ原画、時代性のあるアニメ本などは、アメリカの大手鑑定会社CGC社による鑑定が一般化しつつあります。

近い将来コインに続き、腕時計やウイスキー、ワインなど他の実物資産も、金融商品化が進むのではないでしょうか。AIやITの進化によって鑑定技術は向上するでしょうし、ネットの大容量化によって売買もさらに容易になると僕は思います。

外部環境を見ても、危機の度に紙幣が大量に印刷される構図に変化があるとは僕には思えません。

このようなことから実物資産投資は「オルタナティブ投資(代替投資)」として定着すると思いますし、市場規模もさらに拡大するのではないでしょうか。

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image by:Triff / Shutterstock.com

一緒に歩もう!小富豪への道』(2021年7月8日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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