貯金しても利息がほとんど付かない現在、投資情報がたくさん流れる中で「貯金だけでいいのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。そこで今回は、貯金のメリット・デメリットを考えながら、自分にあったお金の貯め方・増やし方を見つけるお手伝いをしたいと思います。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
貯金だけで大丈夫か?
資産を運用するには、以下のような方法があります。
・銀行にお金を預ける
・株式や投資信託などの金融商品で運用する
・不動産で運用する
この中で多くの方になじみのあるのは、銀行にお金を預ける方法でしょう。
そこで今回は、資産運用をするのに、言いかえれば、お金を貯めていく方法として「銀行に預金するだけ良い」という立場で考えてみることしました。
貯金してもメリットと言えるほどの利息はつかない
まず、銀行にお金を預けるメリットを考えてみます。
すでに20年くらい前になりますが、2000年頃までは、銀行にお金を預ければ黙っていてもお金が働いてくれました。当時の利息は高い時には、銀行によっては年利6.0%くらいあり、預けておくだけで、利息分の収益を得ることができたのです。
その後は年々、利率が低下。現在の銀行にお金を預けるときの利率は、銀行ごとに違いますが、普通預金では年利0.001%くらい、定期預金では年利0.002%くらいです。
各銀行が展開するキャンペーンの時に預けて優遇金利が適用されたとしても、その恩恵として貯まる金額はごくわずか。それが預金するメリットといえる金額なのか、疑問を持つところです。
従って、現在の金利では、銀行にお金を預けるメリットがあるとは言い難いところがあります。
メリットは元本が1,000万円まで保護されること
ただ、金利の面以外で、銀行に自分のお金を預けるメリットはあります。
「ペイオフ」といって、万が一、銀行が破たんしたとき、ひとつの金融機関(銀行)ごとに預金者ひとり当たり元本1,000万円まで+銀行の破綻日までの利息等が保護される制度があります。これによって、私たちの預金は守られているのです。
言いかえれば、各銀行に1,000万円までは預けることで、ご自身のお金(現在では、利息はほとんど付きませんので元本)が保護されるということです。
ご自宅にタンス預金をしてお金を貯める方法もありますが、その場合、もし盗難の被害にあっても誰も補償してくれません。
しかし、銀行に預けておけば、セキュリティの面では安全と言えます。これらは、銀行に預金するメリットといえます。
Next: 預金にはデメリットも。預ける代わりに投資したらどうなる?
ちりも積もればけっこう貯まる
銀行に毎月5万円ずつ預金をしていけば、(現在利息はほとんど付かないので)単純に足し算をして、1年間で60万円、10年間で600万円、20年間で1,200万円が貯まり、預金額が1,000万円を超えます。
預金の総額がひとつの銀行で1,000万円を超えるようであれば、前項のペイオフの制度で、複数の銀行に分けてお金を貯めていくことになります。
もっとも、ただ闇雲に貯めるのではなく、
・住宅購入の頭金
・子どもの教育資金
・旅行費用
といった目的を持って貯めていって、その目的のために使うことが多いでしょう。使ったら、また次の目標を決めて貯めていく……この循環を繰り返すことで、目的のためにお金を貯めることができます。
そうすることで、まとまったお金が貯まったとしても、使う目的があるので、衝動買いといった無駄に使うことは避けることができるでしょう。
デメリットは「預けても増えない」こと
次に、預金するデメリットです。
現在の預金では利息がほとんどなく、預けた元本の金額が単純に貯まるだけです。株式や投資信託で運用するようには、お金は増えていきません。
ただ、「一定の金額まで元本が保証されていればよい」という方には、預金するデメリットは、銀行が破綻するリスク以外はないのかもしれません。
株式や投資信託で運用する資金の元本は保証されていませんが、預金する資金の元本は一行につき1,000万円まで保護されています。
金融商品で運用したらどうなる
ちなみに、株式や投資信託で運用した場合の収益のシミュレーションをしてみます。
※参考:資産運用シミュレーション – 金融庁
毎月5万円ずつ1年間、年利1%で運用できたとすると、収益が2,758円(+元本60万円)になります。
同様に3%で運用できたとすると、収益が8,319円(+元本60万円)になります。
同様に7%で運用できたとすると、収益が1万9,629円(+元本60万円)になります。
次に、毎月5万円ずつ10年間、年利1%で運用できたとすると、収益が30万7,494円(+元本600万円)になります。
同様に3%で運用できたとすると、収益が98万7,071円(+元本600万円)になります。
同様に7%で運用できたとすると、収益が265万4,240円(+元本600万円)になります。
最後に、毎月5万円ずつ20年間、年利1%で運用できたとすると、収益が127万8,062円(+元本1,200万円)になります。
同様に3%で運用できたとすると、収益が441万5,100円(+元本1,200万円)になります。
同様に7%で運用できたとすると、収益が1,404万6,333円(+元本1,200万円)になります。
※これらの収益には、約20%の税金がかかります。
Next: 期待できる収益と同じ額だけ、損するリスクも存在する
リスクを考える
前項の収益計算を見ると、銀行に預金するよりも金融商品で運用した方が単純に良いと思うかもしれません。しかし、上記で算出した収益は、世の中の景気の動向などによって、収益と同じような金額の損失をもたらすこともあります。
つまり、収益の金額と同額、損をするかもしれないということです。
この収益と損失の額のブレの範囲を「リスク」といいます。
従って、収益が高く見込める金融商品ほど、損失する可能性もあり、ハイリターン(収益)ハイリスクの商品といわれます。
お金をどう貯めるかは自分次第
ここまでお話をしますと、
・ならば銀行の預金だけ貯める
・少しは金融商品に挑戦してみようかな
と、その方の考え方によって意見が分かれることです。
「預金だけで大丈夫」という方には、以下は必要のない話になります。
念のために、金融商品で、資産を増やせる収益を上げるには、収益からの納税額を差し引いても、また損失するリスクを考慮しても、投資する資金が、銀行に預金して貯めた金額を上回る金額になるように運用しなくてはなりません。
従って、相当まとまった資金と運用の知識も必要だということです。お金の貯め方は、その人の考え方と経験を尊重するのが一番です。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年8月11日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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