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今夜の米雇用統計でテーパリング時期が見えてくる。ドル円は強気にロングが吉=ゆきママ

FRB(米連邦準備制度理事会)のメンバーからは、今回発表される8月の雇用統計が良ければ、テーパリング(緩和縮小)へ向けた準備が整うとの声が聞こえてきます。先週のジャクソンホールで、ややドル安に触れた相場が戻していくのか。今日の雇用統計は大注目のイベントとなります。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

相変わらずハト派的だったパウエルFRB議長

タカ派的なFRBメンバーからは、すぐにでもテーパリングを開始するべきといった発言が繰り返される中で迎えた、先週のジャクソンホール(経済シンポジウム)ですが、メンバーを率いるパウエルFRB議長からは、テーパーを急ぐような発言は見られませんでした。

目標とするインフレ水準は達成されたものの、一時的であり、手に負えなくなるようなインフレになる可能性は低いとし、デルタ株のリスクや、やはり雇用が一段と回復したデータを待ちたいとしていました。

一方、市場関係者からは、今回8月分の雇用統計が良好な結果なら、9月21日・22日に予定されるFOMCでテーパーを示唆するという声もあるため、相場の値動きとしては非常に重要なイベントとなります。

個人的には、仮に今回が良かったとしても、10月発表の雇用統計と秋口のコロナの状況を確認したうえでのテーパー示唆になると考えており、9月のFOMCでは地ならしに止まるのではという気もします。

とりあえず、今回の雇用統計が良ければ、再びテーパーを織り込んでドルの買い戻しが進む可能性は高そうです。

デルタ株による感染拡大がノイズ

ワクチン接種の進んだ大都市圏では、さほど問題になっていませんが、接種率の低い南部ではデルタ株が猛威を奮っており、感染者数・入院患者数・死亡者数のいずれも昨年のピークに近づいています。

人口100万人当たりのコロナ新規感染者数の日次推移(7日移動平均)

勢いはやや衰えていて、ピークアウトしたかにも見えますが、これだけ増えれば雇用に影響することは必至で、問題はそれがどの程度になるかということでしょう。

Next: 先行指標のADP雇用報告は衝撃の下振れ、今夜はサプライズか?



ADP雇用報告が衝撃の下振れ

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

上記は先んじて発表された雇用指標の比較です。前回から改善したかのようにも見えますが、失業保険申請件数以外は大きな改善は見られません。

むしろ、ADP社が発表した雇用報告は2ヶ月続けて予想から大きく下振れしています。前回7月分は予想+69.5万人に対し、結果は+33.0万人。今回8月分は予想+61.3万人に対し、+37.4万人でした。

ADPは感染拡大によって新規雇用に陰りが出ているとしていますから、今回の雇用統計に影響する可能性は高いでしょう。

もっとも、ADP雇用報告と雇用統計には大きな乖離があり、一部では前回の乖離については季節調整がうまくいっていないのではないか、といった指摘がありました。

平年であれば、サマーシーズン(夏休み)に入ると、教育関係者などを中心に雇用が失われるのですが、今年はコロナで休校が続いた分、サマースクールに通わせる数が増えており、雇用が維持されて数字上は実態よりも強い結果になったとのこと。

こういった季節調整要因が正常に働いていないとすれば、今回も同様の傾向でADP雇用報告との乖離が見られるかもしれませんから、必ずしも弱い数字になるとは限らない点に注意です。

もっとも、ADP雇用報告との乖離が大きい、相関性が低いとは言っても、感染状況を踏まえれば雇用への影響は避けられないわけで、カンカンの強気で臨むというイベントでもないでしょう。意識としては中立か、やや弱気。

ドル円の下値余地は小さそうで、まずは強気にロング!

今回8月分の非農業部門雇用者数の予想値は+75.0万人増となっています。

5月が+55.9万人、6月が+85.0万人、そして前回7月分が+94.3万人だったことから、予想並みの+70~80万人増といった数字になれば、コロナの拡大が続いていても、かなり力強い雇用の回復トレンドが維持されているという判断でテーパーを織り込み、ドル高になる可能性が高いでしょう。

逆に+50~60万人となると、次回の数字をもう一度確認してからといった雰囲気でドルは横ばいか、予想を下回ったことで瞬間的にはドル安に傾くでしょう。

+50万人すら下回ってしまうようなら、トレンド的には回復が完全にピークアウトしつつあるということで、テーパー意識は後退、もう一段のドル安というイベントになりそうです。

ドル円は非常に悩ましい、レンジでの値動きをずっと続けています。

今回はあまり強い結果は期待できないように感じますが、ドル安でもテーパー後退なら、株高の円安である程度は支えられますからね。

ドル円チャート(日足)

今週はドル安が進んでいることも踏まえると、仮に弱い結果が出ても下値余地はそこまで大きくなさそうなので、多少なりとも強い結果を期待するのであれば、発表直後によほどの株安にならない限りは、ドル円はロングで勝負したいところでしょう。

Next: 強気にロングが吉?今夜のレンジ想定は1ドル=109.50~110.50円



今夜のレンジ想定は1ドル=109.50~110.50円

具体的なトレード戦略としては、現状の水準からロング(買い)で入り、109.50円を背に買っていくイメージです。

目先高値の110.40~110.50円は重くなりそうですが、株安が加速しなければ、もう一段も期待できそうで、重くなるなら一旦半分ぐらい利益確定をして、様子を見ながら利益を伸ばしていけば良いでしょう。

というわけで、今回はやや弱い結果が出る可能性を懸念しつつも、トレードとしてはロングで勝負したいところ。

弱ければ弱いなりに、株式市場はそれを好感して株高になって円売りが支えそうですし、ドル安が進んでいる分、下値リスクは小さそうですからね。

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image by:Creativa Images / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年9月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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