先月のFOMCでは、順調なら11月からテーパリングと宣言されました。FRBは労働市場全体の数字を見ているとのことで、今回の雇用統計もよほど悪い数字にならなければ問題ないでしょう。ドル円は、もちろん押し目・ロングで攻めていきたいところで、今日の展望と戦略について解説していきます。
債務上限問題は先送り!ドル円は素直に米長期金利に従う展開に
直近の大きなリスク要因であった債務上限問題は、短期の引き上げが合意され、12月初旬までは時間的な猶予ができました。これを受けて米国株は大きく反発し、ドル円も円売りで押し上げられました。
もっとも、ドル円に関して言えば株式市場の動向よりも米長期金利(10年債利回り)の動向、日米金利差が強く意識されているので、そちらに目を向けておきたいところです。
そして、米長期金利に関しては、最近高まりを見せているインフレ懸念や、テーパリング(緩和縮小)を織り込んで上昇傾向にあります。
インフレとテーパリング織り込みがしばらく金利を支え続ける
まず、インフレ懸念についてですが、脱炭素を掲げる欧州を中心に需要が急増した天然ガスはすでに年初から600%上昇ですし、原油も世界的な需要増とOPECプラスによる生産制限でしばらく高止まりが続くでしょう。
このエネルギー高に加え、アジア圏におけるコロナの感染拡大でサプライチェーンが乱れ、さらにはオーストラリアからの石炭輸入を停止してる中国が電力不足に陥り、生産工場が稼働できないなど、供給不足もインフレに繋がっています。
それにコロナで減少した航空便などが回復しきっておらず、コンテナ・船便需要増、しかし湾岸労働者やトラックドライバーが不足してコンテナが各国の港に滞留し、逼迫。
このように様々な乱れが物不足にもつながってインフレに拍車をかけていますから、少なくとも今後数ヶ月ぐらいはこの状況が継続しそうです。
それから、テーパリングに関しては、先月の9月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で経済回復の進展が続けば、次回の会合(11月2~3日)で決定される可能性があるとしていますから、今回の雇用統計がよほど悪い数字にならない限りは問題ないでしょう。
パウエルFRB議長も雇用の総合的な数字を見ているとしており、求人件数などを見ると労働市場は非常に健全ですからね。
したがって、基本的にドル円が上昇方向にあること、押し目買い・ロング戦略というのは変わらないでしょう。
Next: 引き続きコロナがノイズも関連指標は好調。今夜の投資戦略は?
引き続きコロナがノイズですが、関連指標は好調
前回(8月分)の雇用統計が衝撃的な弱さになりましたが、やはり背景にはコロナの感染拡大があります。当然ですが、今回(9月分)の雇用統計も9月半ば(12日を含む週)の数字で影響は避けられませんから、サプライズには警戒する必要がありそうです。
求人件数は増加の一途を辿り、人手不足が続いているものの、感染拡大により学校再開の遅れなども見られるため、フルタイムで働けない親というのも一定割合で増えています。
また、アジア圏からの半導体の供給不足で工業製品の生産工場や自動車工場が停止し、それに伴い倉庫業などもリストラを行っていますから、これらも波乱要因となるでしょう。
関連指標については、全体的に改善傾向にあります。今回の予想値についても、非農業部門雇用者数が50万人と、そこまでハードルは高くないので、基本的には予想並みの結果が出て、ドル円も高値トライのパターンを期待したいところでしょう。
よほど悪い数字にならなければロング!
先に解説した通り、エネルギー高や供給制限がしばらく続く限り、インフレの過熱感が急激に和らぐことはないでしょうし、労働市場全体で見れば状況はさほど悪くないですから、よほど今回の雇用統計が悪い数字にならなければ、ドルの底堅さというのは継続するでしょう。
さすがに前回分を下回る、非農業部門雇用者数が10万人台など、予想を大きく裏切る数字にならなければ、ほとんど問題ないかと思います。そもそも、前回も予想を大幅に下回りましたが、ドル円の下値は限定的でした。
米長期金利が1.6%台に迫り、ドル円はすでに一段高となっています。非農業部門雇用者数が30~60万人増という数字に収まった場合には、先週も112.00円前後で叩き落とされましたし、週末ということもありますから、いったん様子見で押し目を待ちたいところです。
もちろん、平均時給などの数字が予想を上回り、金利が1.6%台に乗せて、さらに1.7%台に迫るような力強い動きを見せれば、もう買い買いでついていくしかないですが。
Next: 今夜は押し目狙いで!想定レンジは1ドル=110.80~113.00円
今夜の想定レンジは1ドル=110.80~113.00円
なので、基本的に今の高水準から追っかけ買いするのであれば、非農業部門雇用者数が60万人以上といった予想をしっかり上回った水準を確認したいところでしょう。ただ、それでも金利が1.5%台でも落ち着いてしまうようなら早めに逃げた方が無難です。
具体的なトレード戦略としては、まずは押し目を待って111円台半ば、111.50~111.60円レベルまで落ちてくれば軽く拾って雇用統計の数字待ち。数字次第で追っかけて新規買い・追加するか、利食いするかを決めれば良いでしょう。
逆に予想を下回った場合でも、極端な数字にならない限りは押し目狙いで、111.00~111.20円レベルまで落ちてくれば厚めに買い、損切りは110.80円レベルに置いておきたいところです。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年9月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による