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2021年最後のヤマ場【フィスコ・コラム】

2021年も残りわずかですが、金融市場は年内最後のヤマ場を迎えています。主要中央銀行の政策方針が注目され、それを手がかりとした相場展開となる見通し。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの加速で、ドル・円は115円を目指す可能性もあります。

12月に入り豪準備銀行とカナダ銀行が定例会合を開催し、現行の政策金利を据え置きました。ただ、豪準備銀行は新型コロナウイルス・オミクロン株の影響についてやや楽観的な見方を示したほか、カナダ銀行は来年4月の利上げ方針を維持。資源国通貨でもある豪ドルとカナダドルには原油価格の回復を背景とした買いも加わり、ドルや円に対して上昇基調に振れました。

最大の焦点となる14-15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBは資産買い入れ縮小(テーパリング)を加速する方針を打ち出す見通し。直近の雇用統計は非農業部門雇用者数が肩透かしの内容となったものの、失業率の低下で雇用情勢の改善が示されました。当局者による来年の金利見通しで早期利上げ観測が広がれば、金利高・ドル高に振れやすい地合いとなりそうです。

16日には欧州中銀(ECB)理事会と英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されています。いずれも現行の緩和政策の継続を決定するとともに、域内でのコロナまん延の影響を考慮し引き締めスタンスを弱める公算。ECBはパンデミック特別購入プログラム(PEPP)を来年3月にも終了する方針ですが、今回の会合では縮小に関する決定を見送り、従来の資産買い入れプログラム(APP)の運用について検討するようです。

一方、英中銀は前回11月3-4日のMPCで政策金利の引き上げが期待されていたため、反対多数の否決はネガティブ・サプライズとなりました。その後も高水準のインフレ指標を受け利上げへの思惑が弱まっていません。ただ、コロナ禍のダメージを見極めようと利上げに積極的な委員も政策姿勢をトーンダウンさせており、ECB同様、引き締めスタンスを後退させる可能性が高まっています。

オミクロン株については米ファイザーが実験を踏まえてワクチンの有効性に言及しているものの、解明されていない面もあり英中銀とECBの慎重姿勢は避けられないとみます。それによりポンドとユーロの売りが強まれば、ドルを押し上げるかもしれません。ただ、ドル・円は114円台に浮上すれば心理的節目の115円や11月24日に付けた115円台半ばが意識され、一段の上昇は抑制されそうです

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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