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ドル円に底堅さ【フィスコ・コラム】

主要中央銀行による「金融正常化競争」が鮮明になってきました。そうしたなか、トップを走る米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を背景に、ドル・円の底堅さが目立っています。インフレ圧力が弱まるとみられる年後半まで、下げづらい値動きが続くかもしれません。

英中銀が2月2-3日に開催した金融政策委員会(MPC)で政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ0.5%としましたが、9人のメンバーのうち4人は50bpの引き上げを主張していたことがわかりました。直近の消費者物価指数は前年比+5%台に達しており、MPCは目先も緩やかな引き締めが必要との見解で一致。それを受け、市場は英中銀による追加措置で金利は5月までに1%に達すると予想しています。

欧州中銀(ECB)は3日の理事会で現行の緩和政策を維持しましたが、インフレ圧力が高まっていることを認めました。昨年12月の理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の今年3月の終了や債券買い入れ規模縮小の決定と合わせ、引き締め方針をより鮮明にしています。ユーロ圏のインフレ指標はイギリスと同様に+5%台に上昇し、市場はECBによる年内の利上げサイクル入りを想定し始めました。

FRBが前週の連邦公開市場委員会(FOMC)で一層タカ派色を強めたことに、両中銀は追随した格好です。特に、ユーロ圏の自律的な物価上昇は不安視されているため、ECBの引き締めに前向きな姿勢はサプライズ。ラガルド総裁の発言でユーロ・ドルはこの日1.1260ドル台から1.1450ドル台まで急伸し、1月後半の大幅安から持ち直しています。

半面、株式市場は主要中銀の金融正常化への動きを嫌気し、当面は調整の売りが出やすい地合いが続きそうです。そうなると株安を警戒した円買いに振れ、ドルの一段の上昇を抑制するでしょう。とはいえ、ラガルドECB総裁は早くも引き締め姿勢をトーンダウンさせており、金融正常化レースはFRBが独走。米10年債利回りの2年超ぶりの高水準は、そうした現状を反映しているようです。

FRBが2月16日に公表する1月のFOMC議事要旨で政策金利引き上げやバランスシート縮小の時期・度合いなどの手がかりが提供されれば、金利高・ドル高の流れは目先も続くでしょう。ウクライナ問題の平和的解決への期待は「有事のドル買い」を後退させるかもしれませんが、米国内で新型コロナウイルスの感染拡大が一服しつつあることはドル買いの支援要因になります。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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