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下げづらいドル円【フィスコ・コラム】

主要中央銀行による金融政策が注目されるなか、ドル・円は下げづらい値動きが続きそうです。不透明なウクライナ情勢や不安定な株価で円に上昇圧力がかかりやすいものの、連邦準備理事会(FRB)による引き締め加速の思惑は根強いでしょう。

足元のドル・円は心理的節目の115円台を維持するものの、上値が重く、年明け直後に付けた116円35銭を上抜くほどの勢いは感じられません。2月10日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+7.5%と強含み、インフレの加速が示されました。それを受け米10年債利回りは約2年半ぶりの高水準に達しましたが、ドル・円は116円30銭台で失速し、その後は115円台を中心に推移しています。

下押し要因はウクライナ情勢の緊張です。主に米バイデン政権と米メディアがロシアによるウクライナ侵攻の可能性を伝え、武力衝突を懸念した安全通貨買いが強まっています。エネルギーのロシアへの依存度が高い欧州連合(EU)へのダメージが予想され、ユーロ売り・ドル買いが進行。一方で地政学リスクを嫌気した円買いが強まるため、ドル・円は下落基調が継続しているようです。

市場では、欧米とロシアとの平和的解決が期待されています。目先は北大西洋条約機構(NATO)による東方拡大の転換を求めるロシア側の主張をどこまで受け入れるか注目されます。今後の協議により泥沼化を回避すれば、リスクオンの債券売り・株買いで安全通貨買いは急激に巻き戻されるでしょう。ドル・円はドル売り・円売りが予想されるため、下げづらい値動きとなりそうです。

一方、16日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(1月25-26日開催分)では、政策金利の早期引き上げや金融引き締めペースの加速について必要性を強調。ほぼ想定に沿った内容だったことから、ドル買い再開の材料にはなっていません。ただ、2月に入って発表されたCPIや生産者物価指数(PPI)が記録的な高水準となったことは今後のドル買いを後押ししそうです。

当局者の発言には温度差があるものの、利上げの回数や幅について市場シナリオを超えるとの観測で、金利高・ドル高の基調に変わりはないでしょう。米金融正常化が株安を誘発すれば、リスク回避の円買いがドルを下押しする展開もあります。ただ、欧州中銀(ECB)は今月3日の理事会で緩和政策を修正するスタンスを示しながらも、ラガルド総裁をはじめ慎重姿勢をのぞかせています。それもドル買いの支援材料です。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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