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後場に注目すべき3つのポイント~焦点は「景気悪化」にシフト

11日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。

・日経平均は大幅反落、焦点は「景気悪化」にシフト
・ドル・円は上値が重い、年初来高値付近で売り
・値下がり寄与トップはソフトバンクG、同2位が東京エレクトロン

■日経平均は大幅反落、焦点は「景気悪化」にシフト

日経平均は大幅反落。625.66円安の25064.74円(出来高概算8億株)で前場の取引を終えている。

10日の米株式市場でNYダウは反落し、112ドル安となった。ロシアとウクライナの外相による停戦交渉で進展がなく、さらに2月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.9%と40年ぶりの高い伸びとなったことから、一時466ドル安まで下げ幅を広げた。その後下げ渋ったが、連邦準備理事会(FRB)の利上げを警戒した売りも出て、終日軟調に推移した。インフレへの懸念や金利上昇を背景に、ハイテク比率の高いナスダック総合指数は-0.94%。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで195円安からスタートすると、下げ幅を広げる展開となった。前日が1000円近い大幅上昇だっただけに売りがかさみ、前引けにかけて25051.23円(639.17円安)まで下落する場面があった。

なお、日経平均先物・オプション3月物の特別清算指数(SQ)は概算で25457.94円となっている。

個別では、売買代金トップのレーザーテックが9%超の下落。前日の米市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-2.17%となったほか、政府がハイテク製品の対ロ輸出禁止を決定したとも伝わっている。その他売買代金上位も東エレクなどが軟調で、ソフトバンクG、トヨタ自、キーエンスは大きく下落。また、決算発表の菱洋エレクなどが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、川崎船、三菱UFJや三井住友といったメガバンク株は小じっかり。INPEXは3%上昇している。三井海洋は受注・建造したFPSO(浮体式生産設備)の原油生産開始を発表し、日揮HDなどは米LNG(液化天然ガス)プラントを巡る思惑から急伸。また、好決算の鎌倉新書などが東証1部上昇率上位に顔を出している。

セクターでは、輸送用機器、電気機器、精密機器などが下落率上位。一方、鉱業、石油・石炭製品、銀行業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の84%、対して値上がり銘柄は13%となっている。

メジャーSQを通過した本日の日経平均は大幅反落し、600円超の下落で前場を折り返した。既に前日の上昇幅の3分の2近くを失い、日足チャートでは25100円近辺に位置する5日移動平均線を再び割り込んでいる。SQ値も下回って推移しており、心理的な重しになっていることが窺える。

個別・業種別ではグロース(成長)株を中心に総じて軟調で、原油など市況関連株の一角や銀行株のみ堅調。優良大型株やグロース株は前日大きく買われただけに、取引参加者のダメージは小さくないだろう。前引けの日経平均が-2.44%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.99%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円弱。メジャーSQだったことを踏まえると、前日から売買が大きく膨らんでいる印象は薄い。

新興市場ではマザーズ指数が-4.64%と大幅反落。時価総額トップのメルカリは12%を超える下落となっている。特段の悪材料は観測されていないが、グロース株への売り圧力が改めて強まったことに加え、節目の3000円を明確に割り込んだことで損失覚悟の売りが広がったとみられる。これまで度々指摘してきたが、メルカリは昨年12月から株価下落局面が続くなかでも信用買い残を積み上げてきた。株式需給は良好とは言いづらい。

ここまでの動きを見る限り、前日の当欄「『あや戻し』か『収束期待』か」で懸念していたとおりの展開と言わざるを得ないだろう。メジャーSQ後の需給好転に期待する向きもあったが、前日の大幅上昇で先食いしてしまった感がある。むしろ外部環境の不透明感から改めて下方リスクのヘッジニーズが高まることが想定された。

また、前日の米市場動向を見渡すと、金融市場の懸念するシナリオも窺える。注目の原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=106.02ドル(-2.68ドル)と続落。投機的資金の流入一服とともに、価格高騰が需要鈍化につながるとの見方もあったようだ。とはいえ石油のシェブロン株が+2.74%となったのを見ると、価格高止まりが意識されているのがわかる。実際、本日の東京市場ではアラブ首長国連邦(UAE)が独自増産を否定したことを受け、原油先物相場は朝方上昇する場面があった。金先物はインフレヘッジ目的の買いにより国内外市場で上昇している。

米国債市場では10年物を中心に幅広い年限で金利が上昇。10年物国債利回りは1.99%(+0.04pt)となった。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.86%(+0.02pt)に上昇。為替市場では欧州中央銀行(ECB)理事会結果を受けて一時ユーロが買われたが、上値の重さが拭えない。ECB理事会では量的緩和の縮小を加速する方針が発表されたものの、ラガルド総裁は記者会見で景気の下振れリスクに言及したという。

これらの動向が示唆するのは、「目先の商品高の行方」から「インフレ高止まりによる景気悪化」に金融市場の焦点が移ってきているということだろう。特に日本株は交易条件の悪化懸念がくすぶるだけに、グローバル投資家から買いの手が出にくいかもしれない。それと今晩の米国で発表される3月のミシガン大学消費者態度指数の注目度が一段と増してきそうだ。2月の同指数は62.8と10年4カ月ぶりの低水準だったが、インフレ観測が消費者心理を一段と冷やす恐れがあるだろう。

前引けのTOPIX下落率がぎりぎり2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施への期待も持ちにくいか。後場の日経平均も軟調な展開になるとみておきたい。

■ドル・円は上値が重い、年初来高値付近で売り

11日午前のアジア市場でドル・円は上値が重く、116円前半での推移が続く。日経平均株価の大幅安で日本株安を嫌気した円買いが先行しているが、ドルは有事の買いにより対円で上昇基調に振れた。ただ、年初来高値の116円30銭台での売りに押され、伸び悩む展開に。

ここまでの取引レンジは、ドル・円は116円10銭から116円38銭、ユーロ・円は127円55銭から128円04銭、ユーロ・ドルは1.0980ドルから1.1019ドル。

■後場のチェック銘柄

・インターファクトリー、コラントッテなど、3銘柄がストップ高

※一時ストップ高(気配値)を含みます

・値下がり寄与トップはソフトバンクG、同2位が東京エレクトロン

■経済指標・要人発言

【経済指標】

・日・1月家計支出:前年比+6.9%(予想:+3.4%、12月:-0.2%)
・日・1-3月期法人企業景気予測調査・大企業全産業景況判断指数:-7.5(10-12月期:+9.6)

【要人発言】

・李克強・中国首相
「今年の中国は新たな下降トレンドに直面。5.5%成長は容易ではない」

<国内>
特になし

<海外>
・16:00 英・1月鉱工業生産(前月比予想:+0.1%、12月:+0.3%)
・16:00 英・1月貿易収支(予想:-126.00億ポンド、12月:-123.54億ポンド)
・16:00 独・12月消費者物価指数改定値(前年比予想:+5.1%、速報値:+5.1%)

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