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ドル円は120円台が視野に【ドル・円】

ドル・円は上昇基調を強め、6年超ぶりの高値圏に浮上しています。米金融正常化を背景とするドル買い、緩和政策の長期化を見込んだ円売りが背景にあるためです。上昇ペースの速さは意識されるものの、心理的節目の120円を突破する可能性が出てきました。

ドル・円は緩やかに値を切り上げる過程で、1月4日に付けた年初来高値の116円35銭が上値メドとして意識されてきました。3月10日に同水準を上抜けると勢いづき、2016年の米大統領選でトランプ候補(当時)の勝利を受けた「トランプ・ラリー」での高値となった118円66銭も突破。その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)でのタカ派姿勢を受けたドル買いで、一時119円台に浮上しました。

足元で注目されるロシアとウクライナによる停戦に向けた交渉はなお継続中で、合意に至るまで紆余曲折がありそうです。ただ、ここへきてロシア側が望むウクライナの非武装化の可能性が浮上し、やや曙光が見え始めたようにも思えます。今後の交渉でさらに議論が進展すればリスクオンのムードが広がり、2月以降にドルを支えてきた有事の買いはいったん収束するとみられます。

しかし、ドル・円は119円台に目立った節目が乏しく、目先は120円台定着の見方もあります。米連邦準備理事会(FRB)は3月15-16日に開催したFOMCで2018年12月以来の政策金利の引き上げに踏み切りました。利上げ幅は今回0.25%と想定どおりでしたが、年内は残り6回のFOMCで毎回利上げを実施する見通し。市場シナリオを上回る想定以上のタカ派姿勢により、ドル買い基調は当面続くでしょう。

一方、日銀は世界の潮流からかけ離れ、緩和政策の継続という独自路線を貫いています。黒田東彦総裁は国会答弁などで、携帯値下げ効果の剥落や原油高でも物価目標の2%上昇を達成できる状態ではないと述べ、利上げの可能性を否定し続けています。最近では自民党の意思決定最高機関である総務会の福田達夫会長まで日本は利上げ困難との見解を示し、党内でそうした見方が広がるかもしれません。

米バイデン政権のインフレ退治に忠実なFRB、長年の緩和で身動きの取れない日銀、日米中央銀行の政策スタンスの違いでドル買い・円売りがなお進むとみられます。ウクライナ情勢への過度な警戒やインフレによる景気後退への懸念をやや弱めたこともあり、株式市場がマネーを引き付けられれば円売りの支援材料になります。今後の市場動向次第ではあるものの、目先120円台を想定しても不自然ではないでしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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