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新興市場見通し:個人の含み損益改善も、米物価指標とFOMC議事録には要警戒

■俄かに高まる利下げ転換期待受けて買い戻し加速も週末軟化

今週の新興市場は4週ぶりに大幅反発。週明けから4日続伸と戻りを試す展開が続いた。英国政府が最高所得税率の引き下げを撤回したことで金融市場混乱の不安が緩和したことが投資家心理を改善させた。また、米9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の予想比下振れや、国際連合(UN)による各国中央銀行への利上げ停止要請を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換期待が再び台頭したことが買い戻しに拍車をかけた。週半ばには米8月求人件数(JOLTS)の予想以上の大幅減少を受けて逼迫した労働市場の緩和が示唆されたことや、豪中央銀行の予想外の利上げ幅縮小も追い風となり一段と上昇。ただ、その後多くのFRB高官から利下げ転換期待を一蹴するタカ派発言が相次いだこともあり、週末は米雇用統計の発表を控えるなか騰勢一服となり、5日ぶりに反落した。なお、週間の騰落率は、日経平均が+4.55%であったのに対して、マザーズ指数は+4.30%、東証グロース市場指数は+4.33%だった。

個別では、週間でビジョナルが+14.8%大幅に上昇、好決算を評価する動きが続いた。また、フリーが+14.8%、メドレーが+18.8%と直近の下落がきつかった主力株に急速なリバウンドが見られた。時価総額上位銘柄では他にステムリムが+12.2%、アイドマHDが+11.4%と大きく上昇。時価総額上位20銘柄のうち17銘柄が週間で上昇となった。週間上昇率ランキングではコンサルティング大手のアクセンチュア(東京都港区)による株式公開買い付け(TOB)が明らかになったALBERTがTOB価格にサヤ寄せ。6月に新規株式公開(IPO)したマイクロ波化学は人気化し上場来高値更新。リスキリング(学び直し)がテーマとして浮上するなか、直近IPOのプログリットも急伸した。

■ソシオネクストがIPO、ビジネスコーチのBB11日まで、リオープン関連に物色余地

来週の新興市場は神経質な展開か。米9月雇用統計では平均賃金の伸びが前月から減速するなどポジティブな内容が確認された一方、失業率が想定外に大きく低下したことで依然として労働市場の逼迫が継続していることが確認され、金融引き締め懸念が強まった。今週末のナスダック総合指数は3.8%も下落しており、新興市場も影響を免れないだろう。一時3.5%まで低下していた米10年債利回りが再び4%超えを窺う水準まで上昇してきている点も警戒要素となる。こうした中、12日の米9月卸売物価指数(PPI)と米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(9月開催分)、13日の米9月消費者物価指数(CPI)などのイベントが警戒される。物価指標のコア指数の上振れやタカ派な内容がほぼ確実視されるFOMC議事録を受けて一段とリスク回避の動きが広がる可能性に注意したい。

一方、9月第4週(9/26−30)の投資部門別売買動向において現先合算で2兆円を超える売りが確認された海外投資家の影響が相対的に小さい新興市場の中小型株は引き続き大型グロース株に比べて底堅さが見られている。荒い展開が想定されるものの、中長期目線では優良株の押し目を拾うチャンスと捉えたい。9月第4週に日経レバETFを大きく買い越していた個人投資家は、今週のリバウンドで含み損益が改善していると推察される点も支援要因となろう。

個別では、11日から入国者数の上限撤廃などの水際対策の緩和、そして全国旅行支援などが開始されることもあり、全体的に神経質な相場環境が想定されるなか、相対的な安心感もあるリオープン関連、インバウンド関連に注目したい。改めてアドベンチャーなどの関連株には物色が向かう可能性があるだろう。

来週は12日にソシオネクストが新規上場の予定。また、11日までビジネスコーチのブックビルディング(BB)が続いている。

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