コロナ流行も下火になり社会にも明るさが見えてきたといえます。それに合わせるようにキャッシュレスの動きが急に活発化してきました。今回は「第2次キャッシュレス革命」の始まりに際して、いま最も注目されている“デジタル給与”サービス参入を検討中のコード決済A社のスタッフに、私たちの暮らしと世の中がどう変わのかをお聞きしました。(『 達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場 達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場 』)※この記事は音声でもお聞きいただけます。
※本記事は有料メルマガ『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2022年10月15日の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
始まった第2次キャッシュレス革命
コロナの流行で生活は大きな影響を受けましたが、ここにきて感染も下火になり社会にも明るさが見えてきたといえます。
それに合わせるようにキャッシュレスの動きが急に活発化してきました。Maas(クルマに関するサービス)、情報銀行、デジタル給与など出てきましたが、なかでも目立つのが「デジタル給与」のサービスに関する情報です。
これは毎月の給料がQRコード決済残高に直接振り込まれるもの。このサービスは市中のお金の流れを変える起爆剤になるだけでなく、送金や決済業者が作る経済圏も大きく変えてしまう、ひいては消費者の生活もキャッシュレス利用も根本から変えてしまうのではないかとみられています。
2020年に政府主導でポイント還元のキャンペーンを打ち出して国民挙げてのお祭り騒ぎだったのが「第1次キャッシュレス革命」だったとすれば、現在の2023年に向けた動きは「第2次キャッシュレス革命」とも呼ぶべきもので、キャッシュレスツールの使い方を学ぶと言うよりデジタル給与で新しいお金の流れを体験し自らの生活に取り込んで新しいステージに入ると見えるのです。
今回は「第2次キャッシュレス革命」の始まりに際して、いま最も注目されているデジタル給与サービス参入を検討中のコード決済A社のスタッフに、岩田昭男が「第2次キャッシュレス革命」で世の中がどう変わり、私たちの暮らしがどうなるのかをお聞きしました。
(※当記事はインタビュー形式でお送りします)
「デジタル給与」って何?
岩田:サラリーマンの給料が直接QRコード決済の口座に電子マネーとして振り込まれるのが「デジタル給与」です。この「デジタル給与」がコード決済を展開する『PayPay』『楽天ペイ』『メルペイ』などを中心に来春から解禁される予定というので話題になっています。
銀行振り込みが中心だった私たちの生活は、この「デジタル給与」の登場によってどう変わるのでしょうか?
A氏:「デジタル給与」とは、給料などの報酬を銀行口座を介さず、QRコード決済などの口座に支払えるようにする制度のことです。労働基準法では、給料は現金手渡しが原則で、銀行口座への振り込みは例外的に認められているに過ぎません。
そして、今回この労働基準法が改正され、QRコード決済などの資金移動業者の参入も可能になりました。PayPayや楽天ペイ、メルペイなどのコード決済業者です。
彼らが厳しい審査を経て、これから次々と入ってくると思われます。
Next: 「デジタル給与」で賃金が日払いに?電子マネーの現金化も簡単に
政府の狙いはどこにある?
岩田:突然のように出てきた「デジタル給与」ですが、これをなぜ政府は推進しようと考えたのでしょうか?
A氏:1つは、社会のキャッシュレス化・デジタル化の推進です。それによって生活の深いところまでキャッシュレス化を進めようという狙いがあります。
もう1つは、外国人労働者が日本の銀行口座を持ちにくいことから、銀行口座が無くても給料を受け取れる手段を作ろうという狙いもあります。
私たちの生活はどう変わる?
岩田:キャッシュレスというレベルで考えると、ポイント還元事業のときとどう違うのでしょうか?
A氏:これまでキャッシュレスというと、店頭での買い物を現金から電子マネーに置き換えることであり、その使い方に利用者の関心が集まっていました(筆者注:これを「第1次キャッシュレス革命」と呼んでいます)。
そして今後は、QRコード決済の口座に振り込まれた給与の電子マネーを現金化することなく、そのまま送金に使ったり、買い物に使うことなどに関心が移っていくでしょう。キャッシュレスが生活全体の幅を広げる新しい段階に入ったと言えます(筆者注:これを「第2次キャッシュレス革命」と呼びます)。
岩田:たしかにPayPayや楽天ペイを毎日使っている人にとっては、その口座残高に常に電子マネーが入ってくるとすれば、いちいちチャージする手間もなくなりますし、残高に入ってくれば日々チャージする手間が省けますから、キャッシュレスがますます進むことになりますね。
給料が日払いに?電子マネーの現金化も簡単に
A氏:新しい利用方法としては、給与の出し方が変わってくるでしょうね。これまでは月に1度だったものが週払いとか日払いとか自由にできるので、給与の概念が変わってくるでしょう。仕事も変わってくるかも。
岩田:振り込まれた電子マネーはすぐに現金になるんですか。
A氏:すぐに現金化することもできますので、キャッシュレスだけでなく、キャッシュの使い勝手もさらに便利になります。政府の審議会からは、給与が1円単位で引き出せ、月1回は手数料無料でATMからの引き出しが可能になるようにしようという提言も出ています。
ちなみに審議会によると、このコード決済残高の上限は100万円で、それを超えた場合には、本人が指定する銀行口座に自動的に移し変えられるようで、こちらも便利です。
コード決済業者のメリットは?
岩田:コード決済業者のメリットはどんなものがありますか。
A氏:コード決済業者にはこれまで未知の領域であった顧客の給与利用状況をつぶさに把握できるようになりますから、そのデータを使えばさらにサービスの充実を図ることができます。
新たにこうした計り知れないメリットが得られるので、資金移動業者にとっては、クレジットカード陣営に代わってキャッシュレス時代の中心バッターになるチャンスが巡ってきたといえるでしょう。
Next: 不正利用と補償の問題も。利用者の不安や警戒心は根強い
補償と不正利用の問題
岩田:しかし、このデジタル給与については根強い不安や警戒心が利用者にあるのもたしかです。
A氏:コード決済はいつも問題を起こしているという印象がありますし、事業規模も大手ばかりとは限りません。そうした事業者が経営破綻した時は、残高がどうなるのか心配になりますが、4~6営業日以内にすべて補償をつけることになりました。
岩田:不正利用はどうでしょうか。
A氏:なりすましやハッキングによる不正利用についても補償体制の整備が義務付けられました。クレジットカードと同じように全額補償になります。
岩田:「デジタル給与」は全国民がよーいドンで一斉にやらないとダメなんですか。
A氏:一斉にやるというのではなくて、本人が同意した場合だけ振り込みになりますから、嫌な人は「イヤ!」と言って、これまで通りの銀行振り込みでやっていけば良いわけです。その点は安心してください。
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『
達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場
達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場
』(2022年10月15日号)より一部抜粋・再構成
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。