「不動産ほど楽な投資はない」というのは事実です。上手に物件を選べば、あとは通帳を見るだけで毎月の不労所得が入ってきます。しかし、これは時間をかけて不動産投資を勉強して来た人たちだからできること。最近の不動産投資の成功本を読んで、短期間に大きな投資をして大火傷を負う“サラリーマン大家さん”が続出しています。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年2月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
不動産ほど楽な商売はない?
みなさま、こんにちは!「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。今回は、「サラリーマン大家さん」に憧れて、不動産投資に乗り出したのに失敗してしまった人々について、その原因や心の闇についてえぐっていきます。
さて、不動産賃貸物件の「大家さん」というのは、とてもよい職業だと筆者は思っています。
何しろ、一般的な職業における仕事と比べて、日常やることが極めて少なく、毎月事実上の不労所得が得られるようなものだからです。
かくいう筆者も、35年前から大家さんをやってきています。
地獄を見たバブル時代の不動産投資の体験談
今回ははじめに、筆者の「若気の至り」時代の恥をさらします。
35年前の当時(1988年)、筆者はサラリーマンをやりながら、バブル期の不動産価格が上昇している最中で、金利も高かった時期にローンを抱えて不動産投資に乗り出しました。
その頃は、バブル期の株式投資にもうまくはまって、サラリーマンだった筆者の金回りも少々よかったからなのです。
今と違って、その当時は、月々の家賃収入よりも、ローンの返済額のほうが大きいために、サラリーマンが不動産投資を始めると、給与からの持ち出しの投資になるのが当たり前でした。
そんな状況でありながらも、それでも筆者が不動産投資に乗り出したのは、長年月をかけて投資をすれば、ローン返済を終えてからの家賃収入が魅力的に映ったからなのです。
何しろ、戦後の日本は高度成長期を経て、土地は永久に上がり続けていく──といったほどの禍々しい「土地神話」さえあったからです。
当然ですが、バブル期で不動産価格は上昇の一途でしたから、キャピタルゲイン(価格上昇による利益)狙いの欲ボケ心理もありました。
途中でいつ不動産投資から離脱しても、「必ず儲かる」という欲ボケ心理の甘い見立てだったわけです(恥)。
しかし、やがて筆者の購入した不動産物件は、結局1990年のバブル崩壊以降ですべてが担保割れの状態になっていきます。
つまり、物件が値下がりし、売却したい相場価格よりも、もっと多額のローン残債が残っただけ──というわけです。
すなわち、物件を売却して借金返済から逃れようにも、新たな資金手当てが出来なければ、物件を「売るに売れない」という状態に陥ったのです。
これはもう地獄です。
価値が大幅に落ちた物件の借金をこれからの人生で、ずっと返し続けなければならず、逃げるに逃げられない状況なのですから。
実際、このバブル崩壊の過程にあっては、大口の破産者や自殺者も続出したものでした。
Next: 借金地獄からの生還。不動産投資は時間が味方する
借金地獄からの生還。不動産投資は時間が味方する
そのため、筆者も一時は茫然自失状態に陥りました。
しかし、気を取り直して、その後もずっと、筆者はコツコツとローン返済を続けていくことで、残債を減らす道を選ぶ他、ありませんでした。
それからもう、10年前後にも及んだ苦闘の日々が始まったのでした。
それでもコツコツ返済を続けることで、やがて残債も減っていくのです。
そして、懲りることなく、新規投資もできるようになってくると、ようやく借金地獄から抜け出せるようにもなったのでした。
資産のマイナス状態がゼロに戻り、さらにプラスを加えていける状態にまで戻っていったのでした。
こうして、一時は大損して、かなりの借金を抱えていましたが、時間の経過とともに、いずれの不動産物件も大きな収益を生んでくれるようになっていきました。
筆者の若い時代のここまでを振り返ると、お気づきになったかと思いますが、不動産投資というのは、長い年月という「時間を味方にする投資」ということなのです。
借金地獄に陥っても破綻しなければ、ギリギリ状態で家賃収入を得て、たとえ持ち出しはあっても、コツコツ借金を返していけば首の皮一枚で命脈が保てた──というわけなのです。
バブル崩壊という大激震は、「時間を味方につける」ということを、しみじみと実感させてくれる出来事だった次第です。
低金利時代が生んだサラリーマン大家さんブーム
その後、日本経済はバブル崩壊以降ずっと低調ですが、不動産価格がバブル崩壊でグーンと下落しました。
やがてデフレ不況も追い打ちをかけて、低金利政策が常態化していきます。
皆様ご存じの通り、「ローン返済額<家賃収入」という今の状況が訪れたわけなのです。
多額の借金をして、不動産賃貸物件を買うほど、ローン返済額よりも、家賃収入のほうが大きいため、イールドギャップ(利回りの差)で、儲かるというカラクリが生じるようになったのです。
もちろん、これはこれで危ういカラクリでもありますが。
こうして今の時代、サラリーマンの間でも不動産投資に乗り出す人が増え、「サラリーマン大家さん」と呼ばれるような不動産投資ブームが到来しているのです。
Next: 通帳を見るだけで終了。大家さんの仕事は超ラクチン
大家さんの仕事は超ラクチン
不動産投資というのは、「時間を味方につける投資」です。
これが他の商売と大きく違うところで、他の商売などでは、もっと大変です。
ラーメン店を例に挙げれば、1杯700円のラーメンを、休みなしで毎月2,170杯(1日70杯)を売り上げたとしても、総収入は152万円です。
ラーメンの原価率を35%とすると、食材コストは53万2千円ですから、残りの98万8,000円から家賃を払い、水道光熱費を払い、人件費を払うと、残りは微々たるものになってしまいます。
ラーメン店の経営者として、毎月100万円の収入を得ようとするならば、1日150杯のラーメンを売り(日収10万5千円)、325万円ぐらいの月商がなければ、到底かなわないことにもなるでしょう。
1日150杯ものラーメンの湯切りをやっていたら、店主の腕もパンパンに腫れ上がるかもしれません。
かように商売というのは、厳しいものです。
おまけに、お客さんが来てくれなければ、ラーメン店は借金を抱えて倒産する他なくなります。
このように商売は、いざやってみなければ、うまくいくかどうかが、わからない──という怖さと紙一重なのです。
優良な投資物件が多いほど安定する不動産投資
その点、不動産の大家さんとして、月収100万円を得るのは比較的カンタンです。
利回り7%の物件で例えるなら、1億7千万円相当の不動産を保有していればよいだけだからです(無借金の場合)。
ローンの返済比率を50%とするなら、この2倍の3億4千万円相当の物件を有していればよいことになるでしょう(キャッシュフローが月額100万円)。
不動産投資は、借金というレバレッジ(てこの原理)で、投資規模を拡大できます。
問題は、サラリーマンとしての属性次第で融資枠が異なることでしょう。
税金などを度外視して考えれば、毎月100万円の収入があれば、家族の生活費は40万円程度でしょうから、毎月60万円を貯蓄に回せます。
これを原資に、さらなる借金をして、次々と不動産物件を増やしていける──ことにもなるのです。
リスキーですが、一見非常に合理的に見える投資です。
大家さんとしての収入の安定は、物件数という規模の拡大に他ならないからです。
また、大家さんの仕事は、清掃にしろ、修繕や管理など、ほとんどの周辺業務を専門業者に割り振ることもできるため、究極はやることがなくなる場合もあります。
通帳をチェックするだけ──という状態です。
ゆえに他人に業務を任せる“お任せ投資”もできてしまうのです。
Next: 無防備な“お任せ投資”はカモられる
無防備な“お任せ投資”はカモられる
そこで、気をつけなければいけないのは、不動産投資における必要な業務を業者に全部丸投げして行う形の“お任せ投資”なのです。
多くのサラリーマン投資家が騙された事件ですが、あの女性向けシェアハウス投資の「かぼちゃの馬車」が“お任せ投資”の典型でした。
投資する人は、金融機関から多額の融資を受け、シェアハウスを購入すれば、物件管理のすべてを業者が代行する──という仕組みだったのです。
カネさえ払えば、面倒くさい周辺業務はすべて業者が引き受け、お金を出してシェアハウスを購入したあなたには儲けさせてあげますよ──という構図です。
しかし、「他人に業務を代行させる」──これは「他人に好き放題に騙される」ということを意味します。
「ぜんぶお任せ投資」は「詐欺」と同義語にもなるのです。
「何もしなくても儲かりますよ」といった、そんな甘いうまい話は世の中にはありません。
不動産投資は、「時間を味方につける投資」と説明しましたが、大事なことは、長い年月で投資家の「経験値」も上げていかないといけない──わけなのです。
不動産投資にはリスクがてんこ盛り
巨額の借金で家賃年収が1億円とか、5億円といった、メガ大家さんやギガ大家さんと呼ばれる人たちの書いた本が、本屋の不動産投資本コーナーには並んでいます。
しかし、10年にも満たない短期間で、このような不動産投資を行っていくことは危険極まりないことでしょう。
経験値が浅いからです。
いきなり大きな物件にチャレンジすれば、そのぶん、リスクも跳ね上がります。
このように、一見ラクチンに見える不動産投資にも、その裏に潜むリスクはてんこ盛りだからなのです。
借金の額が大きすぎるほど、危険が雪ダルマになるからです。
不動産投資には、様々なアクシデントやトラブルとは背中合わせなのです。
なにしろ、入居者が人間だからです。
不動産を扱っているつもりでも、実は人間に対応している仕事だからです。
空室リスク、家賃滞納での夜逃げや残置物リスク、自死や孤独死リスク、水回り故障や漏水リスク、騒音トラブルリスク、近隣トラブルリスク、理不尽な苦情リスク、管理業者によるボッタクリのリスク、災害リスク……などなど、挙げればいろいろあります。
そして、周辺業務を大家から代行する専門業者も、常に儲けを最大化することに傾注しています。
成功本を鵜呑みにした人の悲惨な末路
こうした諸々のトラブル問題への解決方法が、自分の判断で最良にこなせるようになるには、やはり日々の「経験値」の積み重ねこそが大事になるのです。
いきなり、大きな借金を抱えて、トラブルに見舞われ、にっちもさっちも行かなくなったら大変です。
そいう大失敗に見舞われたサラリーマン大家さんはゴマンといるのです。業者のポジショントークがあふれ、あまり表面化していないだけのことでしょう。
不動産投資の「成功本」に記された内容を鵜呑みにして、不動産投資に乗り出して大失敗する人は、死屍累々だからです。
不動産業者は、参入障壁も低いわりに、収益は大きいため、海千山千の騙しのテクニックを駆使する業者だらけです。
業者の言うことを鵜呑みにするしかない──知識不足の状態の大家さんでは、悪徳業者のカモにされます。
ローマは一日にしてならず──なのです。
小さな物件からはじめて、リスク耐性を高めていきながら、規模の拡大を心がけることが大事でしょう。
前述した筆者の「大家さん」としての大失敗の経験をご参考にしていただき、けっして地獄に陥るような誤った投資をしないよう、これから不動産投資に乗り出す人は、心しておいてください。
もちろん、不動産投資は、トラブルさえなければ、非常にラクチンな投資ができるもので、老後資金の大きな柱にもなってくれるものです。
焦らず、コツコツと長年月をかけて、スキルを身に着けていってほしいと願うばかりなのです。
それでは今回はここまでです。
次回は、「日本の少子化は止められない! 国家消滅へ向かう地獄の未来図!」というテーマについて、えぐっていきたいと思います。
年金も介護も、満足のいくフォローがされなくなる近未来の地獄が迫っています。
どう生き残りを図るべきか──についてお伝えしていきます。
それでは、次回をお楽しみに!どうかご期待ください。
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- 日本の少子化は止められない! 国家消滅へ向かう地獄の未来図!(2/20)
- 少額投資でスタートする「サラリーマン大家さん」たちの死屍累々! サラリーマン大家を騙す不動産業界の魑魅魍魎!(2/13)
- 人々の心をあやつるマインドコントロールの闇(2/6)
※本記事は、神樹兵輔氏のルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年2月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を
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『
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神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!
』(2023年2月13日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。