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新興市場見通し:物色意欲旺盛も、IPOラッシュと配当権利取りで既存銘柄には下押し圧力か

 

■週初急落もその後は戻りを試す

今週の新興市場は4週ぶり反落。UBSによるクレディ・スイス買収合意や各国中央銀行による流動性供給支援などが打たれたが、銀行の経営不安は収まらず、週明けは流動性リスクが意識されやすい新興市場の中小型株に強い売りが出た。一方、その後はイエレン米財務長官の銀行に対する追加の預金保護措置を示唆する発言や米長期金利の低下を支援要因に、新興市場は週末まで戻りを試す展開となった。ただ、週初の下落分を埋め切ることはできなかった。なお、週間の騰落率は、日経平均が+0.19%であったのに対して、マザーズ指数は-1.03%、東証グロース市場指数は-0.06%だった。

時価総額上位銘柄では、フリーが-11.1%、TKPが-7.9%、ステムリムが-6.5%など週間で下落した銘柄が多かった。一方、FPパートナーやライフネット生命保険、アドベンチャーなどのディフェンシブ系やリオープン関連の一角は上昇した。また、直近、好決算が確認されたANYCOLORは+26.9%、Macbee Planetは+26.1%と大幅高となった。ほか、セルシード、ラバブルマーケ、ELEMENTS、インフォネットなど週間売買代金ランキング上位の銘柄では週間で大幅に上昇した銘柄が多かった。

■来週のIPOは11社、米2月PCEコアデフレーターにも注目

来週の新興市場はもみ合いか。今週から新規株式公開(IPO)ラッシュが始まっている。今週は東証スタンダードに新規上場した企業を含め合計4銘柄のIPOがあったが、いずれも初値は公開価格を上回り、週末にかけて強い動きが見られた。来週もカバー、モンスターラボHD、住信SBIネット銀行、AnyMind Group、Fusicなど注目度の高い企業を含め、IPOが合計11社予定されている。今週のIPO銘柄に対する旺盛な物色意欲を見る限り、来週もIPO銘柄への物色は活発化しそうだ。

特に欧米で銀行の経営不安がくすぶっており、外部環境の不透明感が強い中、既存銘柄よりはIPO銘柄でリターンを得ようと考える個人投資家は多いと考えられる。一方、IPO銘柄はもともとボラティリティーが高い上、銀行不安に関する悪いニュースのヘッドラインを受けて個人投資家マインドが悪化すれば需給が悪化する可能性がある。このため、高いリターンの裏には相応の高いリスクがあることに留意してほしい。

他方、IPO銘柄への物色活発化は既存の新興銘柄には換金売り圧力としてマイナスに作用する可能性がある。4月もIPOがすでに11銘柄と多数予定されている。当面は換金売り圧力が既存銘柄の上値抑制要因として働く可能性に注意しておきたい。ただ、ANYCOLORやMacbeePなど既存の主力銘柄でも好決算を発表しているところでは今週末まで強い動きが見られているものもある。中長期では好業績銘柄の押し目買いが奏功しそうだ。

一方、週末には米2月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが発表予定で、米金融政策の鍵を握る重要指標のため、週末にかけては手仕舞い売りなどに注意したい。また、29日は配当・優待権利付き最終売買日だ。足元では、欧米の銀行不安と景気後退懸念によりバリュー(割安)・高配当利回り株に対する物色機運は後退しているが、今週末は海運株で強い動きも見られた。高配当利回り銘柄への物色意欲が再燃する場合にはIPO物色と合わせて、既存の新興銘柄には需給面でマイナス材料となるため、注意したい。

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