今回は「年収の壁を取っ払え!人手不足社会到来なのに矛盾した制度を温存する政府へはNOを突き付けよう!すべての解決は消費税廃止」というテーマでお届けします。サラリーマンの夫に扶養される、妻という年金制度上の「第3号被保険者」の立場で、パートやアルバイトで働くことでの税負担・社会保障負担の問題点をえぐっていきます。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年7月31日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
「扶養制度」がもっと働きたい人の足かせに
「扶養制度」は、かつて一般的だった「サラリーマンと専業主婦」世帯の生活を安定させるべく生まれた制度でした。
子どもや専業主婦など経済的な援助が必要な家族(被扶養者)を扶養している人(扶養者)が受けられる制度なのです。
具体的には、扶養制度があることで、サラリーマンとしての税金が安くなり、サラリーマンは被扶養者分の社会保険料を支払う必要がなくなります。
例えば、会社員の夫の扶養となっている妻の場合、夫は税金面で「配偶者控除」を受けることができて節税になります。
また、社会保障面では、妻の分の厚生年金保険料を払わなくても、妻は第3号被保険者として老後に国民年金(基礎年金)だけを受け取れるメリットがあります。
これは健康保険料においても同様で、被扶養者は負担がなくてすむわけです。
しかし、時代の変遷とともに、この「扶養制度」が、被扶養者のパートやアルバイトで働く時の足かせになりかねない――という事態が生じてきています。
人手不足なのに「働くと損する」おかしな制度
人手不足時代なのに、妻が夫の「扶養制度」から外されることを嫌って、パートやアルバイトでの就業時間や収入を制限している状況は、何とも非効率で生産性にも逆行しています。
かくして、「年収の壁」を取っ払うべきではないか――という議論が起きてきています。
とりわけ、年収が130万円を超えると世帯主の扶養から外され、手取りが少なくなるという「130万円の壁」が、大きくクローズアップされています。
岸田政権も制度の見直しに言及していますが、解決は容易ではないでしょう。
扶養から外れ、厚生年金に加入することになれば、将来の厚生年金支給という形で自身に返ってくるものの、目先の収入の減少という問題に直面するからです。
このため、パートなどで働く多くの被扶養の労働者が、年収130万円に達しないよう労働時間を調整しているのが現実です。
最近は、企業への賃上げ要請の声も大きくなって、パートの時給も上昇してきましたが、そのため、従来と同じ時間だけ働いていても130万円を超えてしまうケースが出てきています。
では、そうならないように、130万円の上限金額を上げればよいかといえば、単純に130万円の上限金額を上げたとしても、新たに設定したその金額に近づけば、またまた同様の問題は続きます。
上限金額に近づけば、被扶養労働者は、働く時間を削ろうとするでしょう。イタチごっこにしかなりません。
ゆえに、上限金額を上げるだけでは、ちっとも解決にはならないのです。
企業としては、人手不足に直面する折にもかかわらず、パートで働く側の労働意欲が削がれ、家計収入も増えなくなる――といった、こうした矛盾の解決にはならないのです。
そのため、政府の一部からは、補助金支給で、「130万円の壁」で減収になる分を補ってはどうか――などという安直で無責任な提案も飛び出しています。
しかし、これでは扶養でない労働者に対しても、余計に不公平になるだけでしょう。自公連立政権の発想はバカすぎて、笑止なのです。
では、どうすればよいのでしょうか。
最も簡単な方法は、全員一律に社会保険に加入させるようにすれば、一気に問題解決も図れます。
しかし、そうなると、パートやアルバイトで働く立場の被扶養労働者たちの猛反発が起こることでしょう。それが恐ろしくて、政府もそこまでは到底踏み切れないのです。
Next: 「年収の壁」は5つもある!非常にややこしい問題だらけの制度
「年収の壁」は5つもある!非常にややこしい問題だらけの制度
ところで、「年収の壁」は、130万円に限ったことではなく、年収の段階によっていくつもあります。これが細かくて、非常にややこしいのです。
ざっと、見ておきましょう。
●100万円の壁………「住民税」の負担が発生(100万円未満は非課税)
●103万円の壁………「住民税」「所得税」の負担
●106万円の壁………「住民税」「所得税」の負担に加え、一部「社会保険料」の負担が発生
●130万円の壁………「住民税」「所得税」「社会保険料」の負担
●150万円の壁………「住民税」「所得税」「社会保険料」の負担に加え「配偶者特別控除の減少」が発生
とまあ、ややこしいことに、「年収の壁」は上記のように概ね5つに分類されるのです。
以前までは、社会保険料の負担が発生するのは、130万円からでしたが、2022年10月から社会保険の適用範囲が拡大し、1カ所の事業所での年収が106万円以上のパートやアルバイトの労働者にも条件付きで適用されることとなっています。
ここで加入義務が生じるのは、従業員数が常時101人以上の事業所で、週20時間以上の労働時間で月額賃金8万8,000円以上で、2カ月を超えて就業する見込みの場合です。
社会保険料の負担額は収入によって異なりますが、年収106万円の場合は年間で約15万円ですから、社会保険に加入していない労働者よりも手取り額が減少するのです。
いずれにしても、ややこしい条件があって、面倒くさい話なのです。
イギリス方式にすれば被扶養者にも優しいが、財務省は許さない――という話
では、日本の「年収の壁」をスムーズに改善するには、どうすればよいのでしょうか。
これには、諸外国の例を見てみるとよいでしょう。
いずれの国でも、一定の収入以上で、税負担や社会保険料が生じる仕組みは日本と同様です。
しかし、イギリスの場合は、「年収の壁」を超えた場合、超えた部分の収入にのみ税率や社会保険料率が適用されるため、負担が非常に緩やかなものになっています。
これなら、労働意欲を阻害することなく、被扶養の範囲内でも、目いっぱい働いて、少しでも家計を潤わせたい――という多くの被扶養者の要望にも応えられます。
しかし、政府・財務省は隙あらば、増税を狙っていますから、今よりも税負担や社会保険料負担が少なくなるような、こんな制度の導入は望めないでしょう。
税収を減らす――といった減税の発想は、財務省には端からないからです。
Next: 「消費税廃止」ですべてがうまくいく!財務省を解体すべし
「消費税廃止」ですべてがうまくいく!財務省を解体すべし
つまり、日本の場合、財務省があらゆる税制や社会保障体制においてネックとなる存在なのです。
1989年に3%での消費税を導入し、これまで税率アップを図ってきましたが、実際には消費税収の75%は、法人税率と所得税率を下げて減収になった分の穴埋めに使われてきたことは有名な話です。
いわんや、社会保障の充実に使われた――などというのは、自公政権の大嘘です。
こんな消費税などという欺瞞的な制度を導入して、国民が消費する時に罰金を課すがごとき税制は、そもそもおかしいでしょう。
金持ちにとっては、微々たる消費ですが、貧しい人にとっては、消費における税の負担は重すぎます。
国民にとって公平な税どころか、逆進性が大きくて、一般国民を苦しめるだけの税金に他なりません。
消費を減退させて、景気を低迷させて、デフレ脱却を遠のかせてきたのが、消費税を主導してきた財務省なのです。
日本の国力をひたすら低下させてきたのですから、財務省が、ろくでもない省庁であることだけは間違いありません。
あるべき道は、即刻、消費税を廃止すべき――なのです。
そうすれば、「年収の壁」の問題などで、アレコレ頭を悩ますこともなくなります。消費税を廃止すれば、多くの国民は、消費における10%分の増収になるからです。
そして、大企業優遇の特例的な法人税率も改めて、大企業にも、中小企業並みの標準的な法人税率を払わせるべきなのです。ロクな賃上げもせずに、内部留保だけを積み上げてきたのが大企業だったのですから。
所得税率も昔に戻して、累進性を強化すべきです。そして、株式譲渡益や配当所得など富裕層に偏っている金融所得に対して、10~20%という低率の「分離課税」をやめるべきでしょう。ただの金持ち優遇策だからです。
所得税は、あらゆる所得を合算し、それに超過累進税率(1983年以前は最高税率が75%だったのに、現在の最高税率は45%まで下げている)を課す「総合課税」が基本であるべきなのです。
金融所得についてだけ、「株式市場活性化のため」などという、たわけた理由で、長年にわたって申告分離課税あるいは源泉分離課税が定着しています。
財務省は、金持ちや大企業だけに配慮して、所得税の所得再分配機能を弱める「不公平税制」を推進してきただけだったのです。
こんな不公平を推進する省庁は要らないのです。
また、公明党が猛反対するでしょうが、宗教法人課税の導入も検討すべきでしょう。少子高齢化で国家財政が窮乏しているのに、脱税の温床になっている宗教法人を野放しにしておく道理はないからです。
財務省などという、こうした不公正・不公平な省庁の存在を許してきたことが、そもそも日本の成長を阻む最大のガンだったのです。
財務省そのものを解体する方向へと、国民の声を結集する以外にないのです。「年収の壁」などという、くだらない制度の犠牲になる必要はないのです。財務省の言いなりになってきた自民党・公明党とも、おさらばすべき時でしょう。
こうしたことは、国民一人一人が真剣に考えていきたい問題なのです。 「大手スーパーで売っているモノだから安心!」と思っていたら、大間違いの現実が本当によくあります。つい先年まで、「熊本県産」と称して、スーパーなどで販売されていたアサリは、97%が中国産でした。それが発覚して撤去されると、なんとスーパーの鮮魚売り場から、アサリそのものが消えてしまいました。 また、国産ウナギと称して、マラカイトグリーンの合成抗菌剤(日本の養殖では禁止)の養殖池にどっぷり浸かった中国産ウナギも「産地偽装」の国産表記で並んでいる――といった疑惑も尽きないことでしょう。 そして、主食のコメの銘柄にいたっても、産地偽装はやり放題だったのです。中国産のコメの7割は、イタイイタイ病の原因物質といわれたカドミウムに汚染されている――と指摘されていますが、国産のコメの銘柄にも、輸入された中国産の激安のコメが平気で混ぜられて流通しています。 何でこんなことがまかり通っているのか――次回はコメ流通のこうした闇をえぐっていきます。 ※本記事は、神樹兵輔氏のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年7月31日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
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』(2023年7月31日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。