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ロシアルーブル安と地方選【フィスコ・コラム】

9月10日にロシアで行われる地方選は来年3月の大統領選の行方を見極める手がかりとして注目されます。通貨ルーブルの大幅安は一服したものの、インフレ再加速で同国経済の混乱は鮮明。求心力低下が取り沙汰されるプーチン氏の再選シナリオにも影響しそうです。

足元のロシアルーブルは不安定ながら、1ドル=90ルーブル台を維持しています。ただ、春先以降はほぼ一貫して下げ続け、8月には一時100ルーブルを突破。昨年3月以来、1年半ぶりの安値水準で、年初来から4割超も減価しました。下押し圧力は弱まっておらず、一度はサポートラインとして機能した100ルーブルの水準が、今度はレジスタンスラインに変わる可能性もあります。

最近のルーブル安は、主力のエネルギー製品の輸出が大きく落ち込む一方、欧米による制裁を逃れるため欧米以外の友好国からの輸入が膨らんだことが背景とみられます。ロシアはウクライナ戦争以降、この1年半は戦時モードを強めており、その過程で抑止したはずのインフレが夏場以降に再び加速してルーブルを下押し。経常収支の悪化で一段のルーブル安を招く通貨安の連鎖に陥っています。

ロシアの国内総生産(GDP)はコロナ禍によるダメージを克服し、2021年4-6月期にプラスへ浮上。その後22年4-6月期からウクライナ侵攻による制裁で再びマイナスに沈んだものの、今年4-6月期には前年比+4.9%となり、5四半期ぶりにプラスに転じました。インフレ加速やルーブル安でもプーチン氏は2023年のGDPは+1-2%と、21年以来2年ぶりのプラス成長を確保するとの強気な見通しを示しています。

そうしたなか、10日の地方選の結果が注目されます。通常の州議会選挙に加え、ロシアが昨年併合したウクライナ東部など4州の州知事選が焦点です。ウクライナ戦争に突入後、初の重要選挙で、侵攻の是非を問う意味合いもあります。プーチン氏を支える与党「統一ロシア」が多数派を形成できれば来年の大統領選で再選を果たし、2期12年間も政権を維持するシナリオが想定されます。

ただ、直近の議会選で「統一ロシア」は議席を減らしつつあり、これまでのプーチン政権に対する不満が噴出すれば与党は退潮に向かう可能性もあります。プーチンの求心力低下に関する報道が事実だとすれば、選挙結果にも反映されるでしょう。対ロ制裁の継続で経済の回復が期待できないなかでの選挙は、政権運営の盤石さを確認するための試金石になりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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