今回は「認知症や要介護度の高い高齢者ほどボッタくられるブラック介護施設が横行……こんな介護付有料老人ホームに親を入居させたら殺される!」というテーマで、お届けいたします。現在65歳以上の日本の高齢者数は、2022年9月時点で3,627万人(人口比29.1%)。すでに3人に1人近くが65歳以上高齢者なのです。これが、2040年になると人口比で35.3%になりますから、日本人の3人に1人以上が確実に65歳以上高齢者となります。つまり、国民の4割近くが65歳以上高齢者というわけです。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年11月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
現在も将来も日本は「老人大国」
現在65歳以上の日本の高齢者数は、2022年9月時点で3,627万人います(人口比29.1%)。すでに3人に1人近くが65歳以上高齢者なのです。
これが、2040年になると人口比で35.3%になりますから、日本人の3人に1人以上が確実に65歳以上高齢者となります。つまり、国民の4割近くが65歳以上高齢者というわけです。すごいことになるわけです。
日本は、現在もすでにそうですが、これからの将来においても世界に冠たる「老人大国」なのです。
そして、現在介護が必要になり、介護施設に入る平均年齢は概ね80歳前後といわれますが(入所期間は約5年前後)、現在80歳以上の高齢者数は1,235万人にのぼります(人口比9.9%)。もちろん、こうした80歳以上でも元気な高齢者は大勢います。誰もが80歳前後で、必ず要介護になるわけではないからです。要介護の施設に入る人の平均年齢が80歳前後というだけです。
実際に介護保険サービスの給付が受けられるのは、原則65歳以上となっています(民間の介護付老人施設入所は概ね60歳以上からOK)。
約650万人が介助・介護を受けているが…
現在、介助(要支援=予防給付)や介護での給付を受けている65歳以上の高齢者の数は、2023年時点で650万人にのぼります(認定者数は720万人)。
この約650万人の介助や介護が必要な高齢者を対象に、高齢者向けのさまざまなサービスの提供が行われているのが現在の日本の実情です。
介護サービスの市場規模は介護予防サービスも含めて現在約16兆円ですが、これが2040年には現在の1.7倍の約26兆円になると試算されています(ちなみに介護保険の給付と自己負担額の総額は2021年度で11兆291億円)。
この額は年々数千億円単位で膨らみ続けています。
介護保険での給付は、年収によって1割負担から3割負担という区分がありますが、ほとんどの要介護者の自己負担割合は1割となっています。これが介護財政を圧迫しています。
そして、2040年には介護スタッフが69万人も不足するといわれる「お寒い介護現場」の実情も予測されています。
介護サービス事業は、衰退ニッポンにあって、数少ない成長産業ともいわれますが、国から介護保険制度で給付金が出るにも関わらず、倒産する業者も非常に多いのが、この業界の特徴となっています。
簡単にカネ儲けができると安易に見込み、異業種から続々と参入するものの、結局コスト割れやら、介護スタッフの人繰りがつかずに破綻を余儀なくされるからです。とりわけ、届け出だけで開業できる住宅型介護事業の破綻が目立ちます。
人口は減少していくのに、高齢者はまだまだ増加し、介護サービス市場も拡大が見込まれているのに、厳しい近未来がひろがっているのです。「人生100年時代」は苦難の道でもあります。
そして、老人大国ニッポンは、これからも、いよいよというか、ますますというか、大変なことになっていくわけです。
……にもかかわらず、日本の政治状況はピンボケです。
Next: 費用が工面できず、介護施設に入れない老人が続出する…
防衛・海外ばら撒きに予算をつぎ込んでいる場合ではない
岸田政権は、防衛費を現状の2倍の10兆円規模にする――などと息巻いていますが、高齢大国日本の未来に向けて、これからいったい何をしたいというのでしょうか。
今でさえ、自衛隊員が不足している――というのにです。
アメリカの言いなりで米国の軍需産業を潤わせる前に、もっと安心できる日本の近未来・高齢化ニッポンのビジョンを描いてもらいたいものですが、世襲3代目のバカボン総理では無理からぬところなのでしょう。何の希望ももてないところです。
ちなみに、しばしば本メルマガではお伝えしていますが、安倍政権の累計8年8カ月の在任期間では、およそ60兆円ものカネを海外にバラ撒き、「地球儀を俯瞰する外交」などと得意になっていたのが、自民党・安倍政権でした。
平均すると毎年7兆円。消費税率換算で年間3%分です。
原資は、国会審議を経ない外国為替特別会計と年金特別会計の剰余金でした(外務省のODA予算はそもそも5,000億円しかない)。
しかも、現下の岸田総理は、安倍政権を上回る毎年9兆円もの海外バラ撒き外交をやっていますが、政権癒着のマスメディアはスルーしています。
自民党政権は、もはやタガが外れまくっていますが、首相の外交やってる感だけの「ええかっこしい」のせいで、日本のカネが無尽蔵に外国に消えていきます。
「もうどうにもとまらない〜?」という山本リンダさんの昔のヒット曲が思い浮かぶのですが、笑えません(若い方は知らないでしょうが、調子のよい曲なのでぜひ聴いてみてください。山本リンダさん歌唱『どうにもとまらない』1972年リリース)。
費用が工面できずに介護施設に入れない老人が続出する老人大国ニッポンの未来
さて、閑話休題で本筋に戻りますが、老人介護施設には、大きく分けて以下の3分類があります。
・介護付有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・サービス付き高齢者住宅
介護付有料老人ホームの中には、月額利用料金が非常に安く、介護保険の自己負担分に、食費や居住費をすべて含めても10〜15万円ですんでしまう「公的施設」の特別養護老人ホームも全国に約1万施設が含まれています。
しかし、ここには、要介護者の約62万人が入所していますが、入所希望者がつねに20万人以上いるため、なかなか入所はかないません(地域によっては稀に空室が出ることはある)。
結局、費用がピンからキリまであり、施設数が最も多いのは、民間事業者が運営する介護付有料老人ホームで、全国に約1万3,500施設で(住宅型含む)、54万人が入所しているところが、要介護になった時に最も「頼れる施設」ということになります。
しかし、65歳以上高齢者夫婦の平均年金受給額は、夫が会社員で妻が専業主婦だった場合、合計で約21万円です。妻も共働きだった場合でも、約26万円です。これは、平均値ですから、高い金額から低い金額に並べた時の中央値では、もっと低くなります。
これでは、夫婦の片方が要介護になっても、民間の介護付有料老人ホームには入りたくても入れないでしょう。入所のための月額費用が足りません。
民間企業が運営する介護付有料老人ホームは、入所一時金のないリーズナブルな施設でも、利用料が月額20万円前後しますから、夫婦そろって入所するには費用が高すぎて、とても無理なのです。
本メルマガの第21回(2022年11月21日号)でお届したように『現役世代の9割が、老後に介護が必要になっても介護施設に入れない!待っているのは格安・無届け介護施設での虐待地獄!」という酷いことにもなりかねないわけです。
Next: 老人はただの金づる?薄利多売の「ブラック施設」が次々と誕生
格安介護付有料老人ホームのチェーン化がすすんでいるが、実態は薄利多売の「ブラック施設」。老人はただの金づるに
ところで近年、ものすごい勢いで伸びている全国チェーンの介護付有料老人ホームがいくつかあるのをご存じでしょうか。
なんと、全国に100施設以上を展開して儲けている「薄利多売の介護付有料老人ホーム」チェーンがあるのです。新聞折込広告では、一見すると「入所一時金ナシ」「月額費用一律10万円」と謳う、公的施設の特別養護老人ホーム並みに格安の老人ホームチェーンの存在なのです。
「これはスゴイ!安い!」と飛びつく人も少なくないことでしょう。歩行障害や認知症を患う高齢者の親をもつ人は、「これだ!」とばかりに飛びついてしまう価格の安さです。
こういう格安・介護付有料老人ホームに、自分の親を入所させて、はたして大丈夫なのでしょうか?
もちろん、大丈夫ではありません。心配の種がつきない諸々の問題を抱えているからです。しかし、こういう安い施設に要介護の親を入所させるしかない――という現役の家族も少なくないのです。
家族だけでの自宅介護では、老人が老人を介護する「老々介護」や認知症の老人が認知症の老人を介護する「認々介護」にもなりかねず、ふつうの家庭生活そのものが成り立たなくなるからです。
そのうえ、介護施設に入る高齢者の半数近くが、年金だけでは生活費が足りずに生活保護の受給を受けています。
生活保護の援助を一部受ければ、東京都の単身者なら月額で12万円程度の収入は確保できます。これだけあれば、リーズナブルな格安料金を売りにする全国チェーンの介護付有料老人ホームにも入れるわけだからです。
つまり、この現状は介護業界においては、すでに貧しい老人を食い物にする「貧困ビジネス」が蔓延しているのが日本の実情といっても過言でないわけです。
格安・介護付有料老人ホームチェーンの実体は「カネむしり」
入所一時金ナシで、月額一律10万円の格安.介護付有料老人ホームに入所すると、どういうことになるのか。内部告発の事例を紹介いたしましょう。
センター長には、本部から入所者一人当たりの売上ノルマが決められており、各施設の売上を競わされます。
入所すると、高額の空気清浄器を無理やり買わされたり、おやつの菓子類や果物類を本人の同意のあるなしや、疾病(糖尿病など)の有無に関わらず、のべつまくなしに提供し、その費用を家族に請求するのが常道だそうです。
当然ですが、これでは月額10万円ではおさまらなくなります。月額12万円、13万円と請求される羽目に陥ります。
また、介護施設では入所者の3人に1人というヘルパー要員の配置が義務付けられていますが、これは常勤の場合で、実際には24時間の要介護者への要員体制では、休憩時間も含まれるため、要介護者10人に1人のヘルプしか行えないのが実態です。
排泄物は垂れ流しで、おむつ交換も朝だけ1回というような施設が少なくないのです。
Next: 何もせず放置も?要介護者への「虐待」が増え続けている……
要介護者への「虐待」が増え続けている
そして、たびたび問題になるのが、要介護者への虐待です。厚生労働省によれば、虐待は5つの種類に区分されます。
<1. 身体的虐待>
高齢者に対して暴力的行為や、やむを得ない場合以外の身体拘束、行動や言動の制限、強制的行為など。介護施設での虐待事例では、殴る、蹴る、叩く、つねるなどの暴力行為があります。
この他にも、外部との接触を遮断する。ベッドや車いすへの縛り付け。薬の過剰服用。言葉による適切でない身体拘束.抑制。排泄の失敗をした高齢者に対しお尻を叩くなども「身体的虐待」に当たるとしています。
<2. 介護放棄(ネグレクト)>
日常生活で必要な介護や生活の世話を放棄、放任し、生活環境や身体.精神的状態を悪化させるケースです。
介護施設での虐待事例では、入浴や整容などを行わず、異臭や皮膚を不衛生なまま放置する。水分や食事を十分に与えず、脱水や栄養失調の状態にする。汚物を室内に放置したまま劣悪環境で生活させる。ナースコールの放置や届かない場所にスイッチを設置する。必要な介護、医療サービスを理由なく制限するなどが「介護放棄」に当たるとしています。
<3. 心理的虐待>
高齢者に対して暴言・威圧・侮辱・脅迫・無視、拒絶的な対応をしたり、その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことを「心理的虐待」としています。
介護施設での虐待事例では、怒鳴る、悪口を言うなどの暴言、威圧的な態度、言葉の暴力がこれに相当します。また、誹謗中傷、無視、嫌がらせ、侮辱的に子供のように扱ったり、排泄の失敗などを失笑するなどが「心理的虐待」に当たるとしています。
その他にも、入浴時に下半身をいたぶる「4. 性的虐待」や、本人の同意なく財産を不当に処分したり、着服したり、詐欺的手法で利益を得たりする「5. 経済的虐待」などが挙げられています。
厚労省の調べでは、介護施設や居宅サービス事業所での高齢者虐待事例は2019年度で、特別養護老人ホームが190件(29.5%)で最も多くなっており、次いで有料老人ホームが178件(27.6%)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が95件(14.8%)、介護老人保健施設が72件(11.2%)などと発表されています。
しかし、これらはあくまで発覚事例で、氷山の一角でしかない――という識者の指摘も少なくないのです。
2019年度の被虐待高齢者1060事例のうち、身体的虐待が637人(60.1%)、心理的虐待が309人(29.2%)、介護等放棄が212人(20.0%)となっており、虐待による死亡事例も4件報告されています。
なぜ介護付有料老人ホームでは「虐待」が多いのか?
2019年度の厚労省の調べでは、介護施設で虐待が起こる理由を、以下のようにまとめています。
・「教育・知識・介護技術等に関する問題」が366件(56.8%)
・「職員のストレスや感情コントロールの問題」が170件(26.4%)
・「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が132件(20.5%)
・「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」が81件(12.6%)
厚労省では、高齢者虐待には様々な要因があるものの、被虐者の心身の状況も虐待に大きな関連があるとしています。
・要介護度3以上の者が803人(75.8%)
・認知症日常生活自立度2以上の者が804人(75.8%)
・要介護認定者のうち障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)A以上の者が610人(57.5%)
ちなみに2番目の認知症日常生活自立度2とは、「日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる」というレベルの状況の高齢者のことです。
Next: 格安施設では虐待が横行…結局は「介護の沙汰」もカネ次第
「介護の沙汰」も結局はカネ次第
結局、月額料金の安い介護付有料老人ホームでは、「カネむしり」や「虐待」が横行している――ことになるのです。
月額料金が10万円といった格安.介護付有料老人ホームでは、職員の待遇そのものも悪いため、ストレス過多の職員によって、いずれにしろ「面倒な老人」は虐待されるわけです。
そして、身体障害や認知症を抱える入所者ほど、「虐待」されるケースが増えるのも必然なわけです。「人生100年時代」といっても、これでは本当に、老後は苦難の道に他ならないのです。
カネがなければ、生活保護の助けを借りて、格安・介護付有料老人ホームか、本メルマガでかつて紹介した「無届け介護施設」に入所するしかなくなります。
健康生活を出来るだけ保てるようにして、介護施設に入所することなくあの世に行く「ピンピンコロリ」を目指すか、老後資金を少しでも多く貯めておかないと「安心老後」にはたどり着けない現実があるのです。
30代、40代、50代といった現役のうちから、老後の人生も考えておく必要がここにあるのです。 ※2023年11月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は、神樹兵輔氏のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年11月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
<初月無料購読ですぐ読める! 11月配信済みバックナンバー>
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
『
神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!
神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!
』(2023年11月20日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!
[月額660円(税込) 毎週月曜日(年末年始を除く)]
1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。