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米大統領選とドルの行方【フィスコ・コラム】

トランプ前米大統領が返り咲きに向け、重大な岐路に立たされています。次期大統領選の出馬資格をめぐり、複数の州で訴訟が提起されているためです。今後の司法判断によっては政治情勢への影響も避けられず、ドルの行方は読み切れなくなってきました。

トランプ氏は今年11月の大統領選で共和党の最有力候補とみられ、今後同党の予備選に進む方針。しかし、コロラド州最高裁は昨年12月、3年前の連邦議会襲撃事件に同氏が主導的な役割を果たしたとし、国家への反乱や暴動に関与した者は「国または州の官職に就けない」との規定によりその資格を認めない判決を下しました。それを受け、米連邦最高裁は1月5日、是非を審理する方針を決めました。

トランプ氏の立候補については、コロラド州に続きメイン州も同様の判決でした。両州を含め20州で同氏に出馬資格を認めるかどうかについて係争中ですが、ミシガン、ミネソタ両州では認められています。共和党の予備選は1月15日のアイオワ州を皮切りにスタートの予定。連邦最高裁は多くの州で指名候補を決める3月のスーパーチューズデー前に司法判断を下すとみられ、他州への影響も注目されます。

バイデン米大統領は3年前の議事堂襲撃事件に合わせ演説し、民主主義の防衛と保護、維持に務めると強調しました。ただ、世論調査によると、バイデン大統領の昨年12月時点での支持率は34%と過去最低水準に落ち込み、4年前のトランプ氏の41%を下回りました。昨年1年間で銃乱射事件が600件超と社会不安が強まったほか、インフレ高進で経済政策の失点が大きく響いています。

共和党内ではヘイリー元国連大使やデサンティス・マイアミ州知事が指名候補争いに参戦。反トランプの有権者も依然として多い半面、同氏は今なお熱烈な支持者に支えられており、党内での影響力は衰えていないようです。仮にトランプ氏の出馬資格が失われた場合、米国社会の分断が一層激化する状況が予想されます。専門家は大統領選に向け、内戦や暴動に発展しかねないとの見方を示しています。

その際、ドルはどのような値動きになるでしょうか。昨年10月にハマス・イスラエル紛争が勃発した時に安全資産の象徴だった米国債が選好されず、「悪い金利高」でドル高に振れました。その後、ムーディーズは米国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。政治の二極化により、財政政策が行き詰まるリスクがあると指摘し、金利高・ドル高を後押ししました。

しかし、南北戦争以来の「有事」に、ドル買いが優勢になるとの想定は困難です。ドルは上昇後に急落するシナリオも考える必要がありそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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