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波乱の3月ドル円相場【フィスコ・コラム】

日米中銀の政策決定やそれに影響を与える重要イベントが重なり、今月のドル・円相場は波乱の展開が予想されます。ドル選好地合いが続くなか、日本のインフレや春闘、金融政策運営が注目されます。円安に振れれば2022年の高値を上抜け、新高値の可能性があります。

ドル・円は2月13日に150円台に浮上後、月末まで底堅い値動きが続きました。鈴木財務相をはじめとする政府の円安けん制でドルは早めの利益確定売りに下押されるものの、150円を下回ると押し目買いが入り相場は下値の堅さが意識されています。連邦準備制度理事会(FRB)当局者から政策金利の早期引き下げに慎重なスタンスが相次いで示され、利下げの後ずれをにらんだドル買いが背景にあります。

焦点となるのは13日に予定される自動車・電機大手の賃上げ集中回答。2023年は30年ぶりの高い伸びを記録し、24年は連合がそれを上回る高水準を目標に掲げています。日銀は賃金上昇を伴う2%の物価目標を達成できれば大規模緩和の修正に乗り出す方針で、市場は18-19日開催の金融政策決定会合でのマイナス金利解除を想定。そうしたシナリオなら、円買いがドルを下押しする見通しです。

ただ、日銀は政策変更には慎重とみられ、現行の政策維持なら円売りが強まるでしょう。日本の1月消費者物価指数(コア指数)は前年比+2.0%と前回から低下しており、日本のインフレ率失速は鮮明に。3月22日発表の日本の2月CPIコア指数は目標である前年比2%台の水準を維持できるか微妙です。日銀当局者から金融正常化に前向きな発言が聞かれましたが、修正の思惑後退なら円売り再開でしょう。

一方、米FRB当局者から早期利下げに否定的な見解が相次いでいます。3月12日発表の米2月CPIは伸びの鈍化のペースが想定よりも緩慢とみられ、同19-20日のFOMCでは、改めて引き締め的な政策を堅持するとの見方が広がりつつあります。また、堅調な米経済指標を受けソフトランディングへの期待感でドル買いが入りやすいほか、NY株式市場の強気相場による円売りもドルの押し上げ要因となります。

日経平均株価は過去最高値を更新しましたが、ドル・円も2022年10月の高値151円94銭を更新する可能性が出てきました。日本政府の為替介入への警戒感から151円台は上値が重くなるとみられますが、鈴木財務相は「水準ではなく勢い」と指摘。ドルは151円後半の攻防を経て、さらに上値を試す展開も想定しておく必要がありそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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