今年2月にあった学校給食での誤嚥事故以来、全国で使用を見合わせる動きが広がっているというウズラの卵。生産地である愛知県内では在庫が山積みになり、親鳥の飼育を減らす農家も出てくるなど、苦境に陥っていると報じられている。
報道によれば、加工メーカーではウズラ卵の水煮の給食向け出荷数が、事故後大幅に減少し、6月は昨年の約6割に。さらに出荷が滞った商品の在庫は、同月末時点で昨年の1.8倍に達しているとのこと。
またウズラ農家では、卵の量を減らすために親鳥の間引きも行われているという。関係者からは「飼料価格の高騰や輸入品の増加で、業界は以前から苦しい状況が続いている。廃業する農家も出てくるのではないか」との懸念も広がっているという。
ウズラ農家の軒数は減少傾向
中華丼や焼き鳥、釜飯などの具材に欠かせないウズラ卵だが、そのウズラ農家の軒数にくわえ飼育羽数に関しても、全国の半分以上を占めるのが愛知県内で、なかでも豊橋市などの東三河地方は、ウズラ卵の一大産地となっている。
しかしウズラ農家の軒数はもとより減少傾向で、農林水産省によれば2023年における100羽以上を生産するウズラ農家は49戸に留まり、2011年の70戸と比べて3割減少しているとのこと。日本全国で食べられているウズラ卵は、こういった限られた軒数の農家によって賄われているというのだ。
その反面で、他の農畜産業と同じく後継者不足は深刻。とくにウズラ農家は市場自体が小さいがため、設備はニワトリ用のものを改造したり、特注で頼んだりすることになるなど初期投資がより掛かるといい、そのことも新規就農のハードルを上げているという。
そんなウズラ農家なのだが、近年ではコロナ禍による外食産業の低迷の影響も大いに受けたほか、ウクライナ危機や円安による飼料価格や光熱費などの飼育コストの上昇にも、苦しめられている状況。
というのも、ウズラは卵を硬くするために魚粉を与えるのだが、この魚粉を主に輸入に頼っており、これが価格が下がらないのだという。
このため今春には、キユーピーをはじめとしたウズラ卵を加工する食品メーカーが、相次いでウズラ関連商品の値上げに踏み切り。
商品によっては、ここ2年で3割近く値上がりとなったものもあるようだが、安価な海外産ウズラ卵も市場には出回るなかで、こうした価格高騰は巡り巡ってウズラ農家を苦しめる可能性も大いにありえそうなのだ。
ウナギの代わりに“う”の字が付くウズラを
このように、かなり以前から苦境が続いていたウズラ業界だったわけだが、そこに先述の学校給食での誤嚥事故が発生し、さらなる打撃となっている状況。
ウズラ卵に限らず、こどもの誤嚥事故に関しては「よく噛んで食べる」と指導すれば済む話……といった主張も多い反面、まだ歯が生えそろっていない小学校低学年までの子のことを考慮すれば、誤嚥の危険性のある食品の排除はやむを得ないといった見方もあるところ。
とはいえ今回の件では、苦境のウズラ農家に大いにしわ寄せが行っている状況を、あまりにも理不尽だと捉える向きが多いようで、SNS上では同情する声が多数あがる事態に。
今年の土用の丑の日のご飯は「うなぎ」じゃなくて「うずら」にしようと固く心に決めた瞬間 https://t.co/2bjzYATMk7
— しゃみAfnGo (@HedgeHogNGO) July 23, 2024
土用丑の日は「う」の付く食べ物と言う事で、明日はうずらの卵丼にするか。
消費量激減で生産者の方々も困っているらしいし。— 炭黒@V-Strom800&ADV150 (@sumikuro650) July 23, 2024
土用の丑に『うずら』と言うことでうずらの卵の水煮を買ってきました。スーパーですぐに手に入るからみんな喰おうぜ! https://t.co/VATR1lbpEz
— 緑茶坊主@積分土方の朝は早い (@green_tyabouzu) July 23, 2024
さらにはウズラ卵の需要拡大のためのアイデアも飛び交っているのだが、なかには今年は2度ある「土用の丑の日」に、ウナギの代わりに“う”の字が付くウズラを食べるのもいいのでは……といった話も、俄かに盛り上がっているようだ。
Next: 「事なかれ主義のせいで何の罪もない農家が苦境に…」
ツイッターの反応
スーパーのお買い得コーナーに、うずらの卵が積まれていた。給食での窒息死事故から、給食に使われなくなりうずら農家が大変とのこと。… pic.twitter.com/M6nZd7C6f8
— 小谷由果 (@cotaniyuca) July 23, 2024
お餅で窒息して亡くなる人、年間300人くらい居るらしい。
それでも「餅を食べないようにしましょう」と言う話はほとんど聞かない。
うずらの卵や蒟蒻ゼリーの、例外的な事故で亡くなった人が出たら、めちゃめちゃ叩かれるの不思議だ— ひきこうもり (@Hikikomori_) July 23, 2024
なんという…
「詰まらせないよう、よく噛んで食べましょう」でいいじゃないか。ウズラ農家が不憫過ぎる https://t.co/6nvnE40iRz— ユウスケL (@yuusuke171) July 23, 2024
喉に詰まらせやすいからといって餅の禁止を主張したら巨大な米産業を敵に回す事になるからと黙認して、零細が多い蒟蒻ゼリーやウズラの卵の場合はマスコミや与野党の国会議員が寄ってたかって販売中止を迫ったり、事なかれ主義のせいで何の罪もない農家が苦境に陥ったりするの、理不尽過ぎて許し難い。 https://t.co/tumgjQnu0q
— TsubasaE3 (@tsubasaE3) July 23, 2024
こんなことが起きてたんですね。みんなで中華丼にうずらの卵たくさん入れてうずら農家さんたちを応援しましょう https://t.co/wuSizz2Zv3 pic.twitter.com/PHp1ZHGYrU
— 中島太一/Taichi Nakajima (@taichi31986717) July 23, 2024
ホントは味付ウズラも添えたかったけれど手に入らず。無念。
我らが豊橋市はうずら卵の一大産地。今、そのウズラ農家さんが大ピンチ▶︎ 過日の誤嚥事故以来、学校給食等で見合わせ継続中。
畜産って一度窮地に立つと再起が難しい。適切な食育とともに、地場産業の縮小回避を。ウズラ、食べてね! pic.twitter.com/rIonMFiZ5v
— 古山よしはる(豊橋市/暮らしと絆を守る。郷土の誇りと価値を高める。) (@furuyama4486) July 23, 2024
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