会社員などが亡くなった際に配偶者らに支給される「遺族厚生年金」について、厚生労働省は受け取り要件の男女差を無くすため、現役世代で子どもがいない人の受給期間は、性別にかかわらず5年間とする方向で検討に入ったと報じられたことが、大きな波紋を呼んでいる。
厚生労働省は、現行の制度は夫が働いて妻を扶養するという世帯が多かった時代に作られたもので、共働き世帯が中心となっている現状にそぐわないとして、男女差を解消する方向で検討。
具体的には、配偶者が亡くなった時に60歳未満で子どもがいない人について、性別にかかわらず受給できるようにし、期間はいずれも5年間とする方向で検討が進む見込みだという。
「遺族年金廃止」のデマも流布
例えば夫が亡くなった場合、子どもがいる妻と、子どもがいなくても30歳以上の妻であれば、年金を生涯受け取ることができる反面で、妻が亡くなった場合は、夫が55歳以上でなければ受け取れないといった、受け取る要件に男女差が存在する遺族年金。
こういった男女間で差がある受給要件の見直しを含めて、昨年あたりから厚生労働省の審議会では、制度改正の議論が続いていたということなのだが、今年4月には突如「遺族年金廃止」がトレンドワード入りし、SNS上が大いに紛糾するといった出来事も。
その際には、自民党の片山さつき元地方創生担当相が「遺族年金は当然維持」と自身のXに投稿し、ネット上の噂を否定。さらには「男女の給与格差が先進国1(位)なうちは、優遇制度も必要! まずは女性に正当な給与水準増を、というのが政治の本筋です」ともコメントしていた。
ところが、今回報道された改正案はというと、配偶者が亡くなった時に60歳未満で子どもがいない人の場合、性別にかかわらず受給できるようにし、期間はいずれも5年間とするといった内容。
性別にかかわらず受給要件が同じになったということで、懸念点だった男女差は解消される格好となったわけだが、ただ従来、女性は子どもがいなくても30歳以上であれば、年金を生涯受け取ることができていたのが、今後5年で打ち切られることに。このことが「男女平等にかこつけた支給額減らし」だとして、SNS上などで反発の声が殺到する事態となっているのだ。
女性にとって結婚がますますリスキーなものに?
厚生労働省が今回の遺族年金の受給要件見直しの理由としている、“共働き世帯”の増加だが、2020年時点だと共働き世帯が1240万世帯に対し、いわゆる“片働き世帯”は571万世帯。日本の夫婦は約7割は共働きというわけだが、逆にいえば専業主婦も約3割存在するというのが現状だ。
今回の遺族厚生年金の見直しが仮に実現すれば、もっとも割を食う格好となるのは、こういった専業主婦だといえそうで、配偶者の死によって生涯受け取れるはずだった遺族年金が、5年で打ち切られるというのは、まさに致命的な事態。
仮に年齢が若ければなんとか再起を図れる可能性もありそうだが、これが40代後半から50代といった世代となれば、年齢の問題などで再就労も難しく、ゆくゆくは行き詰まってしまうことも大いに考えられそうなのだ。
また、先述の片山さつき議員の指摘通り、日本の男女間賃金格差は2021年時点では、男性一般労働者の給与水準を100とすると女性は75.2と、その格差は国際的に見ても依然として大きい。こうした男女差が現実には厳然とあるなかで、遺族年金に関しては男女差解消という名目のもと、女性への優遇を無くそうとしているというのだ。
そんななかSNS上では、仮に今回のような形で遺族年金の受給要件見直しが決まれば、日本の少子化はさらに進行するのではないか、といった指摘も多くなされているところ。遺族年金の事実上の改悪により、多くの女性が自らのキャリアを失う可能性のある結婚を、リスクがあるものとして今まで以上に忌避するようになるのでは……というのだ。
うちは実母も義母も60超えてるから関係ないけどさ、遺族年金を無くしたら「生活費が足りない老母を養わないといけない20〜30代」が大量発生して、結婚出来なくて少子化が更に加速すると思うんだけど…
男女ともに親を養ってる人との結婚は敬遠するでしょ?それか10年後くらいから生活保護爆増かな? https://t.co/Pf7qqF2h9f
— N (@mmm___176) July 25, 2024
結婚出産でキャリアを手放す可能性がある女性は遺族年金も改悪されたらバリバリ働いて一人で自由に生きていく!!が最適解になるよね
国がやってる事ってそう言う事だよ??なにが異次元の少子化対策だよ…聞いて呆れる
— それなりに。(人的控除を奪うべからず) (@eIdS33UGpPX8fpF) July 25, 2024
この案考えた奴、名前出せ。
これだけ社会保障費ふんだくっといて何言ってんだ?
俺が死んだ後、子供が成人したら5年しかかみさんに遺族年金出さんって事か?
こりゃ出産を考える人間が減るわな。
完全に日本人の人口を減らしにかかってる。
いつもの『まさに』異次元の少子化対策ってヤツか? https://t.co/YvGQwB60H4— ロボ (@C3lexOEVBRnWHhP) July 25, 2024
ちなみに厚生労働省は、今回の遺族年金の見直しに関して、現在受給している人が不利益を被らないよう経過措置を設け、数十年かけて見直すとしているとしているのだが、それまでに少なくとも大きすぎる男女間賃金格差あたりに関しては、大幅な改善が見られないことには、世論の支持は到底得られそうになさそうな情勢だ。
Next: 「男女の賃金格差が埋まらないのに…」
ツイッターの反応
だからさ、私の世代40代後半から50代は産休、育休は絵に描いた餅で、取れずに退職している人が多いんだよ。
そういう環境を加味せず子育てを終えた専業主婦から遺族年金を取り上げるの?遺族厚生年金5年間給付へ 男女差是正、20~50代対象(共同通信)#Yahooニュースhttps://t.co/DABm2OQu4u
— S_Berry (@sa_bb_berry) July 25, 2024
法律婚の唯一のメリットに切り込んできた。
女性にとっては改悪の形での男女差是正。
職歴なし専業主婦50歳とか、遺族年金なしで生きるの極貧ほぼ決定。全ての女性が稼ぐ力を強制される(もしくは生保覚悟)社会で、今後も少子化の流れは必至よ。#Yahooニュースhttps://t.co/NTrSb9xJk6
— 野はらひろし@桃太郎県の精神科医 (@okayamamental) July 24, 2024
仮に今、自分が四んだら、家内には遺族年金が生涯支払われるが、制度改正されたら、5年しか支払われなくなる。
改正されたら、専業主婦は、現役バリバリの旦那に先立たれたら終わり。ということになります。
男女差無くすって言えば聞こえはいいが、支払額減らしたいだけ#遺族年金 #改悪
— AK49 (@AK49_S660) July 24, 2024
遺族年金の運用変更の件「男女差をなくす」じゃなくて「生涯受給を廃止して一律に5年間に縮小する」でしょ。
言い回しが詐欺師の手口そのもの。
マスコミも詐欺師の片棒担ぐような報道で羞恥心と良心の欠如っぷりが酷い。#遺族年金#ゴゴスマ— DEX (@DEXZIP1) July 25, 2024
いやだから…ただの改悪を「男女差解消」という良さげな言葉で誤魔化すのやめろや
差をなくすのが目的なら男性も受給可にすれば済む話なのに、なんで女性の側を5年に短縮すんの??男女の賃金格差は開いたまま&中高年女性の就労も難しいのに遺族年金減らすってどゆこと??先に就労の格差を是正しろや https://t.co/7ZluF3hUct
— nichinichi️⚧️️ (@nichinichibijou) July 25, 2024
男女の賃金格差が埋まらないのに、セーフティネットであるはずの遺族年金が「男女平等」になるのはおかしい話。 https://t.co/1GLy7kG8ps
— nico☺︎ もう3y (@202009Nico) July 25, 2024
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