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パリ五輪に見る「社会の闇」。セーヌ川への異常な執着と強行される“社会浄化”=原彰宏

パリ五輪では多くの日本選手が活躍し、感動を与えています。しかし、開催地であるパリの街では、東京五輪にもあったような「闇」とも言える社会問題が数多く発生しているようです。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年8月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

「100年ぶり」パリ五輪に住民は生活苦?

華やかな舞台の影には「社会の闇」が潜んでいるものです。

いま開催されている「パリ五輪」の舞台の裏にも、深刻な影の部分があります。

1900年と1924年に過去開催した「花の都“パリ”での五輪」ですが、3度目の開催は前回からちょうど100年目の年に開催されました。

水質汚染がずっと指摘されているにも関わらず、フランス政府は「セーヌ川」を今回の「パリ五輪」の顔として中心に位置づけました。

開会式が競技場以外の場所で開かれるのは五輪史上初めてのことになります。

トライアスロン競技の会場にもなるセーヌ川を、選手団は船に乗り、世界屈指の観光名所を眺めながら入場行進しました。

一方、曲がりくねるセーヌ川沿いはドローンや狙撃兵に狙われやすく、開会式は「危険な計画」(米国紙)とも評され、マクロン大統領は、国内のテロ警戒度を最高水準に引き上げ、パリ中心部を「要塞」(仏メディア)にする厳重な警備を敷きました。

川沿いの約10キロを「テロ警戒区域」に指定し、立ち入りを厳しく規制し、区域に入るには、事前に取得した「QRコード」の提示が求められることとなり、もともとのパリ住民の生活は、かなりの不自由さを強いられることになりました。

余談ですが、物価が五輪仕様となり、なにもかも値段が高くなっているそうですよ。パリ市民の生活は、大変です。これも余談ですが、長野五輪が終わったあとに、長野市民の住民税は引き上げられたそうですよ。

なぜ遊泳禁止にするほど汚れているセーヌ川にこだわるのか

セーヌ川には金属や大腸菌が多く含まれているため、1923年以降、遊泳が禁止されています。そこを、トライアスロンのスイム会場とするフランス政府は、いったい何を考えているのでしょうか。

確か14億ユーロ(約2,100億円)をかけて、セーヌ川を浄化する計画が立てられていました。なぜそんなにセーヌ川に、こだわりたいのでしょうか…。

パリ市民にとって、セーヌ川には歴史的かつ本能的な強い愛着があります。スポーツ、オリンピック・パラリンピック、セーヌ川を担当するピエール・ラバダン副市長の言葉です。

セーヌ川沿いを、かのナポレオンは「メインストリート」と呼び、セーヌ川沿いは、写真映えするパリの歴史的建造物が誇らしげに立ち並び、壮大さと威厳を醸し出しています。

実際には、開会式での大雨が、通常時でも「大腸菌の数値が大阪・道頓堀の約6倍」とされた水質汚染をさらに悪化させたようです。

パリ市の下水道システムはそもそも、汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」で、その管に大量の雨水が入り込み、一定の量を超えると汚水がセーヌ川に流れ込んでしまったようです。

セーヌ川の汚染を認識してか、28日・29日とトライアスロン選手がそれぞれセーヌ川でのスイムトレーニングを予定していたのが、いずれも中止となっています。おまけに、30日予定の男子個人の本番までも延期になっています。

トライアスロン選手は、練習もできずに本番に突入。セーヌ川での「スイム」の後に嘔吐する選手もいたようです。ベルギーのオリンピック委員会は、パリ五輪のトライアスロン代表選手であるクレール・ミシェルが体調不良になったと公表しています。5日(現地時間)に予定されていた混合リレーの出場を棄権するとしました。同国の日刊紙「De Standaar」』は、ミシェルが大腸菌感染症のために入院しているとも報じています。

トライアスロンのコースは、セーヌ川へと飛び込むスイム1.5kmからスタートし、パリ市内を周回するバイク40kmを終え、最後にラン10kmを行うということになっています。

セーヌ川は、コースから“外せない”のでしょう。東京五輪でも、同じような問題が指摘されていませんでしたっけ。開催ありき、主催者側の思惑ありき、選手の体調管理や健康は考慮しない…。

Next: ただ世界によく見られたい?もう1つの闇「路上生活者締め出し」問題



もう1つの闇「路上生活者締め出し」の社会問題

パリ五輪を巡る社会問題を告発しているフランスのNGOの連合体「メダルの裏側」は1日、五輪開幕直前の3カ月間にパリ首都圏で2,500人以上の路上生活者が強制排除されたとする報告書を発表しました。

五輪の競技会場付近では、7月26日にあった開会式までの2週間で「集中的に」強制排除が行われたと指摘しています。

パリやその周辺ではアフリカや中東などから密航した移民らが川沿いの橋の下などで路上生活を続けており、当局はたびたび排除を進めてきたとのことです。

「広く開かれた大会」を掲げるパリ五輪ですが、支援団体は「五輪が『社会浄化』を加速させている」と訴えています。

これは北京・東京と、いままでも実際にあった話のような気がします。東京五輪では、コンビニの雑誌コーナーからアダルト雑誌が一斉に撤去されましたよね。北京の街も、表から見える(映像が映される街並み)ところと、そうでないところでは風景がぜんぜん違う、表からは見えなくしているといったことが指摘されていた記憶があります。

当局が五輪との関連を否定しているにもかかわらず、実際は「社会浄化」を進めていると指摘されています。

五輪の裏で強行される「社会浄化」

日本でも東京五輪における国立競技場建設をめぐり、近隣の都営霞ヶ丘アパートの撤去問題がありました。

1964年大会に向けた競技場の拡張に伴い、立ち退きを求められた人々の住まいとしてあてがわれた「都営霞ヶ丘アパート」、今度もまた東京五輪のための国立競技場建設に伴い、アパートの住民は、強制退去させられました。この問題は、映画にもなって広く世間に訴えかけられました。

華やかな舞台の「影」には、無理やり押し込まれた社会の「闇」が存在します。

そのことを踏まえて、私たちは「公共」とは何か、「国家プロジェクト」とは何かを深く考えるべきであり、光だけでなく影の部分からも、目を背けないようにしなければならないと思います。

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