マネーボイス メニュー

政府が見逃すインフレの現実。「生鮮食品」が継続的に高騰、危機的な水準に=原彰宏

インフレで家計の厳しさが増すなか、特に深刻なのは生鮮食品の価格が継続的に高騰している点です。政府が使う物価指標では生鮮食品の価格変動を除外しているため、実際の生活感覚とは乖離していることが問題視されています。エネルギーや為替など外部要因により、日々の消費者生活への負担は増大しており、より現実に即した政策が求められています。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

【関連】牛を殺せば助成金…。政府に振り回される酪農家たち。過去最悪レベルの「牛乳ショック」で毎日生乳廃棄へ=原彰宏

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年11月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

高騰し続ける生鮮食品価格

インフレで本当に恐ろしいのは、「高騰し続ける生鮮食品価格」です。

日本では「生鮮食品を除く総合」が「コアCPI」と呼ばれ、物価の基調を見る際には生鮮食品価格の動きは無視されることが多いです。

日銀ホームページを見ると「物価動向の分析にあたっては、現実に観測される消費者物価の動きから、様々な一時的要因の影響を取り除いた、基調的なインフレ率(いわゆる「コア指標」)がよく利用されています。」とあります。

たしかに、生鮮食品価格の振れが非常に大きいのは事実です。

生鮮食品の価格は、鮮度が落ちやすいことから長期保存が困難で、その時々の供給量(生産量)によって変動します。

また、天候や世界情勢などにも大きく影響されます。

食品の価格上昇の背景には、主原料のコーンや植物油といった原材料の高騰や物流コスト上昇、需給ひっ迫などがあります。

いやこれって「インフレ」の影響ですよね。

また、エネルギー(ガソリン、電気代など)も海外要因で変動する原油価格の影響を受けるため、これらの一時的な要因や外部要因を除くことが消費者物価の基調を把握する上で有用とされています。

物価指数から生鮮食品を除外しているが…

日本銀行の予測によると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024年度に2%台半ばとなったと、2025年度および2026年度は、概ね2%程度で推移すると予想されています。

この数字を見ると、日本の物価高は落ち着いてきているようにも見えます。

しかし、生鮮食品価格はこの10年ほど強い上昇トレンドを持っており、「コアCPI」との相対価格も大きく変化しています。

わたしたちが物価高を“実感”するのは、日銀がデータとして除外している生鮮食品やエネルギーの価格ではないでしょうか。

スーパーでの買い物が高く感じる
ガソリン価格が半端じゃない
水道光熱費高騰が家計の負担になっている

…2024年4~6月の生鮮食品は前年比「+10%」近い伸びとなっており、それがなくとも長引くインフレで購買力を削られている消費者にとっては「泣きっ面に蜂」とも言える状況になっています。

Next: なぜ庶民の感覚とずれる?「一時的な高騰」では説明できない



生鮮食品はずっと上がり続けている

生鮮食品高騰というと「一過性」のイメージを持たれることが多いですが、実はこの2年ほどずっと生鮮食品は高騰しています。

※参考:高騰し続ける生鮮食品価格 – みずほリサーチ&テクノロジーズ(2024年7月22日配信)

ピーク時は「+4%強」と約40年ぶりの伸び率となったコアCPI(生鮮食品を除く総合)と比べても高い伸びが続いていて、2022年1月以降の伸び率の平均は「+7%台」となっています。

上記のレポートには「1980年代から2010年代初頭までは、生鮮食品のインフレ率とコアCPIのインフレ率は均してみれば同程度だった。その後、2013年頃から生鮮食品価格の上昇トレンドが急激に強まり、コアCPIとの乖離が年々拡大している」とあります。

生鮮食品の高騰は、2年とかそんな短い期間の話ではなく、一時的なものではないということです。

そして、今も続いているのです。

なぜ政府認識と庶民の感覚はズレるのか

レポートにもありますが、生鮮食品は消費者にとって最も身近な財の1つで、価格変動が大きいことから、消費者マインドに与える影響が大きいと考えられています。

国の対策や金融政策を決めるうえで、生鮮食品を除いた「コアCPI」と呼ばれるものや、エネルギーも含めて除く「コアコアCPI」のデータで判断することへの警告を、このレポートは指摘しています。

何年もにわたっての対策を講じるのに、季節変動や天候要因を加味すると、継続的な対策が取れないことは理解できますが、ここが庶民の体感と、物価対策の“感覚のズレ”になっているような気がします。

それは、日銀ばかりを責めても仕方がないことで物価対策は、金融政策と言うよりも政府の財政政策が担うべきなのかもしれませんけどね。

円安も影響しています。とにかく円安が物価高に大きく影響しています。日銀の「利上げ」実施も認めなしでしょうが「円安」対策の一面はあると思います。

生鮮食品の運搬コスト、エネルギーの輸送コスト、人件費、飼育肥料代高騰……生産者側も、コスト高の部分を消費者価格に転嫁できない場合もあるでしょう。

そういうのはデータには反映されないですよね。机上の数字と、庶民の肌感覚のズレは、どうやって埋まっていくものなのでしょうかね…。

有料メルマガ好評配信中。初月無料です

この記事の著者・原彰宏さんのメルマガ

<初月無料購読ですぐ読める! 11月配信済みバックナンバー>

※2024年11月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2024年11月配信分
  • らぽ~るマガジン第657号「『インフレ』を肌で感じるのは『高騰し続ける生鮮食品価格』」(11/11)
  • らぽ~るマガジン第657号「キャスティンボードを握る国民民主党の経済政策を検証~手取り額を増やす政策」(11/4)

いますぐ初月無料購読!

【関連】「NHKが映らなくても受信料を払え」裁判所まで不思議なことを言う日本。国民から毟り取った金でNHK職員は法外なまでの高給取り=鈴木傾城


※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年11月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。

2024年10月配信分
  • らぽ~るマガジン第656号「『日本』という国家機能が大劣化しています…」(10/28)
  • らぽ~るマガジン第654号「エンゲル係数が42年ぶりに28%を超えようとしている…」(10/21)
  • らぽ~るマガジン第653号「日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会) ノーベル平和賞受賞」(10/14)
  • らぽ~るマガジン第652号「(OPINION)労働環境について思うこと」(10/7)

2024年10月のバックナンバーを購入する

【関連】日本人は本当に生産性が低かった。私たちの年収が世界最速で下がるワケ=吉田繁治

【関連】「彼氏にしたい職業」上位はぜんぶ地雷、玉の輿に乗りたいなら○○な男を選べ=午堂登紀雄

image by:Siam Stock / Shutterstock.com

らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』(2024年11月11日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

らぽーる・マガジン

[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。