最低賃金の議論がなされる間にも、持つものと持たざるものの差はどんどんと広がり、社会の底辺になればなるほど抜け出せない絶対貧困に陥っています。社会の底辺で生きる価値すら見出せなくなった生活困窮者たちは、どのような苦悩を抱えているのでしょうか?生活困窮者に住居提供の支援をするNPO法人生活支援機構ALLの代表・坂本慎治さんに鈴木傾城さんが迫ります。
(今回は、NPO法人生活支援機構ALLの坂本慎治さんと、作家・アルファブロガーの鈴木傾城さんとの対談の一部をお届けします。全編をご覧になりたい方は、鈴木傾城さんが配信している初月無料メルマガ 鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編 鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編 を2024年12月中にご購読ください。また、本記事は動画でもご視聴いただけます。)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
プロフィール:坂本慎治(さかもと しんじ)
1988年生まれ。大阪府出身。NPO法人生活支援機構ALL・代表理事。大阪居住支援ネットワーク協議会・代表理事。中学卒業後、鳶職を経て某大手賃貸仲介業者へ就職。入社後まもなくNo.1セールスマンに輝く。その一方で生活保護者や障がい者を受け入れない大家に疑問を抱き、25歳の時にNPO法人生活支援機構ALLを立ち上げる。以後、現在までに約1万人もの生活困窮や居住支援の相談にのり、居住支援の第一人者として活躍する。NHKニュース「ほっと関西」、朝日放送テレビ「cast」、TBSドキュメンタリー「解放区」など多数のメディアに出演。著者に『大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』がある。
鈴木傾城が見たシングルマザーの困窮
鈴木傾城(以下:鈴木):みなさん、こんにちは。鈴木傾城と申します。
坂本慎治(以下:坂本):坂本慎治と申します。
鈴木:今日は「絶対貧困から脱出する道はあるのか」というテーマで坂本さんをゲストにお迎えしました。坂本さんは生活困窮者への支援を行うNPO法人「生活支援機構ALL」の代表理事を務め『大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』という本も出されていたりと、そういう活動を大阪のあいりん地区で日々やっておられるという、本当に希有な方なので、その貴重なお話をいろいろ聞きたいと思います。
『大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』著:坂本慎治/刊:信長出版
坂本:はい、もう全然何でも聞いていただければ。
鈴木:ちょっと坂本さんの話に入る前に、1つエピソードがあって。2020年のパンデミックの時に、私は別の取材で所沢に住んでいるシングルマザーの女性に話を聞きに行った時があったんです。彼女は当時コロナで仕事がなくなっていて、解雇されたわけじゃないんですけれども、一時休業でもう来なくていいと言われていたんですね。
その期間、給料は2割ぐらいしかくれなかったんですね。生活が苦しいのに給料2割で仕事がなくて、さらに子どもがいるという状況で、その時に私は取材に行ったんですけれども、もう子どもにおやつを買ってあげたり、ご飯を買ってあげたりすることもできなくて。それで子どもは泣くんですよ。「甘いものが食べたい」「お菓子を食べたい」って。しょうがないから、公園に行ってそこに咲いてる赤い花の蜜をおやつ代わりに舐めさせたんですけど、子どもはお腹が空いてるから、花を吸うだけじゃなくて食べちゃうと。それぐらい酷い状況だったらしいんですね。
だから「生活保護を受けた方がいいんじゃない?」という話をしたんだけれども、女性は「ギリギリになるまで我慢する」「それまで生活保護を受けたくない」と言うんですよ。私から見たら、もうすでにギリギリの状態で、これは危ないんじゃないかというところまで来ているんですけれども、彼女は「受けたくない」「どうしても自分でがんばりたい」ということで……そういう女性がいたんですよね。
坂本:うーん。
鈴木:もしも子どもが病気になって、お医者さんに行ってお金が必要になったら、すでに光熱費すら払えない状況で、そこでもうアウトになってしまうから、それだけが本当に心配……みたいな話をしていて、彼女の抱える不安と恐怖を想うと、その日の夜は眠れなかったんですよ。
そういう印象深い出来事があった後に、私は坂本さんのことを知って「こういう人がいるんだな」「あの女性の話を聞いたときに知っていれば、どうすればいいのかって聞けたのに……」ということで、ずっと注目をしていたんです。今日はこういう機会ということで、いろいろとお話を伺いたいと思うんですけれども、坂本さんはどれぐらい前から今のような活動をやっておられるんですか。
坂本慎治が困窮者支援を立ち上げたきっかけ
坂本:生活支援機構ALLを立ち上げたのは11年前なんですが、それを立ち上げる前に、本当にNPOとしてやっていけるのかということで、3年間ほどは任意団体的な感じでずっと動いていました。で、「これは本当に必要なものだ」っていうのを自分の中でちゃんと確信してから、NPO法人を立ち上げたんです。
鈴木:そうなんですね。それで最初の立ち上げの時に……これは聞いた話なんですが、天王寺かどこかに住むところを無くした母子がいて、本当は断らざる得ないような案件だったのを、上手く支援に繋げることができたことがあって、それが今の活動のきっかけになったということなんですけれども、そういう方々って結構おられるんですかね。
坂本:当時はかなり多かったと思います。今では、僕らのような活動をよくわかっていただいている不動産会社さんも多いんですけど。平成29年ぐらいから「居住支援法人」という法人格が新しく出てき始めて、いま大阪が一番その数が多いんですが、それ以前だと一般の不動産屋の担当者さんから「こういう時どうしたらいいですか?」っていう連絡が頻繁にあって、その都度アドバイスをしていました。
鈴木:しかし、こういう生活に困窮しているような母子が、子どもを抱えたまま住む家を無くすのって、かなり大変なことなんですが、そういった人たちが最近はコロナの影響もあって、すごく増えているんですよね。そんな時に、大阪だったら坂本さんのような人がいらっしゃるからいいですけど、最初に話したような所沢だとか、他の地域に住んでいる場合、どうすればいいんだろうって。
貧困から抜け出せない関東からの相談
坂本:実際、関東からの相談もものすごく多いですよ。
鈴木:大阪の場合は結構特殊だと思うんです。あいりん地区のような生活困窮者にも寛容なエリアがあって、しかも支援してくれる人がいっぱいいると思うんですけれども、関東にはそういう所がないんですよね、なかなか。だからそういった際に、坂本さんのところに連絡が行くっていうことは、やはり大阪に行くしかないってことなんですかね。
坂本:僕はずっと関西なんですけど、関東だとこちらとは違って無料低額宿泊所、俗に“無低”と呼ばれる施設の数が多くて、行政もそういった相談が来た時には、そこに行くようにっていう風に促すことが多いんです。
ただ無料低額宿泊所に行く人たちは、当たり前のように身分証と通帳と印鑑を預けるわけですが、そこでは宿泊費以外にも食事代とかも引かれて、例えば月に十何万円もらえるはずの生活保護費が、実際には手元に1万5,000円ぐらいしか残らない。そうなると本人がいくら「就職がんばろう」「社会復帰がんばろう」と考えても、現実的にはやっぱり無理で、結局は無低にずっと囲い込まれてしまうというか、出られない。
だから、そういう風にがんじがらめにされてしまうんだったら、いっそ大阪に来たらいいと。僕らは無低とかドヤじゃなくて、一般の賃貸住宅で居住支援をやっていますので、例えば就職活動の時でも、履歴書に書く住所がちゃんとしている。……ちゃんとしているという言い方は語弊があるかもしれないですが、無低やドヤの住所じゃないということで、そういった面でも就職がしやすくなるのかなって思っています。
鈴木:なるほど。……でも、なんで大阪だけそれができるんですかね?
坂本:僕からすれば、なぜ他の地域は無低がそんなに多いんだろう?って感じです。
鈴木:やはり貧困ビジネスとか、そういうのと関係しているんですかね?
Next: なぜ貧困から抜け出せないのか?行政が助長する「貧困ビジネス」
生活困窮者に開放すれば空き家問題は解決する
坂本:僕の中で、それが貧困ビジネスだとは断定できないですけれども、そういう風に感じている相談者さんや当事者さんは多いんじゃないですかね。
僕は不動産屋もやっているので、空き家の相談とかにも乗っているんですけど、2033年には3軒に1軒が空き家になるといった予測もあるんです。で、この空き家が多い地域ってどういう地域なのかというと、実は田舎よりも都会なんです。戸数の絶対数が多くて、それらがめちゃくちゃ空きまくっているのに、新築の住宅もバンバン建っているからなんですが、これを活用していく方がいいと思うんです。
あと10年後ぐらいには今以上に空き家だらけになるって状況にも関わらず、無低やドヤのような三畳一間で共同トイレ・共同風呂といったところにみんなで住むっていうのは、僕からすればちょっとおかしいと思うんです。
行政が助長する貧困ビジネス
鈴木:なるほど。それにしても坂本さんがおっしゃるように、業者が生活保護をもらっている人から銀行口座からハンコまでぜんぶ取り上げて、無低からなかなか出ていけないようにしているといったケースが多いのにも関わらず、それを行政がむしろ勧めているというのは、おかしな話というか……。
坂本:僕もなんで見過ごされているのかなって。何かあるんじゃないかって感じてしまうんですけど、こちらとしても言いにくいんですよね。そこを突くのが怖いというか。普通に考えたらわかることじゃないですか、「それじゃあかんな」と。でも、それを行政が推奨して、無低の数を増やしていってるというのは、ちょっと僕の中では怖いなと思うんですよね。
鈴木:それに関してはひとつ噂があって。日本ってホームレスの数が少ないんですよね、世界的に見ても。何でかというと、そういった人たちを全部ドヤとかに入れて、生活保護のうちから少しだけ渡して、なかなか抜け出せないような状態を作るといった、いわゆる貧困ビジネスが横行しているからだと。
でも、それは世間にとっては都合が良いことで、何でかというと、街がホームレスだらけになったら景観が汚れたりするじゃないですか。だからホームレスはいない方が、普通の人にとっては良いんですよ。いうなれば貧困ビジネスが、ホームレスの存在を収容して世間から見えないようにしているという一面もあるという……。
坂本:僕もそういう思惑はあるのかなと思うんですけど。例えばホームレス生活があまりにも長引いて、どうしようもなくなった人たち、僕たちが声を掛けても日本語を忘れちゃってしゃべれないとか、そういったいわば野生化してしまっている人もいるわけで、そういった人たちの保護には僕は大賛成なんですよ。
ただそうじゃなくて、ただ失業しているだけだとか、すぐ社会復帰できるはずの人たちも、無低とかドヤとかに行くしかなくなっている今の状況というのが、おかしいっていうか。そういった人たちは、一般の賃貸住宅みたいなところで居住支援すれば、社会復帰がしやすいんですよ。僕らは身分証明や通帳などを取り上げないですから。
出戻り続出!危ない寮付き派遣
鈴木:ちなみに今、坂本さんのところに助けを求めて来られる方って、どういった層が多いんですか?
坂本:年齢的には40~50代の男性が一番多いです。最近では18歳ぐらいからもどんどん来ていますけど、逆に60~70代とかは少ない。これはなぜかと言うと、高齢になればなるほど他のセーフティーネットが使えるということもありますし、また生活保護を受けるにしても、「もうこの歳から就職するのは無理だろう」ということで、すんなりと通ることが多かったりと、いろいろな制度を活用できてる人が多いんです。
鈴木:なるほど。40~50代で失業して仕事が見つからないといった人が……。
坂本:仕事が全然見つからなかったり、たとえ見つかったとしても寮付きの派遣とかだったりすると。僕はその手のやつは「あかん」って言ってるんですけど。……というのもこれまでの経験上、そういう派遣の仕事に就いたとしても、一瞬は社会復帰を果たすんですけど、ほぼほぼ2~3か月とか1年以内に派遣切りとかに遭って、また生活困窮に陥って戻って来ると。
なかには「仕事があるからおいで」って呼ばれて、住んでるところから離れた遠方に行くんですけど、実際に行ってみたら仕事がなくて、寮費がどんどんかかって逆に借金が増えていく、というのがものすごい多いんです。
鈴木:へぇ、そんなことも。
坂本:前に相談者を京都駅に迎えにいったことがあって……普段は迎えに行くことはしないんですけど。その人は関東に住んでいて、地元で仕事がなくて困っていた時に、京都に寮付きの派遣の仕事があると呼ばれて、行ったらまったく仕事がなかった。
鈴木:仕事がないのに派遣会社は何で呼ぶんですか?
坂本:それがよく分からない。ただ、そういうことが派遣会社のなかでは多々あるみたいで。「呼んだけど無理やった」みたいな。そういった経緯で、よそから大阪に来ている人もめちゃくちゃ多いんですよ。
鈴木:そういう人は、もうお金も住むところもなくなって、どうしようもなくなって坂本さんのところに駆け込んでくるわけですね。
Next: 「助けて」と言えない人も。生活困窮者が避けたがる扶養照会の実状
生活保護は治安維持に必須
坂本:そうです。その時点でもうお金が全然ないですから、それでいま流行っているのが闇バイトですね。人ってやっぱり物が食べれなくなって、お金もなくて、身内も誰も助けてくれなくて孤独ってなった時に、もう悪いことをするか死ぬかって考えになるんですよ。
そういうこともあるから、生活保護制度を活用しやすいようにしておかないと、治安がものすごく悪くなってしまう。だから僕も「生活保護というのは恥ずべきものでもない」。僕たちも病気を患ったりとか、何かあったらそれを頼ることがあるかもしれないから、「そんな偏見の目で見んといてくれ」ということを、ずっと伝えているんですね。
鈴木:さっき話した所沢のシングルマザーも、やはり嫌だと言うんですよ、生活保護を受けたくないと。生活保護を受けると、親にも連絡が行くかもしれないし、児相に子どもを引き離されるかもしれないとかね。だけれども、どう見ても生活保護を受けなきゃ危ないような、そういうギリギリのところまで来ているんですよ、こっちから見ると。彼女はまだ頑張りたいというのだけど、それぐらい生活保護を受けるための心理的なハードルが高いんですよね。
坂本:多分そこは日本全国共通だと思うんですけど、大阪に関してはちょっとユルいと思うんです、感覚的に。僕は「大阪に来たらええやん」と言っている時も日本全国、本当に北海道から沖縄までいろいろなところから相談があったんですね。その中でも、例えば結構な田舎で生活困窮していて、生活保護を実は受けたい気持ちはあるんだけど、世間の目があって受けられない。多分それって周りの環境、育った環境のせいだと思うんですね。それなら、生活保護を受けている人に後ろ指を指すような人間があまりいない大阪で、人生をやり直した方がいいやんっていう……。
生活困窮者が避けたがる扶養照会の実状
鈴木:もう一つは、やっぱり親とか親戚に連絡が行くのが嫌だと。
坂本:扶養照会、嫌ですよね。
鈴木:実際にはそんなに連絡が行かないという話もあるんですけれども……。
坂本:そう。コロナ禍の時期に確か国会か何かで「扶養照会は要らないだろう」という話があってですね。ちょっと記憶が曖昧なんですけど、例えば10年以上連絡を取っていないとか、借金をしている、DVを受けていたということであれば、扶養照会しなくてもいいんじゃないかという話は出てきてたんですけど、ただ現場サイドでいうと、けっこう扶養照会をしている人が多いと思います。
鈴木:あぁ、そうなんですね。
坂本:ただ僕はこの11年間、全国の何万人という人から相談を受けて、居住支援をしてきた実績があるんですけど、この中で扶養照会をして生活保護を却下された人はいないです。生活困窮して生活保護を受けるってなるまでに至った人って、普通はその前に身内とかが助けるじゃないですか、親兄弟、親戚、友達とかが。それが難しいから生活保護を受けようとしているのに、扶養照会しても意味ないですよね。
鈴木:それよりも、自分が困窮しているのを知られるのが嫌なんですよ。親に自分の苦境を知られるのが嫌とか。そういう人って、大体親の絆ってあまり強くないわけじゃないですか。強くないところにそういう連絡がいって、自分が恥ずかしいとか落ち込むとか、自分はダメなんだというのを再確認するような、そういう気持ちになるから、どうしても連絡だけはしてほしくないっていうのがあるんですよね。
なかでも微妙なのが、たまに親とかと連絡は取り合うんですけれども、自分のことは一切言わない、困っているというのも言わないで、逆に「いや、大丈夫、大丈夫」という、そういう人。「大丈夫、大丈夫」と言いながら、本当に大丈夫じゃないという。
坂本:一番救ってあげたいタイプですよね。そういう声を上げられない人っていうのは、本当に難しい。
Next: 若者にも広がる貧困…保護した困窮者が突然いなくなったらどうなる?
若者にも広がる生活困窮
鈴木:だから、扶養照会って結構キツイなと思っているんですよね。それが生活保護を受けたくない一番の理由になっているんじゃないかなという気はします。
あと、自分が困っているのを見せたくないというので、若者もネットカフェで暮らしたりしているわけですね。ネットカフェ難民って昔は結構騒がれて、最近ぜんぜん言われなくなっているんですけれども、実際にはもう大久保とか行くと結構いたりするんですよ。
坂本:そうでしょうね。
鈴木:彼らも仕事は日雇いなんですが、ぜんぜん食っていけない。で、そういったネットカフェには女性専用のフロアというのもあって、女性とかもそこに家もない状態でいるわけ。もうホームレス寸前ですよね、隠れホームレス。
そういった人たちも、本当は生活保護とかを受けた方がいいんですけれども、やっぱり受けたくないと。それで夜の街に立ったりして、売っちゃいけないものを売ったりしているわけですよ。そういうところで、社会の底辺に対して何かちょっと今の日本の行政とか社会って、冷たいなという気はするんですよ。
坂本:大阪でも“グリ下”とかに、そういう子がいっぱいいますね。ただ大阪の場合、そういったところに支援しているNPO団体が別にありますので、そういうのでまだかなり助かっているのかなと。
鈴木:さきほど、18歳とかそういう若い子も相談に来るという話がありましたが、どういった境遇が多いんですか。
坂本:だいたい親から虐待されていたというのが多いですね。児童養護施設出身の子たちとか……。
鈴木:なるほど、機能不全家庭ですよね。そういう人たちを支援するのって、また違った困難があるものなんですか。
坂本:確かに生活保護は一時的には受けてもらいたいというのはあるんですけど、そこから社会復帰するとなった時に、実は収入が生活保護とあまり変わらないということもあって。若いうちに生活保護を知っちゃうと、がんばる気力が失せちゃうってこともあるんですよね。だから、僕も中卒なんですけど、僕でもこういうふうに社会でちゃんと役立ってがんばれているんだよということを、背中を見せていくしかないなと。
鈴木:なるほど。やはり若い子って生活保護を受けると、何もしなくてもこのままでいた方が逆にお金を楽にもらえていいんだというのがあって、どんどん怠惰になっていく。そういうところに問題があると。
坂本:人生って死ぬほど苦労したりとか、死ぬほど仕事したりとか、いろいろな場面があるわけなんですけど、そういう苦労をするからこそ、それを達成するからこそ、次のステップに上がれるっていうか、見える世界が変わってくると思うんですけど。
でも実際、生活保護を受けてると、例えば大阪の場合だと単身者だと月々11万5,000円あたりもらえるんですけど、社会復帰してバイトをがんばっても、若いからできる仕事も限られることもあって、月8万ぐらいがせいぜいで、それなら生活保護を受けてたほうがいいってなりますよね。
鈴木:確かにそうなりますよね。しかし、坂本さんはそういう若い人たちにも住居支援をしていると。
坂本:もちろん。
飛んでしまったらどうするのか?
鈴木:そういう社会的な信用もなく、保証人もないっていう若者にも、坂本さんが仲介に入って貸しているわけですけど、もしも彼らが飛んだりしたら、坂本さんがぜんぶ負担するわけですよね。
坂本:そうですね、今までそういうことが何百回とあります。
鈴木:そういうので活動が嫌になったりといったことは無いですか。
坂本:まあ、生活困窮して生活保護を受けないといけない人たちは、住居も借りられない人たちということを、僕はもともとわかっているんで。人生の歯車が合わない人たちというか、自分なりにがんばってるんだけど、世間や周りとかとうまくいかないとか。それを僕もわかっているので、もし何かあったとしても、僕はぜんぶ飲み込めるよっていう器量を持ってやってます。確かに逃げられた時には「くそー」とは思うけど、同時に「しゃぁないな」って。
ただ、1回飛んでダメだったらまた帰ってくる人もいるんですが、そういう人には「ウチはもう無理」って言います。以前は受け入れていたんですけど、そういう人を受け入れたせいで、ちゃんと家賃も払ってここでがんばっていこうと言っている人たちに、迷惑がかかったということもあるので。一旦そういうふうに飛んでぐちゃぐちゃにした人に関しては、「ちょっと僕はもう受け入れませんよ」というのは言ってます。
鈴木:冷静に考えてみれば、助けてくれる人って結構少ないと思うんですよね。それこそ坂本さんのように、無償でそこまでやってくれる人なんていないと思うんですよ。なのにそこを飛んで、1人で何かやっていけると考えているんですかね。
坂本:まぁ、どうにかなると思ってるんでしょうけど、どうにもならないから結構な頻度で戻ってくるわけで。ただ生活保護っていうのは、いくら飛ぼうが何しようが……例えば大阪で受けてて、そこから飛んで東京で再申請しますと言ってもできますからね。なかには「ここで飛んだら、お前一生、生活保護は受けられへんぞ」とか脅してくる人もいるんですけど、実際はそうじゃない。
その代わり返済義務があれば、返済しないといけないですが、ただし例えば、大阪で生活保護を支給されている時に、ぜんぶ一式を持って逃げました。で、そのお金で例えば北海道に行って、また生活困窮したら、そこで生活保護を申請できる世の中なんです、この日本というのは―― ※2024年12月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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